第五十一話。水芸とメロンソーダとコーラ
俺は、聖水作り用にキッチンで水を汲み、広間に戻る。
小上がりに準備された、
クリーンを掛けた桶に水を出した。
小上がりに座り込んだドラカンさんが、リリーに問う。
「リリー、聖水作り、出来そうだか?」
リリーは、小上がりに上がり、
食卓に置かれた桶を見ながら言う。
「不思議ね・・・まるで前から知ってる様な感じ・・・」
俺は、リリーに向かって言った。
「俺も、石つぶてのやり方、
知ってる様に出来たんだよなぁ」
オーラスさんが、目を細めて言う。
「うーむ、俺の魔法とは違うな。
俺は、やり方を人に見せて貰い、
練習したもんだよ」
俺は、呟く様に言った。
「イグニッション、クリーン、ライトは、
俺もそうだったな・・・」
ダンザが、気軽な感じで言う。
「まぁ、いいだーな。
リリー、試しにやってみるだな」
ダンザに促され、リリーは、粘液サイズの空瓶を手に取り、
水入りの桶の前に座る。
「シガラキ様、聖水を頂きたく存じます。
聖水・・・」
リリーの祈りに応えるように、
桶の水がさざなみを立て、中心部分から水の柱が立つ。
おチビ達と、周りの大人達から声が上がる。
「おお」「水柱が・・・」「なーに?」
「水芸?」「アルファ兄ちゃんも出来るよねー?」
水道の蛇口から出る程度の太さの水柱は、
桶から静かに吹き上がり、
リリーの前で溜まり、玉となって宙に浮いている。
暫く見ていると、水柱は吹き上げるのをやめ、
宙にソフトボール程の水の玉が浮かんでいた。
リリーが、水の玉の下に瓶を持って行くと、
水の玉から今度は下に向けて、
蛇口の水程度の太さで水が流れ始める。
見る見る瓶の中に水は流れ落ちて、
空中の水は瓶の中に納まった。
リリーは、瓶の蓋、
太いガラス蓋を瓶に差し込んで封をした。
ニックさんが、焦れた様に言う。
「どうだ?鑑定して見せてくれ」
俺と、ドラカンさん、オーラスさん、レンダさんは、
各々ウインドウを出し鑑定した。
俺は、ざっと、鑑定結果を読み上げる。
「聖水。
神気を含んだ水。
邪気瘴気を持つものにダメージ。
HPポーション等の材料ともなる。
・・・成功っすね」
リリーは、ニコリとし、
出来上がった聖水を、ドラカンさんに差し出し言った。
「MP4でこれだけ作れるわ。
今日は、後4つ出来るかしら?」
ドラカンさんが、聖水を受け取りながら言う。
「MP0になるまでヤルでないだーぞ?気を失うだー」
オーラスさんが、リリーに向かって言う。
「昼寝をすると、いくらかMPは回復するんだ。
これからは、昼寝が仕事となるかもなwリリー」
ニックさんが、笑いながら言う。
「俺も聖職に付きたいもんだw」
みんな少し笑い、子供達は、競うように、
ドラカンさんから聖水を見せて貰って居た。
おチビ達め・・・。
飲み物じゃないぞ?w
聖水作り、MP4で粘液瓶一杯が作れるのか・・・、
クリーン分を考えると・・・
いやクリーンはリリーじゃなくてもいいかw
リリーのMPは温存だ、
笠と聖水、ダンジョンではライトも使うか・・・。
MPは、嫌な言い方だが金ずるw
金の成るMPだ。
水筒にも使っている粘液瓶は、500mgぐらいか?
一方、ポーションの瓶。
ライトの魔石を入れて、
首からぶら下げてるこの瓶は、100mgも入らない。
俺の世界で言うところの、
栄養ドリンクの瓶より細くて小さいもんな。
目薬の瓶よりは相当でかいが・・・
目薬の5倍くらい?5倍じゃきかないか?7倍?
