第五十話。祭壇と供物と臓物。
俺は、ダンザとマメダに連れられ、
地下に防御壁を置きに行った。
防御壁の端には、外側に向かって木の杭が付けられて居る。
子供達が悪戯したら危ないので、
置き場所はどこでも良いって訳じゃ無いのだ。
防御壁と集落の扉だった木の板を、
地下2階に降りてすぐの通路に、アイテム収納から出した。
しっかし・・・。
防御壁をダンジョン以外でじっくりと見ると・・・
ただの丸太だ。
いや、ただのって事は無いな。
両脇から木のスパイクが飛び出してて危ないトゲトゲ丸太・・・。
ダンジョンでは頼もしいが、存在がマヌケと言うか、
トゲトゲで見た目案外凶悪と言うかw
防御壁・・・城とか砦とか、防御陣地の壁。
本来ならその前方には、
水堀とか、地雷原、有刺鉄線とか・・・。
兎に角、突進を防ぐ妨害工作をするもんだよなぁ。
魔物をダンザに寄せる為に、
前方にスパイクを敷くのは無しになって、
両脇だけスパイクだが・・・。
コボルト対策・・・何か突進対策を・・・。
そんな事を、防御壁を見ながらぼんやり考えて居ると、
マメダから声が掛かった。
マメダはここに残って、防御壁の改造をすると言う。
マメダと俺の立つ所を改造し、ステップと床を作るそうだ。
俺とダンザは、メシになったら迎えに来る事を約束し、
傷んだ投げ槍と投げ斧の修理をしに、上に戻る事とした。
上に戻ると、広間が明るかった。
リリーのライトが、みなにお披露目されていた様だ。
直接魔石を見ると眩しいので、深めの陶器の皿に魔石を置き、
祭壇の上の壁高く、煉瓦の隙間に棒を差し、
そこに皿をぶら下げてあった。
天井と皿より上の壁を照らし、
天井と壁により間接的に部屋全体が明るくなってる。
飯の仕度か?広間に女性陣は居なかった。
子供達と、ドラカンさん、オーラスさんの姿も広間には見えなかった。
俺とダンザは、祭壇に向かい、
ドラカンさんが何を捧げたのか確かめる事にした。
・・・酒だ。
酒瓶だった・・・今まで見た酒瓶とは違っていた。
ダンザが、笑いながら言う。
「なんだーな、高級酒でないだーかw」
祭壇近くに居たリリーが、楽しそうに笑いながら言う。
「叔父さん、隠し持ってたみたい。ゼンツに売る用の高いお酒」
ハチムが、祭壇に寄って来て言う。
「それでさ、父さんトンバーさんに怒られたんだよw」
ニックさんとカブールさんも寄って来て言う。
「いや、さ。
シガラキ様に捧げるとなると、やっぱりな」
「そうさ、出来る限り最高の酒でないとな」
ダンザも同意する。
「うんうん、酒の神様でもある訳だし、
一番いい酒を捧げないとだめだーな」
リリーが、顔を曇らせ男衆に言う。
「だめよ?そんな事言って、
高いお酒買おうと思ってるんでしょ?」
俺は、リリーに向かって言う。
「まぁ、高い酒はガバガバ飲まないでしょうし、
ホラ、祭壇には、さ」
リリーは、俺に向かって嗜める様に言う。
「ダメよ?アルファ。
神の使いが祭壇に供えるには、高いお酒が良いって言ったら、
それを方便に、ホントに高いお酒を、
沢山買っちゃうかも知れないんだから」
ニックさんが、俺の肩に手を掛け、
芝居がかった真剣な顔で言う。
「シガラキ様の使いよ、やはりシガラキ様に捧げるに、
安酒は失礼となりましょうや?」
俺は、笑いながら答える。
「安酒でもいいんじゃないっすかね?
シガラキ様も、中間管理神様も、
何を供えろとか言ってなかったと思うっす」
ダンザが、残念そうに言う。
「っち、そこは高い酒じゃないと、
ダメだって言うところだーな」
リリーが、笑いながら言う。
「良かったわ、シガラキ様もシガラキ様の使いも、
高いお酒をご所望じゃなくて・・・。
中間管理神様は、アルファをここに送ってくれた神様よね?」
俺は、答える。
「うん、先に中間管理神様に会って、
宙ぶらりんな状態の俺に、
シガラキ様を紹介して貰って、ここに来た感じだよ」
リリーは、納得した表情で言った。
「アルファの恩人、いえ、私達にとっても恩があるわ。
アルファと縁のある神様・・・。
私達にアルファを送って下さった神様、アルファの神ね」
カブールさんが、妙に感心した様に言う。
「アルファ、お前さんは、2人の神と話をしたのか」
ニックさんも、言う。
「そちらの神様に、お姿とお名前は準備しないのか?」
俺は、答える。
「中間管理神様は、
人を加護する神様になりたいとは言ってなかったっす。
たぶん、タヌキ族にご助力は頂けないっすよ」
ハチムが、明るい声で俺に言う。
「シガラキ様だけで十分有難いですよ。
2人も神様の加護を頂こうなんて、罰当たりです」
ダンザが、ハチムに尋ねる。
「そう言えば、みんな何処に行っただな?」
ハチムが言う。
「父さんは怒られて、聖水を作る準備と言って逃げていったよ。
オーラスさんとレンダさんもその手伝いに、倉庫にね。
子供達は、祭壇に供える何かを取りに、
部屋に行ったけど遅いな・・・。
後は、キッチンで晩御飯の仕度だね、僕も行くかな?」
リリーも、食事の支度に行こうとしたが、
ニックさんとカブールさんに止められた。
