第四十三話。陣地内に灯る希望の光~防御壁戦法と目潰し聖女
俺は、扉の先2m程のところに防御壁を出した。
ズズ・・・。
防御壁が小さな地響きを立てる。
と、同時に、ダンザが扉を押し開き、
真っ暗な部屋の中に、リリーの魔石の強い光が差し込んだ。
ダンザは、防御壁の先に3歩駆け込み、
盾を構え防御壁を斧で軽く小突き声を上げる。
「来い!」
部屋に雪崩れ込む前衛に続いて、走りこむ俺の横目にも、
明るく照らされた部屋の中、
防御壁の先端から左手4m程先に、Gラットが見える。
Gラットは、ダンザに反応している様に思えるが、
ダンザに向かって突進出来ないで居た。
眩しいのか?
そのネズミに、唐突に投槍が刺さる。
ドラカンさんの投槍だ。
一瞬の間を置いて、
2本目の槍と矢がほぼ同時にネズミに突き立った。
ハチムとマメダの攻撃であった。
俺には、視界にある魔物のHPグラフを確認する間もないが、
ネズミが倒されている事は確実だ。
防御壁の右後ろの土台に、俺が乗る寸前の事だった。
土台に乗り、定位置に着いた俺は、
投げ槍を抜きながら言った。
「ナメクジ、手前から」
言い終わるのを待たず、
防御壁先端右前方8m程の所に居るナメクジに、
石斧が投げられて居た。
斧は直接当たらなかったが、
手前の床でバウンドしナメクジに当たる、
しかし刺さりはしない。
ナメクジのHPの減りを確認する暇も惜しい、
俺は手傷を負ったナメクジに石槍を投げつけた。
俺の槍は、左に外れた、ダメージ0だ・・・。
次の瞬間、斧が当たったナメクジに矢が突き立つ。
矢を受けたナメクジのHPが0になったのが、
視界の棒グラフで確認出来た。
一瞬置いて、2匹目のナメクジに、
槍が二本連続して突き刺さる、瀕死だ。
俺の追撃の前に、瀕死のナメクジに石斧が当たった。
2匹目のナメクジのHPも0、残りはキノコだ。
と、思った瞬間、中央奥のキノコに、矢が突き立つ。
俺も、12mほど先に居る、
キノコ足元の床を狙って槍を投げる。
バウンドして当たったが、
刺さらなかったし、HPも0にならなかった。
でも、ダメージは与えた。
最後のキノコに、ドラカンさんの投槍が突き刺さった。
キノコのHPが0なのが、視界の棒グラフで確認出来る。
4匹の魔物を倒した。
防御壁を出してから10秒にも満たない、
魔物の攻撃圏に入らない、一方的な戦闘であった。
俺は、防御壁の上で息を吐き言った。
「ふぅ・・・4匹だけっすね」
ドラカンさんが、指示を出す。
「リリー、扉を閉めるだー」
リリーは、頷き指示に従い扉を閉める。
ダンザが、後ろを向き、目の上に右手を当て光を遮り、
防御壁に座る様に寄りかかって言った。
「いいだな、防御壁と照明」
ハチムも、嬉しそうに防御壁をポンポンと叩きながら言う。
「いいですよ、身を晒さず、投槍でこっちだけ攻撃ですからね」
マメダが、防御壁の上から、ハチムをからかう様に言う。
「ハチム兄ちゃんも、後衛みたいなもんねw」
ドラカンさんから、注意が入る。
「ハチム、防御壁に頼りすぎるで無いだーぞ?
ダンザ、俺で、2匹は引き受けるだが、
3匹目を止めるのはお前だー、後衛を守る、
忘れるで無いだーぞ?」
ハチムは、首をすくめながら盾を掲げ、
判ってるという表情をした。
俺は、ドラカンさんに疑問に思った事を問い掛ける。
「ネズミ、おかしかったっすよね?
照明の効果っすか?」
ドラカンさんは、少し考えながら言う。
「うむ・・・ダンザに突っ込まなかっただーな。
防御壁のせいなのか、照明で目が眩んだのかは、
はっきりしないだーが」
ダンザが、眩しそうに言う。
「そうだっただーな、
俺には、リリーの魔石を眩しがってる様に見えただー。
今の俺みたいにw
リリー、照明下ろしてくれるだな?」
リリーは、高く掲げていた杖を、横に向けながら言った。
「一旦消しましょうか?」
ドラカンさんが、言う。
「いや、また点けるには、魔力が1とは言え掛かるだー。
リリー、魔力を温存するだーぞ?」
リリーは、頷いて答える。
「はい。
でも、私の魔力なんて温存しても、
あまり意味無いんじゃないかしら?」
ドラカンさんが、笑いながら答える。
「はは、リリー、お前は聖女となってるだぞ?
