第三十二話。聖女の誕生~魔石考察の続きと神の名
リリーは詰め所のダンザとハチムを起し、
外のドラカン達に朝食の準備が出来たと伝えに行った。
テーブル席に皿を準備している最中、
考え事で固まったまま立ち尽くすアルファを見て、
ダンザとハチムが声を掛ける。
「おはよう、アルファさん」
「おはようー、なんだーな?また考え事だな?」
2人に声を掛けられ、少し我に返ったアルファが言った。
「なぁ、魔石の魔力ってなんだろうな・・・」
まだ寝ぼけているダンザが、あくび混じりに言った。
「はぁ?魔石の魔力?」
ハチムが、後ろを指差しながら言う。
「僕は判らないよ。そういうのはオーラスさんが知ってるかも?」
リリー、ドラカン、オーラス、ニック、マメダも、
子供達と犬を連れ、広間に入って来る。
遠くから話を振られたオーラスが言う。
「朝から何の話だい?」
ハチムが、良く判らないと言う表情で答える。
「魔石の魔力ってなんだろうって、アルファさんが」
キッチンの女性陣が、
広間のテーブルと小上がりに朝食を運んできた。
トンバーさんの指示が飛ぶ。
「ホラ、みんな席に付きな、
リリーとマメダは運ぶの手伝っておくれ」
一旦会話は後回しで、皆朝食の支度に取り掛かった。
トンバーさんの仕切りで朝食が始ろうとした時、
リリーが、子供達に声を掛けた。
「ご飯の前に、朝のお祈りよ?」
「お祈り?」「お祈りなーに?」
リリーが、壁に張った山神様を描いた紙を指差し言った。
「シガラキ様に、いただきますってお祈りしてから、
ご飯にしましょうね」
リリーは、お祈りの手本を示す。
子供達は、納得したようだ。
山神様の絵に向かって、年かさの子がリリーをマネて、
手を組みお祈りをする。
それを見て、おチビ達も次々と祈りを捧げた。
「シガラキ様にお祈りー」「いただきますするー」
「いただきまーす」「シガラキ様ー」
大人達も、同じように朝の祈りを捧げた。
祈りを捧げたトンバーさんが、子供達に笑顔で言う。
「さぁ、いただきましょう」
子供達を含め一同口々に言った。
「いただきます」
朝食が始った。
おチビ達め、山神様の呼び名はすっかり『シガラキ様』だなw
まぁいいさ、名は他に案が無いし、
シガラキと言う音?言葉はこちらの世界には無いらしい。
町の礼拝所に行った時に山神様に、
シガラキで良いか伺いを立てよう。
シガラキ、信楽か・・・。
信も楽も悪い意味の漢字じゃないし、案外いいかもな。
しっかし、リリーは美しいな・・・。
おチビ達に祈りをうながす姿なんて、もう聖女だw
うん、山神様の姿はやっぱりリリーをモデルにしよう。
それしかない!
そんな事を考えながら、朝食を取っていると、
隣のダンザが声を掛けて来た。
「お前、なんだっけ?魔石がどうとかは良いのか?」
あ、そうだった。
俺は、テーブル席のオーラスさんに問い掛けた。
「オーラスさん、魔石の事っす。
魔石のMPと人のMPってどう違うっすか?」
テーブル席のオーラスさんが、少し考えてから答える。
「魔石と人のMPか・・・同じものなんだが、何がおかしい?」
「魔石を壊す時その威力が、
入ってるMPを使った魔法に比べ低い事っすかね?」
「ああ、そういう事か。
MPを燃料に魔法を使うと、変換効率が良い。
使う人の腕が上がると、より変換効率が上がる。
まぁ、どれだけ修練しても変換効率100%まで。
使うMPが内包している以上の、エネルギーは得られない」
「はい」
「魔石にも、同じだけのエネルギーを内包したMPは入って居るが、
MPのまま、周りの空間に溶けてしまうと言ったところか」
「ライトの魔法では出来てますよね?
魔石のMPをエネルギーに換えるのは難しいって事すか?」
「やり方にもよるし、腕にもよるし、魔法にもよると言った所だな。
魔石を壊す・・・矢の先に付けるのを想定しての話だろうが、
石が壊れる時にエネルギーに変わる率は低い。
ただ壊す、散らすだけだからな、ほぼMPのまま散ってしまう」
「ふむふむ」
「一方、魔法は、法、術だ。
理屈があり、法則があり、まぁ効率良く出来ている。
地水火風聖闇、魔法には色々な属性があるが、
聖に属するライトの魔法は、
凄くMPをエネルギーに変換する効率がいい。
触媒は要らず、廃熱も出さぬ、光を出すだけだからな。
火も変換効率は悪くないのだが、
触媒は要るし、変換したエネルギーも、廃熱としてすぐ散ってしまう。
一瞬での爆発とか、高熱を一点に維持するとかは、
同じMP、同じ魔法でも、術者の力量で大きく差が出てしまう」
「なるほど・・・俺の地はどうっすか?」
「地は、石や土、腕が上がれば、金属も操れるようだが、
飛ばしたり、形を変えたりか・・・変換効率は良く判らん。
光らすとか熱や冷気、電撃、回復、防御・・・
闇は魔族の魔法だから判らんが・・・、
そういう、まぁ、あまり冒険者向き、
攻撃や防御に直接貢献する属性では無いな」
うお、電撃?
