第十五話。荷運びその1~扉と土と魔力探知
洞窟の出口で、10分近くぼんやりと突っ立って居るアルファに
中からリリーが声を掛ける。
「アルファ、朝ごはん出来たって,
みんなに伝えてくれる?」
アルファは、我に返り、
洞窟の中に手を振って了解のサインを出した。
振り返り、広場のドラカン達に声を掛ける。
「ドラカンさーん、ニックさーん、朝飯っすー」
ドラカン、ハチム、ニック、マメダが、
アルファに了解の意味で、頭の上で手を振る。
子供達と犬を連れてアルファは、先にダンジョン跡に入った。
「ご飯だってさー、行くぞおチビ達」
入り口の詰め所では、リリーがオーラスを起していた。
「オーラスさん、おはようさんっす」
ベッドで上半身を起したオーラスが、
目をこすりながらあくび混じりに答える。
「ふぁ・・・んぁぁ・・・おはようアルファ」
リリーが、魔石入りのビンを、アルファに渡しながら言った。
「もう、やーねー。
オーラスおじさんったら行儀が悪い」
「ん?昨日遅くまで番してたんじゃないんすか?
オーラスさんは」
「んん・・・俺が最後だったな・・・寝たの」
「へへ、ご苦労様っす」
「今にアルファにも、番を頼むからいいさ」
「了解っす」
寝ぼけオーラスを置いて、リリーとアルファ達は広間に向かった。
広間のテーブルの上に、食事の支度が整っていた。
昨日のスープを温め直したものと、
ふかした芋、塩漬けの野菜、果物。
ダンザは既に席に付いていた。
アルファは、当然のようにダンザの隣、小上がりに陣取った。
「おはよう、ダンザ」
「おはようだな、アルファ、
朝からチビ達に襲われたそうだな」
「そうさ、お前さんは寝てたな・・・散々な朝だったよ。
俺の部屋に扉付けてくんない?」
「扉かー。
二部屋分の大きな扉で、中は繋がってていいなら、
他所の扉持ってくればすぐ出来るだな」
「どこから持って来ればいい?」
「飯の後、一緒に奥に取りに行くだな」
外のドラカン達が揃うのを待ち、
トンバーさんの仕切りで朝食が始まった。
「今日はアルファに土と丸太を運んで貰うよ。
オーラスとレンダとカブールで、
土を取るトコに案内してやってな。
その間に、ダンザとマメダとドラカンで、丸太用意しとくんだよ。
アルファは土運び終わったら、
ダンザ達と合流して丸太運んで頂戴」
みな食べながら、役割を振られた面々が返事をする。
後は、各々今日やりたい事や、手伝って欲しい事などの相談だ。
俺とダンザで、朝飯後にちゃちゃっと扉を運ぶ算段も入れた。
朝の会話の感じで、
なんとなく集落メンバーの役割が見えてきた。
レンダさんと旦那さんカブールさんは、陶芸が出来るそうだ。
ダンザマメダが、木工担当らしい。
ニックさんと奥さんのサニーさんは、
なんでも手伝うが、なんとなく狩り担当っぽい。
ニックさんが弓師だからかな。
オーラスさんは、炭作り担当っぽいな。
魔法で火力を上げるんだろうか?
俺とダンザは、朝飯を早めに切り上げて、
扉運びに取り掛かった。
ダンザが、先を歩きながら言う。
「アルファの部屋は小部屋だから、
一階の奥の小部屋から持って来ればいいだな」
「あれで小部屋か・・・結構広いけど」
「ダンジョンの部屋は結構広いだな。
さっきの飯食った広間が一番でかくて、
一番小さいのがアルファの部屋や、入り口の詰め所だな。
5段階くらいの差があるだーな」
「ふーん、大体同じ大きさなんだ。
規格があるみたいな感じ?」
「規格があるかどうかは判らないだが、
大体同じ大きさだーな」
そうこう言ってる間に、目的の扉に付いた。
「この扉だーな。扉の木枠ごと外して、
アルファの部屋の、入り口にハメちゃえばいいだな」
ダンザが、レンガにはまっている木枠ごと、扉を外し始めた。
ダンザは、仕事が速い・・・二分程度で外しちまった・・・。
俺は、木枠ごと扉をアイテム収納した。
「後は、アルファの部屋の入り口に出せばいいだな。
固定するのは、晩にでもやってやるだな」
「了解、ありがと。
今持って行っちゃえばいいかな?」
「そうだな」
俺達は、奥からの帰り道に、
俺の部屋の前によって、木枠ごと扉を出した。
部屋の入り口と木枠は、ホボピッタリの大きさだった。
ひと仕事終えて、広間に向かう。
「やっぱ規格があるのかな?」
「どうだかな?このダンジョンの規格かも?
