第五十五話。全滅の誓い~夢に見た場所に向かい、若き5人は約束を交わす
ハチムが見た夢に従い、
アルファ達は、指定された場所に向かう事となった。
メンバーは、
アルファ、ハチム、リリー、ダンザ、マメダと言う面子である。
元冒険者が一人は行った方が良いと、
ドラカン達元冒険者は主張したが、
リリーは、若手5人PTの仕事である、
任せて欲しいと主張したのであった。
ダンザ、ハチム、マメダも、
若手5人で行く事を後押ししたのである。
決定は、トンバーが下した。
若手に任せると。
雲を掴むような話に、
そんなに集落の人手を割くのは、
許されなかったのである。
ハチムの指差す方向は、大まかに東。
陶器用の土を採りに行った方向だ。
道がある訳も無いので、まっすぐ行く訳にも行かず、
まずは、いつも使っている道で出来るだけ東に向かい、
そこからは、獣道と道なき道を行く事となった。
俺達は、カブールさんに言われ、
陶器製作小屋に水を運ぶ仕事をついでにこなした。
俺が、湧き水をアイテム収納して、
小屋によるだけの話だがw
トンバーさんは、水運びだけでもするんだから、
夢が空振りでも良いと笑って居た。
ハチムに先導され、俺達は山道を進む。
俺の前を歩くマメダが言う。
「夢ねぇ・・・シガラキ様の導き?ホントかしらね?」
俺の後ろのリリーが答える。
「私も導かれたんだし、ハチムも導かれたのよきっと」
先頭を行くダンザが言う。
「それなら、シガラキ様は、
またリリーに夢を見せれば良かっただーな」
俺は、考えながら言った。
「うーん・・・ハチムはオートマップのスキル持ちだからなぁ。
場所を指定するには、リリーや俺じゃダメだったのかも?」
ハチムが、自信無さそうに言う。
「ただの夢だったら、ハズかしいなぁ・・・」
俺は、軽く笑いながら言った。
「ははは、いいさ、作業場に水運ぶ仕事はしたんだし、
トンバーさんに睨まれはしないっしょ。
リリーは朝から2瓶聖水作って、
自然回復がどのくらいの速さか確かめられるんだし」
リリーも、笑いながら答える。
「聖女ボーナスで、自然回復が早まってるかも知れないって、
オーラスおじさん言ってたわね」
ダンザも少し笑いながら言う。
「アルファが頭のPTだと、
俺達にも回復してるかどうか丸見えだーな」
マメダも続ける。
「早まってる様には思えないのが残念だけどねw」
ハチムが、言う。
「うーん、シガラキ様の導きだとして、
あそこに何があるんだろう?」
俺は、気軽な感じで言った。
「なんだろうね?
誰かと出会うとか、何か置いてあるとか・・・?
まぁ、なんもなくても、いいじゃない?
薬草と聖水なら、聖水のが足りないんだから、
今日はダンジョンは休み、聖水作りの日って事で」
リリーが言う。
「聖水作り・・・どうなるのかしらね?
私のレベルが上がれば、聖水が十分になって、
薬草が足りなくなるのかしら?」
ダンザが答える。
「うーん・・・たぶんそうはならないだーな」
マメダも言う。
「そうね、薬草はダンジョンに潜れば、いくらでも手に入るわ」
ハチムも同意する。
「低層でドロップですし、
数時間で魔物は生み出される訳ですしね」
リリーが納得したように言う。
「やっぱり、聖水・・・私のレベル上げなのね。
薬草は、低層の殲滅を、1日に何回でもすればいいものね・・・」
俺は、リリーに向かって言った。
「聖水もレベル上げも、根を詰めないで気楽にやろう。
ドラカンさんじゃないけどさ、
焦らずゆるゆる行こう、リリー。
・・・俺もさ、なんかみんなの期待が掛かっちゃうと、
プレッシャー感じてさ。
昨日の夜も、ドラカンさん達が、
深刻なもんだから逃げ出しちゃったよw
でも、大丈夫だって、
シガラキ様も中間管理神様も言ってたよ」
リリーが、少し沈んだ様な表情で言った。
「そうね・・・本当は少し不安だったの・・・。
シガラキ様に聖女にして頂いたけど、
私で良かったのか・・・。
私はどうすればいいのか・・・」
やっぱりそうか、予期不安ってヤツだ。
俺は、リリーにキッパリと宣言した。
「リリー、そう言うのは俺が受け持つよ。
リリーには、俺もシガラキ様もついてる。
リリーは、何も心配要らないんだ。
出来る事をゆっくりやって行こう、それで大丈夫なんだ」
リリーは、俺の眼を見て言った。
「・・・私は、
アルファに付いて行けばいいのね?」
俺は、答えた。
「ああ、大丈夫、それで大丈夫だ」
ダンザが、ニヤニヤしながら言う。
「お前、兄貴の前で何をやってるだーな」
マメダも言う。
「まぁいいじゃない、
シガラキ様の使いと聖女なんだからw」
ハチムは、真面目な感じで言った。
「ところで、昨日の夜、
父さん達が深刻だったってなんですか?
集落を出るとか?」
俺は答えた。
「いやさ、シガラキ様の加護や、
リリーが聖女に就いた事なんかを、
正式に礼言って置きたいとかでさ・・・。
おチビ達や、オーラスさんのお子さん達も、
聖職に就けるか?って話やら、
リリーだけは、ダンジョンで死なせてはならないとか、
そんなさ」
ダンザが、真面目な口調で言う。
「それだーな、俺達もそれを考えていただーな」
マメダもハチムも言う。
「そうなのよ」
「その話の為に、今日5人で来たんですから」
ん?お前らも深刻なのか?
