第三十八話。義兄弟の小競り合い~ノーコンと6人PTの弊害
ゲンコツダンジョン前広場にて、
防御壁を設置し、投槍、投げ斧、弓の試し撃ちをする一行。
ドラカンは、アイテム師とは言え元冒険者であり、
Lv20越えの実力者。
ドラカンの投げる石槍は、的の板に刺さらないが、
コントロールは抜群であった。
防御壁から6m、12m、18mほどに設置した9つの的に、
投げる槍を全て命中させていた。
板だから刺さりはしないが、
肉であれば、魔物であればと、思わせる投擲である。
もちろん刺さらぬでも、威力はある。
木の柄が付いて重量が増した尖った投石、投石の上位と言える。
マメダの弓も百発百中。
『への字』防御壁の左後ろ、腰ほどの高さの土台に乗り、
手前に取り付けた壁に下半身を隠し、壁の上から矢を撃ち下ろした。
撃ち下ろしの効果か、
前衛の頭越しとなり同士討ちの心配が無く、射線が取りやすい。
マメダの弓は、これまで以上の冴えを見せていたのであった。
特筆すべきは、ハチムである。
槍の才の効果か、石の穂先がダンジョンの扉であった、
4センチほどの板に深々と突き刺さる。
近くの的に力を込めた一撃、
手早く遠くの的に2連撃、3連撃と色々な投げ方を試していた。
遠くの的を外した事が一度あったが、命中率はほぼ100%。
投槍は、防御壁に守られ、
近中距離を攻撃するのに最も適しているのかも知れない。
ダンザの投げ斧は、恐ろしい威力であった。
近場の板を立てかけて作った的を、なぎ倒すほどの威力であった。
壊れた的を、アルファが回収し立てかけ直す事数回。
石の頭を固定する虫糸が切れて、外れてしまったものが数本。
しかし、ダンザの手を離れた投げ斧の半数は、
地面に突き刺さった。
的に当たらず広場の草の上を滑って、
奥の森まで飛んで行った物もある。
命中率に難があると言わざるを得ない。
が、当たれば十分な火力と言えよう。
アルファは、意外な才能を発揮していた。
的に刺さった槍や矢、地面に転がった投げ斧を、
防御壁右後方の土台の上に立ったままアイテム収納し、
防御壁の斧槍置きや、マメダの矢筒に補充していた。
魔力探知を使い、物の位置を正確に感じ取れば、
20数メートル以内の物は、
アイテム収納の出し入れが出来てしまうのであった。
近場であれば、放たれた武器を回収し補充が出来る。
ダンジョン内の戦闘において、
弾切れの恐れが大きく減ったと言える。
投槍については、特筆すべき点は無かった。
ダンザより的には当たるが、
ドラカンより威力は落ちていると言った所である。
リリーは、投げ斧投槍の修練を、
後ろから静かに見守っていた。
冴えを見せるマメダの弓。
当たれば恐ろしい音を立て、的を破壊するダンザの投げ斧。
鋭く木板に突き刺さるハチムの石槍。
黙々と矢や槍斧を回収し、
一歩も動かず音も無く補充を繰り返すアルファ。
すごい・・・ダンジョンでこれが出来れば、
身を晒す事無く、より安全に戦えるかも知れない。
いけない・・・期待しすぎてはいけない。
声に出して言ってはいけない。
アルファを追い詰める事になるから。
リリーは、心の中で感謝の祈りを捧げていた。
シガラキ様、
神の使いアルファを送って下さり有難う御座います、
アルファと我らドラカン集落の者にご加護を、と。
十分に防御壁からの攻撃練習を行ったのを見計らい、
ドラカンは、PTメンバーに声を掛けた。
「ふぅ、このくらいでいいだーな。
アルファ、一旦防御壁を収納してくれるだか?」
俺は声に出して答えた。
「あい、っす。
えーと、ドラカンさん声声」
ドラカンさんは、首をすくめハゲ頭を撫でていた。
後ろから見ていたリリーが言う。
「もう十分かしら?」
PTメンバーは目配せをして、口々に答える。
「十分っす」「もういいわね」
「もういいだーな」「切り上げましょう」
俺は、防御壁に投げ斧投槍を補充できるだけ補充し、
残りをアイテム収納しておいた。
マメダが土台を降りるのを確認し、防御壁をアイテム収納する。
ドラカンさんから指示が飛ぶ。
「アルファ、ダンザ、投げ斧の回収もするだーぞ」
ダンザが、口をへの字にして言う。
「俺はいいだーな。アルファ頼むだーな」
おいこら、ジュニアヘビーのプロレスラー!
