第四十八話。聖女の矢~ダンジョンからの帰還とレベルアップ
俺達は、ゲンコツ6階で虫毒のテストを続けた。
矢に塗った少量の毒だけで、イモムシも痺れさせ、
そのまま毒で倒せる事が判った。
魔力探知内に捕らえたので鑑定したところ、
正式名称はジャイアントキャタピラー。
まぁイモムシだ。
足は遅いし柔らかいし、糸を吐くには準備動作が要る様で、
結局、一度も糸を吐かれる事は無かった。
虫毒攻撃一発で、糸を封じてHPの高さも無視出来るんだから、
おいしい魔物と言える。
カエルは、やはり目潰しに弱かった。
目が瞑れないのだ、瞼が無いのか?透明なのか?
目が眩んで突っ込んで来れないし、
逃げもしない、後ろを向くだけだ。
おいしい魔物を通り越して、柔らかいただの的だった。
居ないものとして扱い、後回しで問題無い。
アリは、堅いし、目潰しがまったく効いてない。
眩しく無いのか?
虫が眩しがるかどうかなんて、
考えた事も無かったが、眩しくないのだろう・・・。
特徴としては、外骨格が堅い、コレに尽きる。
攻撃が刺さるのは、マメダの矢とハチムの細槍だけだ・・・、
投げ槍はハチムでも刺さらない。
石槍じゃ、刺さらないのが当たり前か、
分厚い貝みたいだもんな。
鉄なら刺さるだろう、鉄の槍先が欲しい・・・、
一人10本、俺とハチムで20本は欲しい。
刺さらなければ、毒が効かないのが問題だ。
虫毒液を大量にかければ、毒状態に出来るのかも知れないが、
そんなに虫毒も無ければ、かける手段も無い。
マメダが矢で一発入れれば、痺れて毒で倒せるので、
数が少なければ、防御壁に取り付く事さえ出来ないだろう。
実際、同時に3匹までは出たが、
3匹ともマメダが優先して仕留めた。
アリも、まぁ、あまり脅威とは言えない、
堅いけど。
1階からの居残りで、6階からもGマッシュが出た。
毒胞子玉を飛ばして来るキノコだが、
レベルが上がると案外厄介だ。
まず、眩しがらない。
HPが上がっているので、倒すのに手数が掛かるし、
移動スピードも少しは上がって居る。
あまり後回しにすると、
毒胞子玉の射程距離まで近づかれてしまう。
ダンザに一発撃たれた。
連射される訳じゃないから、大した事は無いと言えるが・・・、
攻撃されるのは危険だ。
ダンザは、盾で防いで毒状態にはならずに済んだ。
んだが、ダンザのHPは2減った・・・
完勝とは行かなかったのだ。
最後はコボルド・・・。
やはりこいつが厄介だ。
今回同時に相手にしたのは3匹が最多だったが、
5匹も居たら乱戦になるな・・・。
目潰しは効くが、そう長くは効かない。
いくらか目が慣れてくれば、目を庇って突っ込んで来る。
6階の魔物はタフで、倒すには手数が掛かるので、
防御壁までは簡単に到達されてしまう。
ドラカンさんやダンザが、盾で防御していれば、
HPダメージはほぼ無い様だが、
俺含め、後衛じゃそうは行かない。
マメダは、大した事無いと言うが、
子供程度の体格とパワーとは言え、
噛み付かれたくない。
イメージとしては、
観光地のニホンザルに襲われるのより、ヤバいと思う。
チンパンジーぐらいか?
犬ズラの小鬼、コボルド・・・
身の危険を感じるのはコイツだ。
遊びじゃない、ゲームじゃない、生身の現実世界なんだ。
この世界では、復活などない・・・、
危なっかしい戦い方で、命を賭けるのは御免だ。
コイツの対処法を何か考えなければ・・・。
6階での戦闘は、4部屋で切り上げる事となった。
虫毒エキスが、底をつきそうだからだ。
通路をうろつく、
少数の魔物との遭遇戦を含め6戦、虫毒を試した。
虫毒は・・・人には無害だが、虫には恐ろしい効き目だ。
こんなに便利な虫毒草を、
元冒険者ドラカンさん達も知らぬのは、
普通の鑑定では引っかからないからか?
虫毒草となる雑草自体が、
珍しい種類なのかも知れない?か・・・。
ダンザを先頭に、俺達は来た道を戻った。
4階で、一匹の魔物を通路で倒した以外、
魔物との遭遇は無い。
道は明るいし、俺の魔力探知に何の反応も無い。
マメダが気配察知した一匹のネズミだけだった。
帰り道は、ドラカンさんが知っているし、
ハチムは一度で思えていた。
気弱イケメンハチム君は、オートマップの能力持ってたもんな。
6階から、ダンジョンの外に出るまで、
30分少々しか掛からなかった。
外に出た俺は、全員に報告する。
「魔石59、薬草19、毒消し草11、ラットの歯5、
粘液6、虫糸3、低級HPポーション1。
残りMP、リリー23、俺31。
んーと、魔力探知4回、シガラキの笠5回だったかな・・・。
所要時間2時間半ってトコっす。
ダメージはダンザのみ、ノーダメージとは行かなかったっすね。
ライトの魔石、まだ光ってる・・・以上っす」
ドラカンさんが、ニコリとして冗談めかして言う。
「アルファ、リーダーと荷運びご苦労さんだーな」
マメダが、少し笑いながら言う。
「こっから集落までも、私達は運ばないわよ」
ダンザが、茶化す。
「アルファ、俺の中盾、収納してくれるだか?」
俺は、ダンザが差し出す中盾を、杖で小突きながら言う。
「なんだよ?外だって魔物が居るかもだろ?
