第五十三話。二神の使い~神の導きと神職枠
逃げた。
俺は、自室に逃げた。
タヌキ族を守護する神シガラキ様と、
中間管理神様にここに送り込まれたが、
俺は、役に立ってない・・・神の使いとして何も。
そんな俺に、みんなは礼を言う・・・それが怖かった。
この集落は、スローライフなんて甘いもんじゃない。
俺は、知っていた。
この世界に来て、初めて鑑定したのはドラカンさんだった。
俺の鑑定は細かくて長いし、
急ぎの用もあったから斜め読みだったが、それでも読んでいた。
それに、初日にオーラスさん、
ニックさん、レンダさんも鑑定しているのだ。
知ってたさ、冒険者として生きられず、
逃げ込んだ場所がここである事を。
町から弾かれた元冒険者が、
身を寄せ合って暮らしている集落である事を・・・。
俺は、そんなみんなの役に立てるのか?
シガラキ様は、リリーに俺が来る夢を見せる事が出来た。
シガラキ様は、名と姿を用意しろと言う夢を、
リリーに見せる事だって可能だったハズだ。
俺が居なくても、リリーは聖女となり、
聖水は手に入ったハズだ。
シガラキ様、中間管理神様、そうっすよね?
俺は、この集落に、いや、タヌキ族の為に役に立つっすか?
みんなが期待する働きを、俺・・・できるっすか?
自室の小上がりの上、
毛布に埋ずめた俺の頭に、声が聞こえる。
「我らの使いよ」
「やっと名を呼んで祈ったポン」
シガラキ様、中間管理神様・・・。
何から聞けばいいのか・・・どうすればいいのか・・・。
「そう深く考える事は無いポン」
「そうじゃな、お前は役に立ってるんじゃ」
そんな事言うっすけど、実際俺イランじゃないっすか。
「お前の世界の知識も、役に立つと言ったじゃろう?」
「防御壁を持ち運ぶのは、予想外だったポン」
あんなの・・・苦し紛れの思いつきっす。
あれじゃ、タヌキ族全体は変わらないっす。
俺とPT組んだ時だけの話っす。
「まぁ、そうじゃが、
それでも聖女のレベル上げには、役に立つじゃろう?」
「そうだポン。
我は力を授ける事は出来るポン。
しかし、成人に度を越えた力を授ける事は出来ないポン。
力を植え付けても、力が使えるように鍛えて貰わねば、
宝の持ち腐れポン」
・・・俺は、
リリーのレベル上げの手伝いをすればいいっすね?
リリーが、誰かを神職に付けられる様になるまで、
一緒にダンジョンに潜ればいいっすね?
それで、俺は役目を果たしてる事になるっすね?
「それで良いポン」
「出来る事を日々やれば良いのじゃ」
「我らは、細かく指示出来ぬが、時が来ればお前を導くポン」
「そうじゃな、我ら二神の導きがお前にはある。
お前は特別と心得るのじゃ」
二神の導き・・・細かくは言えない・・・
時がくれば・・・っすね。
「お前は、珍しい存在じゃ。
普通の転生者とは違い、死んでおらぬし、
我ら二神が協力してお前の体を作ったのじゃ」
「そうだポン。
お前の命はお前の物だが、体と能力は我らの合作だポン。
二神がいつもお前の目を借り、お前の世界を見ているポン」
俺の目・・・俺が経験する事全てが、
お二人には見えてるっすか?
「そうだポン」
「そうじゃ」
俺は二神が見守る・・・
神の使いとしても、チョット特殊なんすね。
・・・リリーは?
聖女となったリリーは、見守られてるっすか?
「使いではないが、我が見守ってるポン」
「リリーは、シガラキ教の神職じゃからな、
ワシは管轄外じゃ」
・・・神職に付くと、
守護神に常に見守られるって事っすか?
「そうだポン」
・・・ライツ教なんかは、神職に『枠』があって・・・、
神は、何百人か何千人も、
神職になった人を常時見守ってる?
そうか・・・神の力によって、
見守れる人数に上限があるっすね?
「違うポン。
我を舐めるなと言ったポン。
何千人でも守護する力はあるポン」
「ははは、まぁそう怒るでないシガラキよ。
枠に付いては細かくは言えぬのじゃが・・・。
まぁ、信者の数。
信仰ポイントがどの位集ってるかで、
神が人にふるえる力が決まると思えば良いじゃろう」
・・・信仰ポイント・・・っすか?
シガラキ様は力を持ってはいるが、
信仰ポイントが足りないから今は力がふるえない。
今は枠が無い、ゼロって事っすね?
「我を舐めるでないポン・・・
4~5人なら、今も神職に就かせられるポン」
「それにリリーは特別だポン。
笠は普通レベル30辺りからしか使えないところ、
聖女ボーナスで、すぐ使える用にしたポン。
聖女に力を注いだ後だから、
今は枠が無い、力がふるえないだけだポン」
・・・シガラキ教の信者の数が増えれば、
信仰ポイントがシガラキ様に溜まれば、
神職枠は増えるんすね?
シガラキ教の神職が増やせれば、
タヌキ族が栄えるって事っすね?
「まぁ、そう言う事じゃな」
・・・そう言えば・・・リリーは特別・・・、
なんか神の都合でどうこうとか言ってたっすよね?
「我は、それに付いてはあまり喋れないポン」
「そうじゃな、こっちの都合じゃ」
神の都合・・・なんすか?