まぁ、ポーションは100mgくらいか?
粘液瓶一本で、
HPポーション5~6本分と言った感じだな。
ドラカンさんが、続けて薬草と聖水で、
HPポーションを作ると言う。
これは、なんとなく判った・・・
変な感じだが知っているのだ。
アイテム師のスキル、
シガラキ様、中間管理神様に、
刷り込まれた知識のようだ。
ドラカンさんは、クリーンを掛けた、
スープを入れるような皿に薬草を置き、
そこに聖水を100mg弱注いだ。
ドラカンさんが、薬草を浸した聖水の上に片手をかざし、
精神集中に入った。
・・・薬草から、緑色のエキスが染み出す。
少しずつ聖水の緑が濃くなっていく・・・。
暫くすると、聖水は緑色に染まり、色の変化が無くなった。
ドラカンさんは、皿から小瓶に緑色に染まった聖水を移す。
「出来上がりだーな。
鑑定してみるだか?」
鑑定結果は、初級HPポーション・・・回復量22。
薬草の薬効と結びついた魔力、それを抽出する。
ただの水とは違い、聖水の神気と、薬草の魔力は相性が良い。
ポーション作り・・・目にしてなるほど、と思えるな。
・・・ポーション作りにも、MP1必要だそうだ。
俺は、呟くように言う。
「クリーンは皿と瓶にもだから、都合MP3か」
オーラスさんが、言う。
「皿は連続して使えばいいし、
瓶と蓋のクリーンも何本か纏めて出来るさ、
俺は7本程度だ。
ドラカンなら、10本いけるだろう?」
ドラカンさんが、答える。
「そうだーな、アイテム師としての腕が上がれば、
クリーンも上手くなるだー」
ふむ、クリーンの熟練度か。
「回復量22は、ちょっとだけ優秀っすよね?」
レンダさんが、言う。
「そうね。
20を切る事もあるけど、薬草の質や聖水の質、
アイテム師の腕にも関わるわ」
リリーが、補足する。
「だいたい平均20なのよ。
薬草のままより、無駄無く体に反応するから、
薬草より回復量が上がるみたい」
作業は続く。
リリーは、聖水を粘液瓶に5本作った。
ドラカンさんは、同じ皿を使い、HPポーションを作り続け、
オーラスさんが、虫毒草から、虫毒の抽出に掛かった。
毒消し草から毒消しポーションを作るのも、
これも、HPポーションと同じだそうだ。
レンダさんもアイテム師なので、
虫毒の作り方に興味がある様だ。
一方、子供達は水芸に飽き、
キッチンにお腹が空いたと訴えに行く子、
ダンザに抱っこやおんぶをせがむ子、
祭壇に向かいおもちゃで遊ぶ子、
小上がりであっち向いてホイに興じる子・・・
まぁ、平和だw
虫毒作り・・・。
大体が、虫毒の薬効と結びついた魔力を、
抽出するのが昨日初であり、
それ自体が上手く行って居たのか、怪しいとの話だった。
その上、昨日試しにやって見たのは、ただの水だったが、
聖水ではどうなるかは判らんらしい。
虫毒と結びついた魔力が、神気と相性が悪ければ・・・、
逆に悪い結果となる事もありえる・・・か?
虫毒エキス・・・
ダンジョンでは大活躍だったんだが・・・、
あれで未完成品だったのかも?
鑑定では、確か初級虫毒だったよな?
上手く行けば、上級、いや、中級虫毒となる、か。
オーラスさんが、虫毒草を聖水に浸し、
薬効魔力を抽出に掛かる・・・。
少し紫蘇のような紫がかった、
コーラのような黒色の付いた聖水が出来上がった。
薬効魔力の抽出は出来ている様子だ。
オーラスさんは、小瓶に移す。
オーラスさんレンダさん、
俺も同時に小瓶を鑑定してみる。
面白い事が起こった。
鑑定結果が違うのだ。
俺の鑑定だけ、『中級虫毒』で、
2人の鑑定では何の結果も得られなかった。
「え?
