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4周目 前日の夜

 日が経ち盗賊村壊滅のイベントが近付いてきた。

 ちなみにイベント発生は今日の夜で明日の朝くらいに出発する予定だ。


「盗賊共が攻め込んできたぞーー!!!!!」


 ヤグラの上で鳴らされた鐘の音で飛び起きる。

 秘伝の書は既に使ってあるので余裕だ。


「きゃー!!!!!」

「盗賊がきたぞー!!!!逃げろー!!!!」


 表からはそんな声が聞こえてくる。

 そんな時に俺の部屋の扉がノックされる。


「旅人さん!何とかしてくれ!」


 村長の爺さんが俺の部屋を訪ねてきたのだ。


「分かったよ爺さん」


 答えて俺は外に出る。


「何とかこの村を守ってくれルートさん!」

「任せておけ」


 ちなみにここでいくら虚しからと言って盗賊を見過ごせば俺も死ぬことになる。

 ここは我慢して盗賊を全滅させなくてはならない。

 草原に出ると俺は魔法を使う。


「燃えたぎる炎よ。全てを燃やし尽くせ!インフェルノォ!!!!!」


 ステータスを確認する。

 魔力の数値が僅かに減った。

 それと同時に発動する魔法インフェルノ。


 ドゴォォォォォォ!!!!!!!!

 吹き上がる炎。

 遥か先の草原が燃え上がる。


「うぎゃぁぁぁあぁ!!!!!!」

「やめてくれぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」


 盗賊の悲鳴がここまで響いてくる。

 圧倒だ。


「す、すごいです………インフェルノって炎属性最強の魔法ですよね?」


 隣でフィアが呟いた。

 それに頷く。


「そうだな」

「インフェルノなんて魔法何処で習得したんですか?教えてください!」


 盗品の秘伝の書で覚えたなんて言い難いな。


「秘密で頼むよ」

「えー??!!!!教えてくださいよーーー」


 ポカポカと俺を軽く叩いてくるがあまり言いたくない気持ちは変わらない。


「ルートさん………あんた一体………」


 爺さんも驚いているようだった。

 毎回この瞬間は悪い気はしないな。


「俺はただの旅人だよ」


 そう答えてしばらく話した後に村長は去っていった。

 しかしそれからしばらくしたらやはり俺を苦しめるウィンドウがでてきた。

 俺のスキルによるものだ。


『フィアにとってもあなたにとっても最後の日です。友好度が足りています。フィアを宿に誘いますか?【→YES/NO】』


 手が震える。

 俺の指は伸びない。


「どうしたんですか?ルート」


 空中を見てボーッとしている俺を見て不思議そうな顔で聞いてくるフィア。


「いや、何でもない」


 悩んだが俺の指はYESに伸びた。

 仕方ない。仕方ないんだ。


『この選択肢ではこの先フィアが死にます。本当に宜しいですか?【→YES/NO】』


 くそ………叩きつけるようにYESを押す。

 ちなみにここでフィアを誘わない場合俺が問答無用で死ぬことになる。

 どちらにせよ正解のない選択なのだ。



「私夢が出来ちゃいました」

「夢?」

「はい。夢です」


 フィアと会話をする。


「ルートと一緒に冒険者になりたいです」


 小さく恥ずかしそうに笑ってそう口にする彼女。


「だめ………ですか?」

「俺からも頼みたいくらいだな」

「いいんですか?」

「いいに決まってるだろ?」


 ちなみにここで断った場合も死ぬ。

 究極のバッドエンド直行だ。

 理由はすぐに身に染みて分かることになるから考えたくはない。


「良かったです。えへへー。そう言えばルートちゃんとご飯食べてますか?」

「食べてるよ」

「一応今日も沢山作ってきたので食べてくれますか?」

「あぁ。いただこう………ぐっ!」


 来た。

 来たのだがそんなことを考える暇すらなくなる。


「ど、どうしたんですか?!ルート?!」

「ぐっ………がぁぁぁ!!!!」


 胸を抑える。

 苦しい。

 苦しい。


「はわわわ………どうすれば………」


 おろおろするフィア。


「ちょ、ちょっと待っててくださいね!ルート」


 そう言って出ていく彼女が霞む視界の中で見えた。


「お待たせしました!ルート!大丈夫ですか?!」


 帰ってきたフィアが俺の傍に座った。


「………ぐぅぅ!!!!!」


 声が出ないほどに苦しい。


「毒………ですね。分かりました。ならば………」


 そう言って彼女はガチャガチャと何かを鳴らして1つの果実を取り出した。


「毒を取り除きます。飲んでください」

「グァァァア!!!!!」


 より一気に痛みが増すがフィアに押さえつけられる。でも


「ど、どうしよう………」


 痛みのあまりに勝手に体が動く。


「ご、ごめんなさい!失礼します!」


 そう言って彼女は俺の上に乗ると左手で顔を固定させて右手で果実の汁を俺に飲ませる。


「母なる大地を………不浄を清めたまえ………ヒール!」


 それから魔法を使う。


「はぁ………はぁ………」

「おちつきましたか?」

「あぁ。落ち着いた」


 流石だな。この魔法ばかりは毎回そう思い知らされる。


「良かったです」


 そう胸を撫で下ろす彼女。

 序盤は回復魔法を使えないからどうしてもフィアに頼ることになってしまう。


 だからだ。この毒で苦しむのがこの日のこの時間だと決まっているからこの日に横にフィアにいて治療してもらわないと俺が死ぬ。

 してもらわない場合強制バッドエンドだ。

 体を起こすとお礼を口にする。


「ありがとう。フィア」

「いえいえ!私も私の村も助けて貰いましたから!」


 そう言って手を前に突き出してわちゃわちゃと横に振る。


「もし良ければインフェルノを教えてくれませんか?」

「取引ってわけか?俺を助けた」

「い、いえそういう訳ではなく!」

「時間がある時に教えるよ」


 そう口にしておく。

 その日は来ないのだが………。

 結局何も分からなかったな。俺は………


「そうなんですか?楽しみにしておきますね」


 だが俺は絶対に諦めない。何度やり直してもフィアを━━━━救う。



「明日俺は盗賊の村に向かう」

「パーティの人まだ来てませんよ?」

「来ないなら仕方ないよ。俺が1人で向かう」


 最後の夜だ。

 いつもはこんなに呼び止めないが俺はフィアを呼び止めていた。

 話をいっぱいする。

 何か聞き出せるかもしれない。


「なぁフィア、何か好きなことってあるか?」

「うーん。ルートと一緒にいるのは好きですよ」

「………」


 正直今回は適当に接触していたからこんなことを言ってくれるなんて思わなかった。


「こんな私に声をかけてくれたのルートくらいですし」


 恥ずかしそうにそう口にするフィアはとても可愛く映る。

 やめてくれ………。別れが………本当に辛くなる。

 でも………まだ出来ることはあるだろうか?でも………もうなさそうなんだよな。


 今までの日数も無駄にしてきたわけじゃない。

 むしろ今までで1番色んなことを試した。

 でもこの子の生存に繋がりそうなことは何も出来なかった。


「なぁ今日は泊まっていってくれ」

「いいんですか?」

「あぁ。俺は………フィアともう少しいたい」

「嬉しいです」


 その声を聞けるのは今日が最後になりそうだ。

 どうすればいいんだろうか。



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