自分で持ってろよ」
ダンザが、中盾を放り出して言う。
「外で盾はイランだなw」
リリーが、ライトを消し、
杖の先に付けた投槍を外しながら言う。
「兄さんが、これ持って帰る?」
ハチムが、小盾をダンザに差し出しながら言った。
「これもお願いしようかな?」
ドラカンさんが、笑いながら言う。
「全部、シガラキ様の使いにお願いするだーよ。
あと、水出してくれるだーか?」
俺は、中盾とリリーの投槍をアイテム収納し、
人数分、水入りの瓶を出した。
ダンザ、お前は小盾を装備してろw
「その杖は、リリーが持ってるのがいいっすよね?
・・・アイテム収納一杯って訳じゃないけど、
防御壁ここに置いていこうかな?
他所じゃ使わないし」
マメダが、矢を弄りながら言う。
「防御壁の後ろ側、
アタシとアンタの足場に、板張るから持って帰ってよ」
俺は、水を配りながら言う。
「了解。
あれ?・・・
アイテム収納の量、70kgほど増えてるっす」
ドラカンさんが、水を受け取りながら言う。
「Lvが上がったからだーな。
アルファ、お前さんLv7だー」
ハチムも、水を受け取りながら、嬉しそうに言う。
「僕もLv7になってますよ」
ダンザ、リリー、マメダも、
ステータスチェックをし、口々に言う。
「俺は8だーな」「私も7になっってるわ」「アタシも7」
俺もステータスチェックをした。
6階の魔物Lv8ぐらいだったもんな、倒せばLvも上がる、か。
光を放つとか、ファンファーレとか、
全回復とか、なんも無しか・・・、
LvUpに気付きさえしなかったわ。
特になんも新しい技とか魔法とか無い。
力だの魔力だの、ちょびっと数値が上がってる程度だ。
強くなった実感は無い。
HPMPは8上がって58、58か、
1Lvで4上がる程度だな。
アイテム収納量は、1Lv40kgか・・・案外でかいか?
リリーが、嬉しそうにドラカンさんに向かって言う。
「叔父さん、私、この調子でLv上げ頑張るわ。
そうすれば、魔力が上がって聖水を作れる量も増えるはずだし、
シガラキ様の笠だって、もっと強くなるはず・・・。
そうなれば、もっと深くだって潜れるようになるわ」
ダンザが、受ける。
「リリーは聖女となってるだもんな。
俺もLv上げ、前衛として付き合えるところまで付き合うだーな」
マメダも言う。
「そうね・・・アタシもやるわ。
聖女とシガラキ様の使いの矢となるわ。
2人は、聖女の盾と槍と言ったところね」
俺も、ドラカンさんとハチムに向かって言った。
「タヌキ族を盛り立てる・・・、
今のところ俺に出来そうなのは、聖女のLv上げっす。
ダンジョン潜れば、いくらか集落の儲けにもなるでしょうし・・・。
ハチム、聖女の槍として一緒にやってくれないか?」
ハチムが、少し考えながら言う。
「聖女の槍ですか・・・?
うーん、防御壁と虫毒がありますしね・・・。
僕も、一緒に出来るところまでLv上げやります。
出来るところまで・・・ですよ」
ドラカンさんが、真剣な表情で言う。
「リリーもアルファも、焦る事は無いだーぞ。
ゆるゆる、出来るだけ安全にやるだー」
俺は、頷いて言った。
「はい、出来るだけ安全に。
急いでLv上げる為に、どんどん奥に行く様な事はしないっす。
確実に、少しずつ・・・
先ずは1~5階で稼いで、少しだけ6階でLv上げ。
要らぬ危険は犯さないっす。
リリーに何かあったら、シガラキ様、
シガラキ教がどうなってしまうか、判らんっすから」
ダンザが、俺に問う。
「リリーが居なくなったら、シガラキ教が消えるだか?」
「判らんけど・・・神職がリリーしか居ない訳だし」
ドラカンさんが、全員の目を見ながら言う。
「うむ・・・そこらの事もあるだが、
リリー、お前ら、ゆっくりだー。
焦って危ない橋を渡るでないだぞ?
生きて帰る事が基本、冒険者の最も大切な事だー」
俺達は全員、
ドラカンさんの目を見て頷いた。
ドラカンさんが、満足げに頷き、明るい声で言った。
「さて、ションベンして帰るだーか、マメダ、リリー」
マメダが、嫌な顔をして言う。
「父さん、やーね。
聖女様、あっちいきましょう」
リリーとマメダは、
ダンジョン出口から藪に向かって歩いて行く。
俺とダンザ、ハチムとドラカンさんは、
目配せをし、口をへの字にして軽く笑いながら、
ダンジョン出口横の崖に向かい、並んでタッションをした。
ハチムが呟く。
「父さん、言い方w」
ドラカンさんは、ハゲ頭を撫でていた。
さらっと、斜め読みでも、読んで貰って有り難いっす。
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星5やらw頂きたいっす。
反応無いと、便所の落書きだものねw
さて帰りますか。