ドラカンさん達が聖水を作る準備してるんだから、
ここで待ってる方がいいっぽいね。
暫くすると、子供達が部屋から何かを持って来て、
順々に机の上に置き始めた。
おもちゃだ・・・おチビ達の大事なお宝かw
ぬいぐるみや、木の人形、なんかのひも?木のお面、
セミの抜け殻が入った瓶?・・・色々ある。
ははは、まぁいいさ。
心が篭ってれば、なんだってシガラキ様に失礼には当たらんだろうw
背の足りない子は、ダンザやリリーに抱きかかえられ、
お宝をシガラキ様に捧げた。
他の大人達も、子供達が祭壇に供え物を捧げるのを、
微笑ましく見守っている。
・・・そういえば、犬が見当たらんな。
いつも子供達と一緒に居て、おチビ達を守っているのに。
誰に言うでもなく、俺は言った。
「犬どこいったっすか?」
ニックさんが答える。
「ん?入り口の部屋さ。
今日はシカとイノシシの内臓があるからな、
腹一杯食って寝てるんだろ」
あいつらは、良い物食って寝てるのかw
シガラキ様、聖女リリー、防御壁、虫毒、2つの狩りが共に大漁。
最高の一日だなw
そうこうしていると、聖水準備組みの3人が広間に現れた。
倉庫から、桶やら瓶やら、なんか色々運び出して来のだ。
ドラカンさんが、小上がりに運んできた物を置きながら言う。
「クリーンは掛けてあるから、道具はこんなもんだと思うだが・・・。
ダンザ、この桶に水汲んで来てくれるだか?」
ダンザは、即座に答えた。
「水汲みはアルファの役目だーなw」
お、お前・・・。
心底重い物運ぶのイヤなのなw
リリーが、ダンザに軽い肘撃ちをかましながら言った。
「兄さん、アルファはシガラキ様の使いなのよ?
水汲み係じゃないわ。
そんな扱いしてると、
アルファはここを出て行ってしまうかも知れないわよ?」
ダンザが、口をへの字にして言い返す。
「アルファが出て行く?そんな事ないだーな」
俺は、舌打ちをしながら言った。
「っち、アテが無いから出て行かないけどなw
水、桶一杯でいいすね?」
オーラスさんが、答え、冗談交じりに言う。
「ああ、桶一杯分頼むよ。
・・・アルファが出て行くか、
いや、リリーが居れば出て行くまいよw」
ドラカンさんが、案外真剣な顔つきで言った。
「アルファどころか、俺達全員、
ここを捨てる事になるかも知れ無いだーぞ」
ドラカンさん、
ダンジョン帰りもなんか考え込んでたな。
俺は、尋ねた。
「ここを捨てる?」
ドラカンさんは、小上がりに座り込んで言った。
「うむ・・・。
ここはライツ、ライツ教の国だでな・・・。
そこに、獣神となると・・・まぁ、大丈夫だとは思うだが・・・。
ターク神父に話を通してからだーな。
まぁ、先の話だーし、どうなるかは判らんだー」
ふむ・・・ここらはそうでもないが、
ライツの北の方は獣人差別があるんだったな。
北のヤツ等、獣人が獣神を生み、
ライツに住み着いてるのを嫌うかも・・・か。
オーラスさんが、俺を水汲みに促しながら言う。
「そう心配する事はないよ。たぶん。
ライツ国の中にも、ライツ以外の土地神が、
居ない訳じゃないんだ」
リリーが、空気を変える様に明るく言った。
「大丈夫よ。
もしここを出る事になったって、
私達にはシガラキ様が付いていて下さるんだから。
・・・アルファも一緒に居てくれるでしょう?」
俺は、キッチンに水汲みに向かいながら、背中越しに軽く答えた。
「俺には他にアテも無いし、
俺はリリーに付いていくよw」
後ろから、ダンザ達の笑い声が聞こえた。
キッチンでは、トンバーさん達が夕食の準備をしていた。
作業台の上の皿に、肉が沢山切ってある。
晩飯の仕度は、もう少し掛かるらしい。
カマドの前で、ハチムがスープの煮込みと、肉を焼いていた。
ハチム君・・・火の扱い上手いな。
美味そうな、スープと焼ける肉の匂いが、空腹を思い出させる。
ハラ減ったなぁ。
俺は、聖水作りを試す為に水汲みに来たと告げ、
湧き水からアイテム収納に水を入れた。
トンバーさんが、リリーとレンダさんが、
手伝わないから遅くなるんだと、
笑いながら愚痴っていた。
サニーさんは、聖女様は聖水作りだからしょうが無いと、
笑って居た。
人手が足りない、
そこに、マメダは入らないのねw
ハチムが、マメダは木工担当だから、
替わりに自分が炊事だと笑って居た。
愚痴りながらも、3人とも楽しそうだ。
今日は、シガラキ様と聖女の誕生&ダンジョンも、
普通の狩りもダブル大漁だもんねw
キッチンの見た目の明るさは昨日と同じだが、
みんなの心持ちが段違いかもな。
ここを捨てる事になるかも、
か・・・心配しても始まらないな。
シガラキ様のお導きでどうにでもなるさ。
俺の気分も、防御壁の成功と、
薬草と聖水で一稼ぎと言う見通しがついて、
昨日より少しは明るくなっているようだ。
さらっと、斜め読みでも、読んで貰って有り難いっす。
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星5やらw頂きたいっす。
反応無いと、便所の落書きだものねw
晩飯まだかなー




