~肆幕:邂逅~
この宮殿を強襲した男、それは他でもないイデオールだった。
辺りは炎に包まれる。敵は復讐か螺子の強奪で此処に来ているのだろう。そう悟っていたルーティンは最後の一室で凛然としていた。
「お前か? ここまでやってくれたのは?」
「お前にそっくりそのままその言葉を返す! 借りは返させてもらうぞ!! 倍返しだっ!!!」
イデオールは剣を大きく振りかざす。その刹那、2本の首飾りが彼の元へ投げこまれた。それに応じて彼は動きを止めた。
「どういうワケか……その螺子には意思があるらしいな。お前という敵を目の前にして何故か私を護ろうとはしなかった。あの国王が持っても何もならない品物であったのだろう」
「何のつもりだ?」
「お前にも分からないのだろう。私は誰よりもこの地を愛し尽くした。その為にいくらでも手を汚してきた。しかしそんな私が真の国王になるに相応しくないとそれが決めたのだ。こうなった以上は未練も何もないさ。私を想うがまま殺せばいい」
「………………」
「どうした? 殺さないのか?」
「僕はただ父の形見を取り戻したかっただけ。1つ戻ればいい。それにアンタのように欲にまみれて殺しを働くなど断じてするものか」
「何?」
イデオールは2つの首飾りのうち1つを投げ返した。
「僕が欲しいのは平和な自由だ。他人の支配などには興味も湧かない」
そしてイデオールはその場を立ち去った――
ルーティンは燃え盛る炎のなかで天井を見上げた。あと少しで彼の野望は果たせそうな気がしたが図らずも無念だったようだ。やがて彼は無数の星空に囲まれた。炎は彼を包みそこに追いやったのだろう――