入隊
「彼らは目的のためならば手段は選ばない。正義だと信じればどんなことでも実行する」
圭一の言葉に桜は息を呑んだ。
「何ですかそれ…。あいつらは一体何者なんですか?」
「それを言うことはできない」
「どうして‐」
「君が」
桜の言葉を遮って、圭一は静かに言った。
「君が俺たちの仲間ではないからだ」
桜はたじろいだ。
「俺たちのいるこの組織も、奴らのことも、その裏にある闇も、何もかもが秘密なんだ。これを知れば後戻りはできない。未だ一般の捜査官である君には教えられない」
「そんなむちゃくちゃな…」
圭一は頷いた。
「ごもっともだ。だがわかってほしい。裏を返せば、君は秘密を知れば、今後この組織を抜けることはできない。その身を危険に晒すことも増えてくるだろう」
圭一は続けた。
「君を異動させようと思ったのは、さっきも言った通り、君の実力を買ったのと、君の安全を鑑みてだ。だがこの指令に強制力は持たせない。入隊するか否かは君の自由意思を尊重する。もし、全てを知る覚悟があるなら、その上で戦う勇気を持てるのなら、この話を受けてほしい」
桜は黙った。
脳裏には、昨夜の出来事がまざまざと蘇っていた。
部屋中に横たわる遺体の数々を。
脅え、震える少女の姿を。
無慈悲に殺された二人の巡査を。
まるでごみをどかすかのように遺体を扱った高見を。
思い出して桜は口を開いた。
「ぜひ入ります。あなたたちの部隊に。私も戦います!」
力のこもった言葉に、圭一は笑って右手を差し伸べた。
「歓迎しますよ。ようこそ特殊管理室へ」
「さて…じゃあいろいろ話すとするか」
桜は頷いた。
「お願いします」
コホンと咳払いをして、圭一は話し始めた。