お星様におやすみを
初投稿なので温かい目で読んで頂ければ。
昔々のお話です。
まだ不思議なことが信じられた頃のこと
町外れの、丘の上のレンガの家に
女の子が住んでいました。
日がな一日元気に遊んで
今日もぐっすり眠れそうです。
雲ひとつない綺麗な夜空
星の一つでも降ってきそう。
ベッドに飛び込み、毛布にくるまり、
おやすみなさいと呟いて、
まぶたをゆったり落とします、、
だけど怖い夢を見て
少女は慌てて飛び起きます。
あれれ、なんだろおかしいな
楽しい1日だったのに。
首をかしげる女の子
気付けば何かが部屋にいます。
少女が見やるとそこにはなんと
手のひらほどの小さな星が。
「あなたは一体だあれ?」
少女は星に問いかけます。
「はじめまして、ボクは人の夢の精
キミのグッスリのためにやってきたんだ」
「それは一体どういうことなの?」
「キミに夢を見せるために来たんだよ」
「じゃああなたのせいで怖い夢を?」
「許しておくれよ、見るまでどんなものになるか分からないのが夢ってものさ。
むしろ急に起きたから
ボクはキミに見られてしまった。
子供に姿を見られたら
招待するのがボクらの掟。
ボクらの世界に招待するよ、興味はないかな?」
「行ってみたい!」
「それは良かった」
じゃあさっそく、星はそう呟いて
少女のおでこにぴったり付きます。
「それじゃあ、ベッドで眠ってよ。
キミが眠れば向こうに行けるよ」
星の言葉にしたがって
再び少女は眠りにつきます。
コンコンとコンコンと
意識を眠りに沈めていって
気付けば見知らぬ風景に。
眼下には雪と見紛う星空が。
「すごーい!夜空にいるみたい!」
「それじゃあまずは門を通るよ」
星は向こうを示します。
遠目に大きく綺麗な門が
二人を待ってそびえます。
それは人が星座を表すような
光る点と光る線
その二つで組み上げられていました。
「門だけで何も無いみたいだけど」
「大丈夫、門から別のところに出るんだ」
少女はちょっぴり怖くなって
「本当に人が来ていいの?」
「子供は特別にセーフなんだ
それでもホイホイ連れてきていいものでは無いんだけどね。姿を見られるのは失敗だから」
ゴココココ、と軋む音をたてながら
門がひとりでに開きます。
さあ行こう、星は少女にそう言って
二人は門をくぐります。
そこは夢の精たちの国でした。
沢山の星達が飛び回っています。
「わあ、お星様達がいっぱい!
ここにはどんなところがあるの?
美味しいお店とかいっぱいあるの?」
「うーんと、基本的に星は食べ物を食べる必要が無いし食べ物も無いから、れすとらん?は無いんだよ。
ボクたち夢の精はキミたち人間に夢を見せるけど、その時僕達も一緒に同じ夢を見てるんだ。
元々この国には何も無いんだよ。だから夢を見せるために下界…人の世界に、現れた時の僅かな時間でこっそり出歩くか、人の夢を通してしかモノを知ることができないんだ。
そして人の夢を通して知ったものを星座みたいに光の点と線で組み上げてまねることで僕たちの世界は発展してきたんだ。
ボクたちは人に夢を見せると同時に夢を見せてもらってるんだよ」
「まずは広場を紹介するよ」
星の後を少女は追って
開けた場所にたどり着きます。
そこには星達が組み上げた
おおぐま座や天秤座を始めとした
さまざまな芸術作品、滑り台やブランコなどの遊具が置かれていました。
「すごーい、きれい!」
少女はぴょんぴょん飛び跳ねます。
遊具でひとしきり遊んだあと
今度はホテルに案内されます。
「星は眠らないしどこでも休めるからホテルはほとんど人のためだけに作られたものだね。あとは完全に店主さんの趣味だよ」
ドアを開け、カランコロンとベルが鳴ります。
「いらっしゃい、おお、人間のお客さんだ!」
店主の星は大はしゃぎ。
店主の星に案内されて二人は部屋に入ります。
星座で編まれたベッド、星の光で光るランプにこれまた少女は大興奮で、ベッドをゴロゴロ転がります。
ホテルで少し休んだ後で
今度は街のはずれに繰り出します。
そこには大きな森があり、
ウサギやタヌキが駆け回ります。
木も草も動物も
全て星座で編まれていました。
少女はウサギを追いかけたり
落ち葉や草を観察して
とても興味深そうです。
そうして楽しい時間を過ごした後で
夢の精は言いました。
最後にとっておきの場所があるんだ。
ついてきて!
少女が星についていくと
小さなトンネルに着きました。
「ここからは目を閉じて。
ボクにつかまっていいから」
星に手を置いて歩き出します。
そうして数分経った頃
もういいよ、と声がします。
そして少女は目を開けて
「……」
ほうっと息を吐き出しました。
居るのは小高い丘の上
星座で編まれたその丘で
少女が瞳に映すのは
絶えず降り注ぐ流れ星
「綺麗…」
「流れ星が消える前に願い事を唱えると叶うって人の言い伝えがあるでしょう?」
ここに来る人間のために夢の精総出で作られたんだ」
「さあ、これでボクの案内は終わりだよ。
そろそろ君を帰さないと」
少女と星は家路について
門へと足を進めます。
今夜がどれほど楽しかったか
普段どんな暮らしをしているか
そんな取り留めのないおしゃべりをしながら。
「…着いちゃったね」
「名残惜しいかい?ボクもだよ」
二人が門の前に立つと
迎え入れるように門が口を開けていきます。
「そういえば、丘では一体何を願ったんだい?」
「あなたとお友達になりたいって」
「最初からボクに直接いえば良いのに」
そう言って星は笑います。
表情は分かりませんが
きっと笑っているのでしょう。
「また会える?」
「ボクは夢の精だからね。
キミが夢を見ている時
ボクらはそばにいるんだよ」
「むー、ちゃんと会ってお話ししたい!」
「クスっ、じゃあボクのことを忘れないで。
ボクと会う夢を見てくれたらちゃんと会えるよ」
「分かったわ、私あなたのこと忘れない」
「ありがとう、ボクもキミを忘れないよ。
それじゃあ、おやすみ 良い夢を」
次の朝
少女は目を覚ましました
気付けば見慣れたベッドの上に。
窓からは優しい陽射しが降り注ぎます。
夢…だったのかな…
きっと夢ではありません。
だってその日から少女が夜空に手を振ると星の一つが瞬いて見えたから。
アニメイトの耳で聴いて魅力が増す作品として投稿したので擬音や読み上げた時のリズムを意識しました。