ふくろうのふう君
ふくろうのふう君は真っ白です。
「あぁ、ぼくはなんで真っ白なんだろう。
ほかのみんなには色があるのに…」
そして、
「ふぅ。
ふぅ。」
と、ため息をつくのでした。
「そうだ!
ボクも色を探せばいいんだ!」
そこで、ふぅ君はまず、左の羽を
青い、青い、海の色にしました。
「海さん、ちょっと色を借りていくよ!」
右の羽には、すきとおった空の色を。
「借りていくよ!」
体は緑の生い茂った原っぱの色に。
頭は、まっかっかの夕焼けの色です。
そして…
あたまの上には…
お月様を!
「みて みて!
ぼく、きれいになったでしょう?」
ふう君は、えっへんと胸をはります。
ところがある日、さかな君がやってきました。
「ボクの海を返しておくれ。
海に色がないのは、おかしいよ。」
さかな君は、海の色を持っていってしまいました。
片方の色をなくしてしまったふう君は、
「あぁ、どうすればよいのだろう…
ふぅ。ふぅ。」
と、また、ため息をつきます。
「私たちの空を返してちょうだい!」
今度は小鳥たちがやってきました。
「空がないと、私たちは飛べないじゃないの。」
ぱたぱたと、小鳥たちは空を持っていってしまいました。
「めぇ。めぇ。」
次にふう君のもとにやってきたのはヤギさんです。
ヤギさんは何も言わずに、ふう君の体の原っぱを、
「むしゃ、むしゃ、むしゃ…」
と、食べてしまいました。
「ふう君。私の夕焼けを返してもらおうか。
夕焼けがないと夜がこないのだよ。」
今度は太陽さんです!
「みんなぼくの色をとっていっちゃう!」
ふう君に残されたのは、お月様だけになってしまいました。
やがて夕日も山の奥にしずみ、月のない、暗い森の夜がやってきました。
「ふぅ。ふぅ。」
と、ふう君のため息しか聞こえません。
そんなため息を聞いて、ふくろうの仲間たちが集まってきました。
「ふう君。
どうしたんだい?」
こげ茶色のふくろうが心配そうにたずねます。
「みんな、聞いておくれ。
なんでぼくは色がないんだろう。
みんなには色があるのに、ボクは真っ白だ。
がんばって色を探してきても、すぐに取りかえされて、また真っ白だ。
ぼくはみんなみたいに色が欲しいだけなのに…」
それを聞いて仲間たちは驚きました。
「ふう君。
ぼくたちは色を探したりしないよ。
自然にこの色になったんだ。
これがぼくの色なんだよ。」
てんてんの模様のふくろうが言いました。
「そうよ。そうよ。
それに、ふう君には白という色があるじゃないの。
とってもすてきだわ!」
灰色と赤茶色のまざったふくろうに言われ、ふう君はうれしくなりました。
「そうか!
ぼくは真っ白という色をもっていたんだ!」
ふくろうのふう君は、もうため息をつきません。
いつもの木の枝に、仲間と一緒にすわりました。
「おっと、忘れていたよ。」
ふう君は頭をぶんぶんとふって、ぽーんとお月様を夜空に返してあげました。
お月様に照らされたふう君は、
銀色に輝いていました。
ふう君はまだ、
自分の色に気がついていません。
自分の色をみつけられない君へ。
私は「自分らしさ」というものが、「自分だけが知っているものではない」と思っています。
「俺らしく生きよう!」「私らしくない…」
それぞれの人生の中で、誰でも一度は心に思う言葉です。そしてこれからも、自分への励ましであったり、やる気であったり、この言葉を使うかもしれません。
では「自分らしい」とはどんな貴方でしょう。
「君らしいな。」「貴方らしいわね。」と、よく言いますが、それには共感できる方もいれば、「そんな事ないよ。」と思われる方もいらっしゃるかも知れません。
しかしそれはあくまで「自分で思う自分らしさ」と「周りが感じた貴方らしさ」の違いだと思います。そして「周りが感じた貴方らしさ」もまた、貴方なのかもしれません。
ふう君は自分の色に気がつかず、他のものの色を真似しました。それを自分の色にしてしまえれば、それは「ふう君の色」になっていたのでしょう。しかし、ふう君は結局、ただ真似をしただけでした。
ふう君が周りから色を借りてきて、えっへんと胸をはった画を想像してみてください。
貴方は「ふくろうらしくない色だ」と思いませんか?
みんなそれぞれ、それぞれの色を持っています。それは生まれた時から持っている色ではありません。学んだり、体験したり、失敗したり、挑戦したり、沢山のことを身につけながら自然とできた色だと思います。もちろん、きれいな色ばかりとは限りません。
しかし私は、きれいじゃない色の中にも、一瞬でもきれいに輝くことができると信じています。
ふう君は自分の色に自信をもちました。そして自らお月様を手放します。
その「心」が銀色にひかり輝いたのではないのでしょうか。