3.結婚
喜一郎が手始めにやったのは一宮家の財政だった。
喜一郎は家臣に命じて清酒の製造販売を始めさせた。
それと同時に児島湾で真珠の養殖も開始させた。
「殿!!財政がみるみると改善していきますな!」
こいつは春日江 信隆。これまで一宮家の財政を管理していた男だ。よほど金が増えるのが嬉しいのか喜一郎の前だというのに踊り出しそうな雰囲気だ。
「しかし、真珠の養殖がうまくいっておりませぬな。」
「それは当たり前だ。清酒は簡単だからすぐに効果がでるが、真珠は難しいからな。」
喜一郎の言うとおり清酒は濁り酒を加工するだけなのでやり方さえ知っていれば誰にもできる。しかし、真珠の養殖は難しいのだ。そもそもその土地がある程度適していなければできない。だが、成功すれば莫大な収益になるのは分かっていた。だから喜一郎は半ば強引に知らの養殖を始めさせたのだ。
「殿、そういえば佐久実家より縁談の申し込みが来ているのですが。」
「了承したと返事しろ」
「そんなすぐに決めて良いのですか?」
「構わん、どっちにせよせざるを得んだろう。」
「は、では使いを出してきまする。」
佐久実家は一宮家の重臣であり、完全な臣従というより同盟関係であった。そして佐久実家は兵力だけでいえば一宮家で一、二を争うほどだったのである。喜一郎にとって一宮家の勢力拡大をするには取り込むべき家の一つであったのだ。
数日後、喜一郎のもとには佐久実家の長女、春姫が来ていた。
「春でございます。よろしくお願いします。」
「うむ、私が一宮 喜一郎 義武だ。こちらころよろしく頼むぞ。」
「式はいつ行うのですか?」
「式の準備はできておる。来月の二十日には行うつもりだ。佐久実殿にもきてもらうぞ。」
「もちろんでございます。父も嬉しゅうございましょう。」
式は一宮家の居城である児島城で行われた。ほとんどの重臣が集まりその中にはもちろん春姫の父である宇佐美 長弘もいた。
「喜一郎様、この度は我が娘と結婚していただきありがとうございます。」
「私も宇佐美殿を一門に加えられて嬉しく思います。」
「これからも我が宇佐美家は一宮家についていきますぞ。」
「その忠義嬉しいですよ。これからも頼みますよ。」
こうして喜一郎は無事に春姫を妻に迎えることができた。