イヤだなぁ・・・まぁ俺が背負いますって、
リリーに言っちゃったけどさ。
ダンザが、言う。
「どっから説明すればいいだかな・・・」
マメダが答える。
「全滅の誓いからよ」
全滅の誓い?
ハチムが続ける。
「PTは、死者を出してはいけない」
俺は、言った。
「そりゃそうだ」
マメダが、違うと言う口調で言う。
「死者を出して『帰って』は、いけないのよ」
ん?
リリーが、言う。
「全滅の誓い・・・
冒険者がギルドにPT登録する時の儀式ね」
俺は尋ねる。
「どういう事?」
ダンザが、言う。
「わざとPTメンバーを、殺す事を禁止してるだーな」
マメダも、言う。
「魔物に殺させれば、鑑定でも人殺しにはならないわ」
ハチムが、補足する。
「わざとでなくても、
仲間を見捨てて逃げた疑いは晴れないです」
死者を出して、帰ってはいけない・・・、
生き残ってはいけない・・・。
ギルドの掟?いや冒険者の掟か。
やろうと思えば、殺したいヤツとPTを組んで、
わざと魔物に襲わせ、見殺しにする事が出来る・・・。
金品を狙って?取り分でモメて?女の取り合いとか・・・、
事情は色々か。
新人を騙したり、邪魔なヤツを消したり、
そういう詐欺、狡すっ辛い事も可能・・・か。
リリーが、真剣な目で言う。
「私は誓うわ・・・誰も見捨てて逃げたりしない。
最後まで戦うわ」
ダンザが、少し興奮して言う。
「そうじゃない!逆だーな!!」
マメダもハチムも言う。
「リリーねぇちゃん・・・。
アルファとねぇちゃんは逃げて頂戴」
「神の使いと聖女は、生き延びて下さい!!」
そうか・・・
ドラカンさん達も言って居たな・・・。
リリーだけは・・・死なせてはならない。
リリーも、少し興奮して言う。
「いやよ!
誰も見捨てたりしないわ!
みんなで戦って、
みんなで・・・みんなで死ぬのよ!!」
俺は、冷静に尋ねた。
「生き残りは・・・
生きて戻ったらどうなるんだ?」
ダンザが、ツバを吐くように答える。
「どうもならんだーな」
マメダが、沈んだ声で答える。
「そう、どうにもね・・・。
冒険者としては終りよ。
誰からも信頼されない・・・相手にされない・・・
嫌われ者・・・事実上廃業よ」
ハチムも続ける。
「わざとじゃない、見捨てた訳じゃない、
そうは思っても疑いは晴れない・・・」
リリーが〆た。
「生き残りを見るのも嫌なのよ・・・。
冒険者達は・・・。
明日は我が身だもの、目を背けたいのよ」
そうか・・・そう言う事か・・・。
全滅の誓い・・・全滅せず生き残る・・・、
廃業・・・そう・・・か。
俺も、沈んだ声で言い掛けた。
「だから・・・」
ダンザが、怒ったように言う。
「オヤジ達だってそうしただーな!
リリー、お前は生き残るだーぞ!!」
マメダも、静かに言う。
「そうよ・・・ねぇちゃん。
私達もそうするの・・・父さん達と同じよ。
私達も同じ、そうでしょ?ねぇちゃん」
ハチムが、俺に向かって言う。
「アルファさん・・・全滅の誓いは建前です。
親族や古くからの仲間でPTを作る時は、
大体決めるものの様です。
生き残る者を・・・。
必ず、必ず聖女だけは・・・連れて逃げて下さい」
リリーは、涙を浮かべながら言う。
「いやよ!
アルファ!
一緒に、一緒に最後まで戦いましょうね?」
俺は、静かに言った。
「俺が、PTリーダーでいいんだよな?」
4人は、無言で頷く。
「・・・その時が来れば、俺が決める・・・。
俺はいい・・・最後の時は・・・リリーだけは逃す」
リリーは、承諾しなかった。
「いやよ、私は逃げたりしないわ」
俺は、リリーに向かって静かに言う。
「階層違い・・・相当な階層違いに遭遇した場合の話だよ。
俺達は、無理をしない・・・急いで深くを目指さない。
出来る限り安全に、時間を掛けてレベル上げをしよう。
それなら、運悪く階層違いに出くわしても、対応できるはずだ」
ダンザが、俺に向かって言った。
「それでいいだーな。
アルファ、最後の時はお前に任せるだーぞ」
マメダもハチムも承諾した。
「アンタを信頼するわ」
「アルファさんも、同じ思いで良かったです」
リリーは、承諾しなかった。
「その時は、私を置いてアルファが逃げるのよ?
アルファ、あなたは神の使い・・・タヌキ族の希望なの」
俺は、答えた。
「シガラキ様が居る今、俺は要らないさ・・・。
お前らを見捨てて逃げた俺に、
居場所なんてありゃしないしなw
リリー、他の事は全て俺が背負い込むけど、
悪いがこれだけは・・・リリーが背負ってくれ」
リリーは、黙り込んだ。
階層違い・・・流行り病か・・・。
黙々とアルファ達は山道、獣道を進む。
ハチムが夢で見た、シガラキ神の指示する場所に向かって。
時刻は、まだ朝と言える。
穏やかな春の日差しが、木漏れ日となり、
道を進むアルファ達を、優しく包んでいた。
さらっと、斜め読みでも、読んで貰って有り難いっす。
いいねやら、感想やら、ブックマークやら、レビューやら、
星5やらw頂きたいっす。
反応無いと、便所の落書きだものねw
甘甘の世界って訳じゃないって事で、そうなるわな。
ビターっすけど、ハッピーエンドに向かっておるつもりです。