風の属性か?
・・・なるほど、風属性が冒険者に人気なのはそういう事か、
攻撃力は強そうだし、触媒もいらんだろう・・・。
中間管理神様、山神様、俺、風が良かった。
また固まって考え事をする俺に向かって、
ドラカンさんが慰めの言葉を掛ける。
「アルファの地も悪くないだー。
特に、アイテム収納との相性が抜群だーな。
普通のアイテム収納は、触ってるか、
離れてても1メートル程度の距離だー。
なんと言うだか、自分の手の届く範囲、肌感覚と言った所だーな。
お前の収納は、距離が長いだな。
たぶん、魔力感知、お前の肌感覚範囲で、
アイテム収納が出来てるだな。
それに、レベルが上がれば、
土のヤリや石のヤリを、地面から生やす事が出来るだな。
触媒要らずだで、これも役に立つだー」
オーラスさんも、フォローに回る。
「そうだな、アーススパイクは戦闘に役に立つぞ」
距離が離れててもアイテム収納出来るって・・・
万引きスキルかい!
いやー・・・明らかに電撃の方が・・・。
あれ?
いや、待てよ?
「アーススパイク・・・石のヤリを生やす・・・」
隣のダンザが、
固まって独り言を言う俺に向かって言った。
「どうした?石のヤリがどうかしただか?」
「えーっと・・・あれ?
下から突き上げる感じじゃないけど・・・、
魔力ゼロでアーススパイク原、
敷けちゃうんじゃないか?・・・と」
何をのたまわってるのか?と言った表情でダンザが言う。
「なんだな?
アーススパイク原?」
地雷原じゃないが、陣地、防御壁の前に、
石のスパイク敷いちゃえばいいんじゃね?
魔物、特に突っ込んで来る系の魔物に、
踏ませればいいんじゃね?
魔法で作るんじゃなく、
アイテム収納で、
防御壁と一緒に出しちゃえばいいんじゃね?
「地雷原。
えーと、陣地に突っ込まれないように、
陣地の前に踏んだら爆発する爆弾を、隠して仕込むんだけど。
防御壁のさ、前。
魔物が突っ込んで来るところに、
石のスパイク準備しとけば、魔物踏むっすかね?」
ダンザが、考えながら答える。
「丸見えだか?どうだろうな・・・ネズミは・・・、
突っ込んで踏むか・・・も?」
マメダが、言う。
「なんで石かな?木のスパイクでいいじゃないのよ」
テーブル席の元冒険者組み、
ドラカンさんオーラスさん
ニックさんレンダさんも考え込んでいる。
ドラカンさんが、口を開いた。
「スパイク・・・ものによる、
魔物によるだーな・・・」
オーラスさんが、考えながら言う。
「いや・・・ネズミでも突っ込んでは来ないだろう・・・。
前衛に突っ込むのをヤメた場合、
横から回って来るだろうから、
後衛が危険に晒されるかも知れん」
「ダメっすか・・・」
ドラカンさんが、言う。
「いや、悪くないかも、逆だな。
防御壁の両サイド・・・。
悪くないかも知れんだー」
トンバーさんの鶴の一声が響き渡る。
「あんた達、いいから早く食べちゃいな。
食べ終わったら防御壁作るんだろ?
作りながら考えればいいじゃないか。
ホラ、いつまで食べてるんだい、いつまでも片付かないよ」
話に夢中の俺達は、皆一斉に食事に戻った。
防御壁戦法・・・地雷原、スパイク原とは行かなくても、
奥が深いかも知れないな。
子供達は、食事を終え、外で遊びたいと騒ぎ出した。
聖女リリーが、皆の食事が終るまで我慢しなさいと、
優しく子供達を躾ける。
転生者、山神の使いアルファ。
そして元冒険者達、元冒険者達の子。
各々防御壁戦法について、この先の事について、
思いを馳せながらの朝食であった。
さらっと、斜め読みでも、読んで貰って有り難いっす。
いいねやら、感想やら、ブックマークやら、レビューやら、
星5やらw頂きたいっす。
反応無いと、便所の落書きだものねw
いいから、壁作れ!
いいから話進めろw




