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対峙

「よく避けたなあ?」

 何もない空中から声がした。


 桜は拳銃を構えなおした。

「…誰!?」


「ふへえへへへへ」

 薄気味悪い笑い声とともに、スーッと一人の男が姿を現した。突然の男の出現に、桜は目を見開いた。


 男はスーツを着ていた。真っ白なシャツに、真っ黒なネクタイを締め、真っ黒な上着を着ていた。真っ黒な手袋をはめた右手には、真っ赤なマシェトが握られていた。

 左の肩に開いた穴からあふれた血が、周囲のシャツを赤黒く染め上げていた。

「影が薄いどころか、影すらねえこの俺の、静かな初撃を躱す奴はそういなかったなあ。躱しても俺に撃ち込んでくる奴なんていなかったなあ」

 ふへへへと男は再び笑った。


「なんで避けれたんだあ? なあ、教えてくれよお」

「…おま、お前、が…」

 震える声を桜は絞り出した。

「んー?」

「お前が、この人たちを殺し、たの…?」

「んー」

 チッチッチッと男は舌を鳴らした。音に合わせて左の人差し指を口元で振る。

「そんなの、これ見りゃあわかると思うんだけどなあ?」

 男は右手のマシェトを振りかざした。


「貴様…っ」

「おいおい今は俺の質問タイムだろお? いいのかなあ? まぁた透明になっちゃってもいいのかなあ? 今度は当てられるかなあ? 次透明になったら、今度はそのベッドの下のガキも殺しちゃいそうだなあ」

 男の姿がぼんやりと揺らめく。

 ベッドの下から少女が「ヒッ」とおびえる声が聞こえた。

「俺は賢いからちゃんと気づいてたんだぜえ? 気づいてたけど優しいから見逃してやってたのになあ。お前が質問に答えねえでこのガキが死んじまうことになったらなあ、お前が殺したってことになるよなあ?」

 桜は拳銃を構えた両手を下げた。

「何が聞きたいの…?」


「さっきも言ったろうがよお。お前の脳は鶏並みかあ?」

 ひゃっひゃっひゃと男は笑う。

「なんで避けれたんだあ?まさか見えてたってんじゃあねえだろお?」

「何となく…気配を感じたような気がした」

「ああ?」

「要は勘よ」


 桜の言葉に、男はしばらくぽかんとしていたが、やがて火が付いたように大笑いし始めた。

「はははは! 初めては勘か! はははは! 科学技術ってもんはよお、やっぱ負けちまうもんなのかねえ?」

 男はおかしくてたまらないといったように、左手で腹を押さえた。桜はその姿をしばらくぼんやり眺めていたが、やがて思い出したように再び拳銃を構えた。


「動くな!」

 桜は笑い続ける男に銃口を向けた。男は未だ笑いながら「あ?」と視線を桜に向けた。

「動いたら撃つ。それと…透明になっても……撃つ」

 男は笑うのをやめた。

 それでも口元にはにやにやと不愉快な笑みを残したまま言った。

「いいやお前は撃たない。撃てない。確実に俺に当てられるかわからねえからなあ、ガキのことが心配だよなあ?」

 男は見透かしたように喋る。心中を言い当てられて、桜は歯を食いしばった。


「はい質問ターイム!」

 突然男が大声を出した。桜はビクッと体を震わせた。

「お前のお、名前はあ?」

「…は?」

「は? じゃねえ。お前の名前は何だって聞いてんだあ」

「…秋倉桜」

「所属はどこだあ?」

 この質問に何の意味があるんだろうと桜は考えた。この男は一体何を考えているんだろうか。


 男の言う通り、桜はむやみに発砲できない。男が激高してマシェトを振り回すかもしれないし、少女の命が危険に晒される。今度も弾を当てられる保証はどこにもない。


「お前たちの目的は何…?」

「今は俺の質問タイムだろお?」

 男は不愉快そうに顔をしかめた。

「ま、いいか」

 頭をがりがりと掻くと、男ははあとため息をついて言った。

「俺は高見っていいまーす。高見透流でーす。透明の透に流れるでトオルでーす。よろしくお願いしまーす」

 ふざけた調子で男は名乗った。それから再び不愉快な笑みを顔に張り付けた。

「ここにはあ。悪い奴らを退治しに来ましたあ」

「悪い奴ら…?」

「この家の人たちはあ、俺たちの邪魔をする悪い奴らでしたあ。今日は悪だくみの会合があったのでえ、一網打尽で殺しに来ましたあ」


 キャハっとポーズを作って高見は笑った。

「何を言って…」

「さてさて、ここで問題でーす。どうして俺はこんなにべらべらと喋ったでしょーかあ?」

 高みの目が不気味に光った。

 桜は拳銃を握った右手に力を込めた。ごくりとつばを飲み込む。

「私を…生かして帰す気がない、から…」

「ピンポンピンポン大正解ー!」

 高見の姿がふっとかき消えた。

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