防御支援の笠もそうだが、
聖水製造とステータスにあっただー」
俺は、また疑問に思った事を口にした。
「聖水作るのに、魔力使うっすか?」
ドラカンさんが、ニヤリとして言う。
「聖水を作る現場を見た事はないだが、魔力が掛かるはずだー。
・・・聖水が手に入るのは、凄い事だーぞ?」
ハチムが、続ける。
「ええ、アルファさん。
聖水があれば、薬草からHPポーションが作れるんですよ」
マメダも、俺に向かって言う。
「聖水を教会から買うんじゃ、儲けなんて出ないけどね」
ダンザも、補足する。
「つまり、リリーの魔力が、薬草をHPポーションに換えるだーな」
リリーは、今気が付いたのか、嬉しそうに言う。
「危険が少ない低層で、薬草より高価な、
HPポーションが手に入っちゃうのね?」
そうだった、この世界の聖職者は、
冒険者を続けないのが普通だったな。
なんせ、ダンジョンに潜らず、
命を賭けずに食って行けるんだから。
俺は、少し納得して言った。
「儲かる・・・っすか?」
ドラカンさんが、ハゲ頭を撫でながら言う。
「まぁそう儲かるでもないだーな。
でも、ここを殲滅するだけで、
10階ボスの先で狩りをするぐらいの儲けになるはずだー」
マメダが、俺に向かって、少し小馬鹿にする様に言う。
「ボスの先で狩り出来るなら、
もう駆け出し冒険者とは言えないわ。
駆け出しの苦労で、そこそこの儲けが見込めるって事よ」
俺は、今度こそ納得して言った。
「大儲けじゃないけど、美味い事なんすね?
リリーの魔力、聖女の力か・・・」
リリーが、嬉しそうに言う。
「シガラキ様、アルファのお陰よ?
私、ダンジョンで頑張るわ。
Lv上げして、MAXMP多くして・・・。
それに笠だって強くなるかも知れないし」
ドラカンさんが、リリーに向かって微笑みながら言う。
「リリー、気張るで無いだーよ。
ゆっくりでいいだーぞ、危ない橋を渡る事は許さんだー」
リリーも、ドラカンさんに微笑み返し、いたずらっぽく答える。
「大丈夫よ、叔父さん。
今だって私、何もしてないものw」
そう言えばそうだ。
リリーは、攻撃参加してないやw
ライトの魔石掲げて、ポーション準備して、
後ろに居てくれてる。
・・・何もっちゃ何もかw
マメダが、俺に向かって言う。
「ところでアンタ、戦利品と武器の回収してくれない?
魔物は、とっくにダンジョンに飲まれてるわよ」
俺は、防御壁に乗ったまま、
アイテム収納をしながらブツブツと言った。
「あ、ごめん、忘れてた・・・。
魔石4の、粘液1の、薬草1の・・・斧2の、矢3の、槍6っと」
ハチムが言う。
「槍7ですよ」
マメダも言う。
「アンタの槍、魔力探知外まで飛んでったでしょうよ」
ダンザが、ヘラヘラしながら俺に向かって言う。
「お前の一発目w
ホラ、あそこまで飛んでってるだーな、見えないだか?
ノーコンだーな、アルファはw」
ダンザめ、運良く投げ斧当たったからって、
うるせーな・・・。
ノーコンとか変な言葉覚えやがって・・・。
お前の投げ斧だって、これから先アテになるもんかい。
ドラカンさんが〆る。
「投げ斧も投槍も、練習すればいいだーな。
両方結構な攻撃力だっただー。
この階の魔物なら、3発も入れれば倒せるだーな」
俺は、リリーが奥に飛んでった槍を拾いに行こうとしてるのを、
手でさえぎるポーズで止め、
防御壁から降りて槍に向かって歩き出しながら言った。
「2発で倒せたのも居たっすよね?」
ダンザが、言う。
「投げ斧の攻撃力が、一番高かっただーか?」
マメダが答える。
「斧、刺さる投槍、矢、アルファの槍って感じだったかしら?」
ハチムが、フォローに回る。
「アルファさんも練習すれば、今に刺さりますよ」
刺さるかね?石の穂先が・・・。
しかし、刺さってるんだよなぁ魔物に・・・
ドラカンさんの石槍。
ハチムに至っては板に。
マメダの矢は先は鉄か・・・
俺も鉄・・・鉄の穂先の槍があれば刺さるよなぁ?
