~伍幕:運命~
ブレーバリン宮殿陥落の知らせは世界を震わせた。ブレーバリン国王であったエレジーは地下に閉じ込められた形で命を失った。この驚愕の史実に世界では様々な憶測が憶測を呼んでいた。
しかしその新聞をクシャクシャにしてイデオールを怒鳴った老婦人がいた。
ローズマリーである。
「何故2つの螺子を奪わなかった!?」
「1つで充分だからさ」
「1つで充分だと!?」
「僕は父の形見を取り戻したかった。それから母の復讐を果たしたかった。母を殺し村までも破壊した男を殺した。ショイクンって男さ。でも最後に会った男は1つでいい螺子を2つも投げてきた。そして『殺せ』と命じてもきた。そういう何かに惑わされたくなかったから」
「しかしイデオールよ……おい……どこへ行く気だい?」
「お世話になった。これからは普通に生きていく。気が向けばここにまた来ようと思う」
「待て! ひっそりと生きていきたいなら、この地を離れてはならぬぞ!」
イデオールはこうしてローズマリーの元からも去った――
この数日後、ローズマリーは一人の男を森の中で発見する。彼は全身に火傷を負っていた。名をレイジン・ネイマーロと言っていたが、イデオールと同じ螺子を据えた首飾りを持っていた。ひとまず彼を救って、彼の話を伺うことにした。
「スパイであったと?」
「ええ、冷血の紅姫、イザベル・ラベルス様より命を受けましてね。エレジーの側近にまで成り上がり……デュオン公国にコリン・アーミーの機密情報を伝える使命を担っておりました」
「まさかお主、冷血の暴君、ルーティン・ベルセルクか?」
「ふふ……どうやら只者でないらしいな。話して貰おうか。色々と。貴様がイデオールに何か吹き込んでブレーバリンを襲撃したのだな? 私には見えるぞ?」
彼の目が赤く光ると同時に彼の螺子も赤く光り出した。
そして彼女は悟った。ここからは彼の下僕として生きるに他ならないと――