第十話。集落にやっと到着~タヌキとチビッコ
草原を抜け、森の中を五分も歩くと、湖が見えた。
「湖畔まで行けば、右に集落が見えるわ」
リリーが言う。
「美しい湖だ・・・。
ダンザは漁師だし、売り荷に燻製の魚があったっすね。
山奥に集落を作った理由はこれっすか?」
リリーは下を向き、ドラカン達は、ニヤニヤしていた。
「まぁもうすぐ集落だ。
まだまだ日は落ちんだが、先を急ごう」
湖畔に着くと、正面に山神様の大山、
右の山裾に畑らしきものが見えた。
左右を山に挟まれた、大きな美しい湖だ、
周囲を歩けば2時間近く掛かるかも知れない。
一行は、右に折れ湖畔を進む。
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タヌキは、案外珍しい動物である。
似た生態の動物は世界中に居るが、
タヌキは、ロシアから極東にしか居ない。
タヌキは、森の湖畔、湿地、水辺を好む。
エビカニ、魚、両生類など、水生生物を捕食する為である。
雑食性、夜行性、群れを成さないが、
子育て中はペアを組む。
縄張りは持たず、冬眠はしない。
木登りも穴掘りも、出来なくはないが、得意ではない。
巣穴はあまり作らない、他の動物の古巣に住み、
時には他の動物が居る広い巣穴に同居したりもする。
『同じ穴の狢』と言う言葉があるほどである。
元は樹上生活していた同一の祖先、
リスのような?もの、が地上に下り、
犬、猫、タヌキなどに分かれた、とされている。
元々の祖先と、狼や犬との中間的存在と考えられているのだ。
群れない、追跡型でない、雑食、
この辺りが、犬と違うのであった。
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なんとなく釈然としないが、まぁいい。
畑まで後ちょっとだ。
湖畔から山まで大した距離は無いが、
山裾に段々畑を作ってるんだな。
畑を囲むように胸ほどの高さの柵がある。
小道のところに柵の切れ目、門か?
集落・・・家が無いな・・・畑の中央の道・・・、
農道を登った先、山の中に居住区があるのか。
糞!
まだ登るのか・・・。
湖畔から右に折れ、門らしき柵の切れ目の横木をどかし、
畑の中央を分断する農道を登る。
段々畑は、村や町の畑と比べると小さかった。
家庭菜園レベルと言って良い。
テニスコート程度の畑が、農道の両脇に四段あるだけである。
山の森の中に道は続いていた。
「ここから先、山神様の山が見え難くなるわ、
お祈りしていきましょう」
リリーが言う。
全員、山神様の山に向かって一礼し、手を組んで祈った。
山の中、森の道の先で声が聞こえる。
「おー、ドラカン戻ったかー」
ドラカンが、道の先に向いて答える。
「今戻っただー」
山の中から、幾人もの騒がしい声が聞こえる。
「さ、行こうアルファ。
この先だー」
俺達は、畑から山、森の中の小道を登った。
小道は、腕ほどの丸太を置いた階段の山道。
半分は階段にはなっていないな、荷車を通す為だろう。
しかし、騒がしいな、子供の声か?
俺は、二分ほど森の中の小道を登る。
テニスコート四面分程の広場が見えた、到着か?
「ドラカンおじさん、おかえりー」
「おかえりー」「おかえりー」「お土産は?」
「何か買って来てくれた?」「何かあった?」
「あれ、誰ー?」「荷車はー?」「お土産はー?」
広場の端で子供達が、口々に言う。
ドラカン達が、広場に入りながら口々に言う。
「ただいまだー」「
ただいまー、いい子にしてた?」
「この兄ちゃんは新入りよ」
「お土産は荷車に載ってるだーな」
子供達が、やかましい・・・。
これが集落か、そりゃそうか、子供も居るわな。
一杯居るな・・・。
幼稚園から小学校高学年くらいのチビッコが、10人位は居る。
家は・・・建物はまだ見えない、この先か?
ニヤニヤしながらドラカンが言う。
「アルファ、この先だ。あの洞窟、あの中だ」
広場の先、崖にポッカリ穴が開いている。
「?あれっすか?