他所のダンジョンも同じかはわからないだな」
「さて、次は土運びと行くか・・・」
「俺は丸太の準備だな・・・」
「トンバーさんは、人使いが荒いんすか?」
「そうでもないと思うだが、まぁお前の収納量を見て、
やりたかった力仕事を片付けたいんだな、たぶん」
「まぁ、力使う訳じゃないから、いいすけどね」
ダンザは、口をへの字に曲げて言った。
「俺は力仕事で疲れるだな」
広間に戻ると、土組みも丸太組みも居なかった。
外の広場で俺達を待ってるらしい。
リリーは、キッチンで朝の片付けをしていた。
行って来ますと声を掛けると、ニコリとして、
行ってらっしゃい、気を付けてねと言われた。
うひひ・・・気を付けて行って来ます。
新婚夫婦みたいな会話だなw
よーし、荷運びがんばっちゃうぞ、俺。
外に出ると、オーラスさん達が左手に、ドラカンさん達は右手に居た。
「アルファ、こっちだ」
オーラスさんに呼ばれて俺は左手に、ダンザは右手に向かう。
「じゃ、後でだなアルファ」
「あい、また後で」
俺が、オーラスさんの元に付くと、
犬を連れたレンダさんとカブールさんが、ちょっと先に居るのが見えた。
「済みません、おまたせしたっす」
「いやいや、準備はいいかね?」
オーラスさんが歩き出したので、俺は後ろを付いていく。
「準備ったって、俺はアイテム収納するだけだし」
オーラスさんは、手にした杖を上下に振りながら言う。
「ははは、まぁそうなんだが、
念のため、杖くらい持ったらどうかね?」
「あ、そうっすね、ははは」
俺は、アイテム収納から、短い方の杖を出した。
「ほう、良さそうな杖だね、鑑定してもいいかな?」
「あい、どうぞどうぞ」
俺は、オーラスさんに杖を差し出した。
「ふーむ、なかなかに良い杖だ」
ウインドウ無しで鑑定したようだ。
「これは、鑑定して昨日買ったものかね?」
「はい、俺の土属性と相性が良くて、
見た中では良い性能だったっす」
「良い鑑定眼を持ってるのは良い事だ。
いくらだったね?」
「えーと、二本で小銀貨二枚だったかな?」
「ほう、もう一本は?」
俺はもう一本の長いほうも出し、オーラスさんに差し出した。
「これっす、こっちは聖属性と相性がいいんす、
性能が一番良かったもんで、買っちゃいました」
「なるほど、この杖の方が性能が高いな。
二本で小銀貨二枚なら良い買い物をしたよ」
「はは、ホントはもうちょっと高かったけど、
シュンツ君が値切ってくれたっす」
オーラスさんは、嬉しそうに笑った。
「そうか、シュンツに値切って貰ったか」
そうこうしてるうちに、俺とオーラスさんは、
レンダさんとカブールさんに追いついた。
「お待たせしましたっす」
「いいよ、今日は天気もいいし、荷運び日和だ」
オーラスさんからPT招待が来た、俺は了承した。
脳内でオーラスさんの声がする。
「さて、揃った事だし向かうとするか」
「あいっす」
カブールさんが、話しかけてくる。
「今朝は悪かったねぇ、子供らが朝から言う事聞かなくてさ」
「へへへ、まぁ子供らに人気があるのは嬉しい事っす」
レンダさんが、笑いながら言う。
「しばらくは、アルファに迷惑掛けるけど、ごめんねぇ、
あの子らは、アルファが来て嬉しいんさ」
オーラスさんが、笑いながら言う。
「子供らだけじゃない、俺も嬉しいさ、アルファ」
「へへへ、そういって頂けると有難いっす」
「なんせ荷運びから開放されるからな」
三人は、ほんとうに嬉しそうに笑った。
「まったく・・・まぁ力使う訳じゃないから荷運びくらい、
いくらでもするっすけどね。
ところで土のあるところは、遠いんすか?
それこそ、何の準備もして来なかったっすけど」
カブールが答える。
「そうだな、ちょっと下るんだが、ドラカン山の裏手になる。
片道三十分と言った所かな?