・・・気持ち悪いっすね・・・。
兎に角、リリーやドラカンさん達を、
守護する為にシガラキ様は、
山神様から守護神になったんすよね?
これからはタヌキ族の守護神って事でいいんすよね?
「まぁそうなった訳じゃな、成り行きじゃった様だが」
「我は土地神であったが、
ここにドラカン達が住み着いたポン・・・。
しかも、幼子が我に祈るポン・・・ほっとけなかったポン」
幼子、昔のリリー達の事か。
「ここらはな、ライツ神がライツ国に少しは流れ込む邪気を、
捨てる場所だったのじゃ」
ほう・・・山奥で人気が無いからっすか?
「そうだポン、
薄い邪気であるし、我は構わない程度の事だったポン」
それで、ここらはライツ国なのに、いくらか魔物が居るんすね?
逆に、ライツ国の他の地方は、邪気が一段と薄くなってると。
「うむ、そうじゃ」
「ドラカン達が住み着かねば、それで良かったポン」
住まねば良かった・・・どういう事っすか?
「シガラキは、ドラカン達を守る為、
ライツと同じ事をしたんじゃ」
同じ事・・・邪気を捨てる?
「邪気が薄いとは言え、
我が地には少々の魔物は生まれて居たポン。
幼子には危ないポン」
「捨て場に丁度良い物が、出来ていた事もあったんじゃろう」
・・・邪気を、シガラキ様が・・・ダンジョンに流し込んだ?
それで、ドラカンさん達が住み始めて、
地上の魔物は減ったんすね?
「だが、問題が起きたんじゃな?
シガラキよ」
「・・・そう長い事になるとは、思わなかったポン。
幼子が成人すれば出て行く、
ドラカン達は長居しない筈だったポン」
ニックさん、レンダさん夫妻とその子、
新たな集落の幼子・・・っすか?
「うむ、時が経つに連れ、
ダンジョンが思ったより成長してしまったポン」
「この地の邪気の濃さでは、ありえぬ深さじゃな」
ダンジョンの成長・・・ありえぬ深さ?
最近、外の魔物が増えた・・・、
いや、ゴブリンが出たと言ってたな、それのせいっすか?
「それは前触れだポン。
ダンジョンの成長が止まったポン。
次の段階に移り掛けているポン」
「深さが十分となれば、
ダンジョンの地上、いくらかの土地を、
ダンジョンが支配する段階に入るのじゃ」
ダンジョンの段階・・・地上に魔物が出る様になるんすね?
ゲンコツもここもヤバいんすか?
「まだ先と我は見ているポン、まだ数年は先・・・
しかし、もう数年に迫って居るポン」
「うむ、ゲンコツダンジョンが、
地上を支配し始めるのは、数年先じゃろう。
コアが分裂して、魔物とコアを吐き出すのは、
何十年何百年先の話じゃ。
そう心配する事でもないのじゃ」
・・・ダンジョン近くの地上に魔物が出る・・・
溢れるのとは違う?
・・・溢れる・・・コアの分裂・・・
ダンジョンが増える・・・それがスタンピートか?
「そうなる前に、我はダンジョンに、
邪気を流し込むのを止める気だったポン」
その予定が狂った・・・
それで、俺を送り込み、リリーを神職に・・・。
「まぁ、それも神の都合の一つじゃ」
・・・俺は、ゲンコツダンジョンを
『潰せば』いいんすね?
「お前は馬鹿ポン?
我はそんな事言って無いポン」
へ?
「まぁ潰す潰さないは、好きにすればいいのじゃ」
どういう事っすか?
「我が流し込む邪気以上に、
ダンジョンに邪気を消費させればいいポン」
流し込む邪気以上に、邪気を消費させる・・・?
魔物を生み出させ、魔物を倒せば、ダンジョンの成長は止まる?
いや、次の段階に行かなくさせる事が、出来るって事っすか?
「まぁ、好きにすればいいんじゃよ」
「捨て場が無くなれば、我が信徒に危険が及ぶポン」
あ、そうか・・・ダンジョンが無くなれば、
ドラカンさん達が住み着く前、
その程度に地上に魔物が生まれちゃう・・・のか。
「我が使いアルファよ、お前は好きにすれば良いのじゃ。
時が来れば、お前を導く事もあるじゃろうが、
それまでは、日々出来る事をすれば良いのじゃ」
「我の使いアルファよ、いつも見ているポン。
導く時がくれば導く、それだけの話ポン」
あ、行っちゃうんすか?
いや、行くも何も交信してるだけか・・・。
「いつも見ているのじゃ、いつでも祈れば話は出来る」
「そうだポン。
お前は祈らな過ぎるポンw」
祈れば話が出来る・・・二神と。
「そうじゃ、言うたろう?
お前は我らが作った特別な使いだと。
例えて言うなら、二神が作った使い・・・
聖獣の様なものじゃな」
「我ともう1柱、二神の使いポン。
我ら二神との交信に、我らが力を使う事は無いポン」
聖獣・・・二神様との親和性が高い?
とにかく・・・俺の好きに、
俺が思うようにやってればいいんすね?
リリーのレベル上げ、ダンジョンでひと稼ぎ
・・・信徒を増やす。
とりあえず、これでいいっすね?
これでみんなの役に立つっすね?
二神からの答えは無かった・・・、
交信は切られていた。
さらっと、斜め読みでも、読んで貰って有り難いっす。
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星5やらw頂きたいっす。
反応無いと、便所の落書きだものねw
何も逃げなくたってねぇw