「何で俺だけ、
お前がノーコンのせいで、奥まですっとんでったんじゃないか」
「お前の槍も一本奥まで行っただな」
ドラカンさんが、一番近くの的にしていた板を倒し、
その上に座りながら言う。
「一息付いたら、ダンジョンで防御壁を試すだー。
その前に用足しも水分補給も済ませるだーぞ」
ドラカンさんの座った板の端に座りながら、ハチムが言う。
「アルファさん、
壊れた斧出してくれたら直して置きますよ」
リリーが、座った2人に向かって歩きながら言う。
「アルファ、良かったら水入りの瓶も出して言って頂戴ね」
俺は、壊れた斧と虫糸と水を、
ドラカンさんの前にアイテム収納から出し、
ダンザのケツを、左手にアイテム収納から出した杖で、
軽く突っつきながら言った。
「回収に行くか」
「俺行っても何もする事無いだーな。
お前が見つけて、お前がアイテム収納して、
お前が運ぶだけだーな」
「うるせー、お前が投げたんだろうが」
矢をいじり、小さな歪みを修正しているマメダから、
軽く雷が落ちた。
「いいから、さっさと行って来なさいよ、アンタ達」
俺とダンザは、
渋々斧がすっとんで行った森に向かって広場を歩き出した。
「お前、何本奥まで投げちまったんだよ」
「6本か7本だーな」
「始めの一本も入れて?」
「それなら8本かもだーな」
「しょうがねーノーコンだな」
「お前もノーコンだーな」
ドラカンさんが声に出さずに指示を出してきた。
「ダンザもアルファも、投擲の練習が必要だー」
ハチムが声に出して、広場の先に歩く俺たちにフォローを入れる。
「練習するなら、ダンジョン内ならそう広くも無いから、
回収気にせずに出来るでしょう?
それに、近場の的になら、2人とも結構当たってた訳ですし、
今のままでも役に立ちますよ」
槍の才持ちの気弱イケメンめ、
それはフォローになってるのかい?
マメダが声に出して言う。
「馬鹿ね、ハチム。
突っ込んで来るネズミなんか、
引き付けて斧や槍で攻撃すればいいじゃない。
遠くのキノコやナメクジを、
相手から攻撃されない距離で攻撃する為の投げ武器でしょう?」
ドラカンさんが声無しで答える。
「そうだーな。
前衛は、突っ込んで来るのを片付けるまで、
投げ武器の出番は無いかも知れないだー。
先にそいつらを片付けて、
残った遠くのを、安全になってから攻撃するのが良いかもだーな」
俺は、広場の中ほどにある投槍を拾わずに、
跨いで奥に向かいながら声に出して言った。
「なるほど、そうっすね・・・。
ネズミが突っ込んで来るのに、ノーコンが投げ斧当てるより、
普通に待ち構えて、防御壁に取り付いたら斧でゴンが良さそうっすね」
ダンザが、拾った投槍の石突で、
俺のケツを軽く突きながら言う。
「ふむ、盾と斧で普通にやって、
暇になったら遠くのヤツに投げるだな、それがいいかもだな」
ドラカンさんが、のんびりとした口調で言う。
「まぁ、魔物が防御壁を前にしてどう動くのか判らんだー。
先制して余裕があれば、
俺やハチムには一発二発投げ武器の間が取れるかもだが、
まぁダンザは先頭で盾持って、
待ち構えるのがいいと思うだー」
そうこう話している内に俺は、
投げ斧6本を感知しアイテム収納し終えた。
俺は、左手に持った杖で、
後ろから来る、
ダンザの槍によるケツ攻撃を遮りながら声に出して言った。
「良し、回収終了。
始めの一本は遠くまで行ったろうし・・・、
もう一本は見当たらないけど、まぁいいだろ、
薪に石縛っただけのもんだしな」
ダンザも声を出して答える。
「わざわざ探すもんでも無いだーな、
タダだし、ゴミみたいなもんだー」
無くした本人が言うな!
つーか後ろから突っつくな!!
「無料だが、手間は掛かってるんだかんな」
振り向いた俺と、
杖VS投槍で小競り合いをしながらダンザが言った。
「何だーな、投げ斧の一本や二本、
頭作ってくれりゃぁ寝るまでに、
100本でも200本でも作ってやるだーな」
後ろ向きで歩くダンザに杖で攻撃を仕掛け、
ドラカンさん達に向かって歩きながら俺は言う。
「石削るのだって魔力使うし、
棒や虫糸だって要るんだからな、
細かくは無料じゃないぞ」
またマメダから小さな雷が落ちる。
「アンタ達、仲いーわね」
ドラカンさんもリリーもハチムも笑って居た。
リリーが〆た。
「ところで叔父さん。また声が出てないわよ?」
ドラカンさんは、首を軽く竦めハゲ頭を撫でた。
俺たちはしばらく歩き、
ドラカンさんの近くの板を倒してその上に座り、
しばし休憩を取った。
さらっと、斜め読みでも、読んで貰って有り難いっす。
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星5やらw頂きたいっす。
反応無いと、便所の落書きだものねw
いやー、ダンジョン戦楽しみですなぁw
何をかったるい事を・・・話を動かせ俺!!