どういう事っすか?」
オーラスさんが、眉を寄せて言う。
「うーむ・・・魔力自体は感じられるのだが・・・。
虫毒と言う鑑定が出ない・・・」
レンダさんも、ちょっと考えながら言う。
「虫毒と言う物が判らないものね・・・」
変な事が起こったので、
ドラカンさんとリリーも、『中級虫毒』の小瓶を鑑定する。
「む?虫毒だーな」
「ええ、私の鑑定でも虫毒よ?
『中級』は出ないわ」
俺は、少し混乱して言った。
「鑑定は、あれっすよね?
えーと、自分が知らない事まで、鑑定出来ちゃうんすよね?」
ドラカンさんが答える。
「そうだー。
アイテム師のスキル。
言わば神の目だーな」
オーラスさんが、考えながら言う。
「鑑定自体も、レベルと言うか、熟練度がある・・・。
しかも、自分自身の知識があれば、それも鑑定結果に現れる」
レンダさんが、続ける。
「商人なんかは、色々見て勉強して、
目を肥やす事で鑑定レベルを上げるしね・・・」
リリーが言う。
「オーラスおじさんと、レンダさんは、
虫毒の効果を見てないから?」
ドラカンさんが、頷きながら言う。
「元々、虫毒草を鑑定出来たのは、
アルファだけだっただーな。
そのエキスの効果を、俺とリリーは見ただな」
オーラスさんが納得したように言う。
「ふむ、我らの神の目には、
元々虫毒草自体が映らなかった・・・。
魔力は感じられるが、薬効を認識出来ないのか」
レンダさんが、問う様に言う。
「私達も、虫毒が使われるところを見れば・・・ね?」
俺も、問う様に言う。
「『中級』は、俺だけ・・・特殊鑑定の力っすね?」
リリーが、ニコリとして言う。
「虫毒草を見つけるところから、特殊鑑定のお陰ね。
シガラキ様のお陰、シガラキ様の使いのお陰よ」
ドラカンさんが、オーラスさんと、
レンダさんにニヤリとして言う。
「今日の虫毒エキスの効果は、晩飯を食いながら話すだーよ。
さ、聖水のある限り、
HPポーションと虫毒を作ってしまうだーな。
・・・レンダも、虫毒作り試してみるだか?」
レンダさんが、両手を少し上げて首を振り答える。
「いや、私はHPポーション作るわ。
失敗してもなんだし」
オーラスさんが、レンダさんのマネをして言う。
「俺もHPポーションのがいいな。
失敗してもなんだしな」
少し笑いが起こった。
ダンザが、俺に向かって言う。
「お前が作ればいいだーな。虫毒」
俺は、ニヤニヤしながら言った。
「俺はHPポーションもやった事無いし、
失敗して聖水無駄にしてもなんだし、
石削りにMPとっとくよ。
石槍の先は細いから、結構壊れたんだ。
虫毒作りは、オーラスさんにお任せするっす」
オーラスさんが、少し目を剥いて言う。
「シガラキ様の使いも、人使いが荒いなw」
キッチンから料理を持って来たトンバーさんが、
オーラスさんの後ろに立ち言う。
「誰の人使いが荒いって?」
オーラスさんは、おどけて狼狽してみせた。
みんな笑った。
トンバーさんの指示が飛ぶ、
「なんだい?まだ作業に時間が掛かるのかい?
終わらない様なら、後回しにして晩御飯とするよ」
俺は、急いで小上がりのテーブル上の道具を、
アイテム収納に片付け、
入り口の詰め所に持って行った。
さらっと、斜め読みでも、読んで貰って有り難いっす。
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星5やらw頂きたいっす。
反応無いと、便所の落書きだものねw
ソーダでは無いなw