いや、荷車も要らなきゃ、帰りも手ぶらか・・・
往復一時間掛からん、かも知れん」
レンダが、嬉しそうに言う。
「荷車を引いて、土を積んで、帰りは重い荷車を運ぶ・・・
アルファ、ほんとに助かるよ」
「確かに重労働っすね、お役に立てて良かったっすよ。
土積んで、運ぶ先は、ダンジョン跡の中っすか?」
カブールが言う。
「いや、ドラカン山の横、もう過ぎちまったが広場のすぐ近く、
今来た道を左に曲がったトコに、焼き物の釜が作ってある。
そこに作業場と物置があるんだ」
「ドラカン山って、ダンジョン跡のある後ろの山っすよね?」
「ああ、ドラカンが潰したダンジョンがあるから、
なんとなくそう呼んでるんだ」
しばらく歩いていると、オーラスさんが、何か思い出したように言う。
「そういえばアルファ、お前さん土魔法が使えるんだったな」
「あい」
「あれは出来るか?『魔力探知』」
「あ、出来るっす。探知範囲20メートル程度、
魔力消費は30分ほどでMP6っす」
「そうか、土魔法と言えば探知だ。
地面や土壁に接して居る物なら探知できるはずだ。
しかし、20メートルとは・・・アルファ、
お前の探知は、低レベルなのに広いな」
「そうなんすか?
レベルが上がったり、修練すれば広がるっすか?」
「ああ、レベルと練度で、
精度も広さも、効果時間も延びるはずだ」
「そうなんすか、でもなぁ・・・
昨日のマメダったら凄かったからなぁ・・・」
「ん?昨日のマメダ?」
「いや、町からの帰り、湖ちょっと前の小さな草原にウサギが居たんすよ。
それを150メートルくらい先からマメダが察知してたっすよ」
「ああ、そういう事か。
まぁタヌキ族の鼻や耳の方が、動物の察知は上だな。
特にマメダは気配察知が得意だが、私達だって100mくらいなら判る。
でも、ダンジョンには、動物以外の察知しにくい魔物も居るぞ?
例えば植物系とかな」
「ふむ、動かない、音出さないでじっと待ってるヤツが居るすか」
「そういう場合、20メートルの魔力探知は有効だ。
それに、扉の向こうの事だって正確に判る。
地面や壁に接していればだが」
「なるほど、土魔法は攻撃向きじゃないかと思ってたすけど、
PTでのダンジョン戦闘なら案外役に立つんすね」
「それだけじゃないぞ、アルファ、今魔力探知使ってみろ」
「今すか?・・・あい、使いました」
「どうだ?
何か変なものはあるか?」
「どうと言われましても・・・特に変な感じは無いっす」
「まぁいい、手当たり次第に変な感じがしたら鑑定して見ろ、
何か魔力のあるものが見つかるかも知れん、
お宝探しって事さ」
「お宝が、ここらには落ちてるっすか?」
「まぁ無いなw」
「なんすか、じゃ意味無いじゃないっすか」
「でもゼロじゃないぞ、
もしかしたら、薬草や毒消し草ぐらい、見つかるかもしれん」
「薬草や毒消し草には魔力があるっすか?」
「当たり前だ、薬草や毒消し草になる種類の草はあるが、
魔力が無い草などただの草だ。
魔力無しで回復や毒消しが出来るなら、
畑を作って栽培するさ」
「なるほど、そりゃそうか・・・
魔力を貯めた特定種の草が、薬草や毒消し草になる訳か・・・。
でも、そこらには、ほぼ生えてないんすよね?魔力を貯めた草なんて。
薬草や毒消し草は貴重なんすか?
どうやって手に入れるんすか?
あれっすよね・・・あんまり回復役の僧侶は、
冒険者とPT組んでくれないんすよね。
冒険者はどうやって回復してるっすか、
ダンジョンにどうやって潜ってるっすか」
「ははは、一気に聞かれてもな、
僧侶が少ないのは事実だ。
そこらに薬草が生えてないのもそうだ。
でも、ダンジョンに行けば、魔物からドロップする」
「あ、なるほど、薬草の使用量より、
ドロップが上回ればやっていけるんすね」
「まぁそういう事だ、
だから薬草やポーションは結構高値で、貴重ではある」
そんな事を話しながら、土取り場に着いた。
山の中腹、崖っぽい所、片道20分くらいだ。
道中魔力探知で、なんか無いか探したが、
毒草が一つ見つかっただけだ・・・いらんわ。
カブールさんの指示する土を、さくっと2tアイテム収納し、
来た道を戻り、ドラカン山脇にある、陶芸小屋の倉庫に運んだ。
結局、往復一時間も掛からない。
倉庫には、まだ土を収納出来そうだし、
一人でもう一往復しようかと言ったが、
一人では危険があるからダメだそうで、四人でもう一往復した。
まだ朝と言える時刻だった。
さらっと、斜め読みでも、読んで貰って有り難いっす。
いいねやら、感想やら、ブックマークやら、レビューやら、
星5やらw頂きたいっす。
反応無いと、便所の落書きだものねw
なんか良いもん、落ちてないかいね?