鉄、金属が高価な世界か・・・町で見た限り・・・
兎に角一儲けだよなぁ。
そんな事を考えながら、
最後の槍を魔力探知範囲に捕らえ、アイテム回収した。
ドラカンさんが言う。
「まぁ、当たらん事もあるだし、咄嗟の事だー。
攻撃力にも魔物のHPや防御力にもブレがあるだし、
魔物一匹に、3発当てるつもりで攻撃すればいいだー」
マメダが問う。
「うーん、アタシの手返しが早かったかな?
まぁ、倒し切ったか確認してる間もないし、
最速で攻撃していいわよね?
ムダに4発目となっちゃっても」
ドラカンさんが、答える。
「そうだーな。
みんなの攻撃タイミングとかは、やってれば掴めて来るだーが、
誰かの攻撃を待つ事は無いだーぞ?」
ハチムが、嬉しそうに言う。
「しかし防御壁凄かったですよ、
なんせこっちは攻撃されてないんですから」
ダンザも、同意する。
「こっちの投げ武器は、
アルファが居る限りほぼ無限だし、防御壁凄いだな」
ドラカンさんが、続ける。
「うむ、特に乱戦とならないのがいいだー。
ダンザ、ハチム、
防御壁のこちら側に魔物を入れない事を心がけるだーぞ?」
ダンザもハチムも、防御壁を触りながら頷く。
「こっからが陣地だって判りやすく、
こっちの陣地に魔物を入れないだーな」
「後衛だけじゃなく、
前衛だって陣地内に魔物が居ないのは安心ですよ」
リリーが、言う。
「乱戦が防げるなんて、アルファ凄いわ」
防御壁戦法、この先どうなるか判らんが、
とりあえず合格だ。
リリーに向かって、俺は言った。
「ライトの目潰しと相性がいいみたいだし、
防御壁、役に立ちそうだね」
ドラカンさんが、引き継ぎリリーに向かって言う。
「リリーは、ライトの目潰しだけじゃないだーぞ?
ダンザは気が付いて無いようだーが、
防御支援魔法、シガラキ様の笠は凄い事だー」
ダンザが、不思議そうにドラカンさんに問う。
「笠が凄い?なんだーな?」
ドラカンさんが、ダンザに向かって答える。
「確かに笠は、お前の盾より防御力は低いだー、笠は6だでな。
しかし、基本防御力に6足されるのと、
革手袋や盾で上がる防御力では、全然違うだーな」
俺は、考えながら言った。
「盾や手袋とは、違う・・・。
基本防御力、全身に、生身に掛かってるからすか?」
ハチムが、言う。
「なるほど・・・盾で防御しなくても、
手袋でガードしなくても、か」
ダンザが、納得して言う。
「生身が強くなってるだか・・・。
目に皮手袋、喉に革皮手袋、
全身に革装備してるようなもんだか?」
ドラカンさんが、〆る。
「まぁ、そういったイメージだー。
さて、アルファ、防御壁も収納してくれるだか?」
俺は、マメダが降りるのを待ち、防御壁をアイテム収納した。
防御壁を降りたマメダが言う。
「そろそろ次行く?」
ドラカンさんが、指示を出す。
「マメダ、アルファ、扉の先に魔物は居るだか?
脇道を戻って、1階層殲滅と行くだーよ」
ダンザが、呟く。
「シガラキ様の使いと、聖女の力試し、
2回戦と行くだーな」
珍しく、気弱ハチムが同意する。
「防御壁と照明とシガラキ様の笠・・・
試しましょう」
リリーは、杖を左手で高く掲げ、
右手にHPポーションを握り締め、
自分に言い聞かせる様に言った。
「いつもと同じよ、私は付いて行くだけ・・・
行きましょう」
俺は、ダンザの待つ扉に向かい、
魔力探知の結果を報告した。
「先の通路20m何も居ません。
笠効果残り時間15分強、探知20分弱」
ドラカンさんの、指示が出た。
「良し、ダンザ、行くだ」
さらっと、斜め読みでも、読んで貰って有り難いっす。
いいねやら、感想やら、ブックマークやら、レビューやら、
星5やらw頂きたいっす。
反応無いと、便所の落書きだものねw
お待たせしましたw
やっと、素人戦術が始まります。