洞窟の中に居住区作ったんすか?」
ドラカンは、子供に言うでも、アルファに言うでも無く言った。
「まぁ、ホレ行くだ。
もう中に入るだー」
広場の奥、洞窟の前には、
赤ん坊を抱き、犬を連れた二人の中年男女が、
広場の子供達を見守っていた。
チビッコ達は、俺が珍しいらしく、
俺に駆け寄り纏わり付く子、
ドラカン達の影に隠れ俺をうかがう子、
洞窟の中に逃げる子。
嵐に巻き込まれたようだ、
とにかく騒がしく、
俺は洞窟の前に居る二人に、挨拶さえ出来ない。
アルファは、子供に手を引かれ洞窟の中に入る。
ドラカン達も入り口に居た二人も、
アルファと子供達に続いて洞窟に入った。
洞窟は、床も壁も天井も土、自然の洞窟に見えた。
入り口も、幅も、天井の高さも5メートル弱といった所か。
中に15メートルも入ると、日の光が届かなくなってくる。
暗がりになっている奥の壁は、レンガのように見えた。
「兄ちゃんこっちー」
子供達が騒ぐ。
「この中だよー」「明かり付けてー」
誰かが、どこかの明かりを付けた。
電球より、少し白色っぽい光だ。
奥の壁は、黄色っぽい、やはり土色のレンガだ。
レンガの壁に、両開きの木製の扉が開いていた。
扉の先の通路は、自然洞窟と違って、
左右の両壁、床も天井も黄土色のレンガだ。
土の洞窟より、高さや幅が少し狭くなっている?
俺の目には、昔の地下鉄の通路を思わせるものであった。
その通路を10メートルも行くと、
また両開きの木の扉が開いていた。
扉の中は、中学、高校の教室より、
すこし広いくらいのレンガの部屋だった。
壁に電球の様なものがある。
正面の壁際に、
毛布が置いてあるベットらしきものが4つ、
右側には、四人掛けのテーブルと椅子が四つ見えた。
テーブル上の、小さなガラスビンにひもを付けた物を、
チビッコ達がおのおの手に取って言う。
「ライト」「ライト」・・・。
手にしたビンが光った。
俺は、チビッコが持つ、光る物を鑑定してみた。
魔石だ、透明なガラス瓶に入れた魔石。
ライトの魔法を掛けて、魔石の魔力で光らせ続けているのか。
ドラカンも、テーブルからビンを手に取り、誰にとも無く言う。
「外にはもう誰も出てないだか?」
赤ん坊を抱いた中年男性が答える。
「ああ、お前達が最後だ。帰りを待ってる間、
子供達を外で遊ばせて居ただけだ」
ドラカンがダンザに言う。
「じゃ、扉を閉めて来てくれるだか?」
「ん、閉めてくるだな」
「ここも最後に閉めて来てくれだー」
レンガの部屋には、横に口が空いた木箱、
犬小屋らしきものが5つあった。
ここは入り口を守る詰め所のような部屋か?
マメダが、アルファの先に回り言う。
「こっちよ、左の道」
部屋の左壁に通路があった。
数人のチビッコが、わーわーと騒ぎながら、
先に進んでいるので左の通路は明るい。
チビッコに手を引かれ、俺は左の通路に入った。
10メートルほどの通路の先に、広間が見える。
広い・・・小さな体育館くらいの広さだろうか?
さっきの部屋、教室の四倍はありそうだ。
広いので天井が低く感じるが、
さっきの部屋や通路と同じ高さだな。
ビルの地下駐車場、
地下鉄の駅の広い通路、と言った感じを受ける。
広間には、10人掛けくらいの長いテーブルと椅子、
膝ほどの高さの広いテーブル?が見えた。
後ろから広間に入って来たドラカンが、アルファに言う。
「ここの左に通路があるだー。
その先が倉庫だから、そっちで荷車と積荷を出してくれるだか」
「はい、あそこの先っすね」
「倉庫こっちー」「こっちだよー」
「荷車どこー」「新入りー?なーに?」
明かりを持った子供達に、手を引かれ尻を押されながら、
アルファは倉庫に向かう。
騒ぐ子供達に興奮したのか、
アルファの周りに数匹の犬まで集ってきた。
集落・・・チビッコどもめ、やかましいわ。
タヌキ顔で可愛いじゃねーか、
そうでもない子も居るが・・・まぁいい。
判った判った、お土産ね。
倉庫に荷車出しますよ・・・。
お、倉庫も入り口の教室よりもでかいっぽいな。
さっきの大部屋よりは、小さいか。
・・・だから、出すって、先に進ませて。
犬まで集りやがって・・・えーい、まとわり付くな。
邪魔だ!
邪魔で先に進みにくい!!
これじゃ、荷車出せないじゃないか、邪魔だ、邪魔!
荷車出すから、そこ空けてくれ・・・、どいて!どいてって。
お土産だろぅ、荷車にあるから、
お兄ちゃんは新入りのアルファ!
危ないから!
押さないで!!
いいから、そこ空けて、ホラそこに荷車出すから!
コラおチビ、お前判って邪魔してるだろ!
あははーじゃねーわ。
あーほら、どいて。
犬ども!まとわり付くな!!離れろ!あっちいけ!!
もう・・・邪魔!!
さらっと、斜め読みでも、読んで貰って有り難いっす。
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星5やらw頂きたいっす。
反応無いと、便所の落書きだものねw
着きました。
やっと着きましたw




