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2周目 盗賊村

 目が覚めた。

 いつも通りの目覚め。

 無事に今回の周回も始まるみたいだ。

 ちなみに開始位置は最悪だ。

 なぜならば盗賊につかまった状態から始まるからのんびりしていられない。


 だが、いつもの癖で最初にステータス欄を開く。

 俺の名はルート。

 没落した貴族の家を追放された勇者だ。

 まずは現状を軽くだが確認した。

 さてと効率を重視して動かないとなとも思うが。


 盗賊の部屋で目覚めた俺は急いで飛び起きると部屋に一つだけの机に向かった。

 ここの1番上の引き出しだ。

 そこを開けると中に入っていたナイフを手に取るともう一度ベットに潜り込む。

 自分の背中で隠れる部分のシーツをこの時に切っておく。

 今までにも色々パターンを変えてみたがやはりこれが正解らしい。


「ひゅー」


 下手な口笛を吹きながら入ってくる女盗賊。


「寝てるか。まぁあんなゾウすら寝るような薬吸えばさすがに、か」


 俺に近付いてくると腰にあるナイフを手に取った。


「お〜い。起きろよー。兄ちゃん。時間がないんだ。手っ取り早く行きたいね、金になるもん出しな〜♪」

「………」


 黙って起き上がると女の口にシーツを噛ませて首筋にナイフを突き立て殺す。


「安らかに眠れ」

「………嘘で………しょ」


 零れ落ちたナイフを床に落ちる前に空いてる方の手でキャッチしてから死体を寝転がす。

 それを黙って見てからステータスを確認する。

 ここからは少し余裕があるのだ、とは言えほんとに少しだ。

 一瞬で確認を終えるとステータスを閉じる。


「お金カンスト、ステータスカンスト、うん。ばっちり引き継げてはいるな」


 そう言って確認を終えると死体から銃を取り出す。

 魔法の力を利用して強力な遠距離攻撃を行う武器だ。

 ちなみにこいつから盗らなかった場合入手出来るのはかなり先だからここで入手しておくとかなり楽になる、いわゆる壊れ武器だ。


「あいつ遅いな」

「俺確認してくるわ」


 丁度いいタイミングだ。

 他の部屋からそんな声が聞こえた。


「さて」


 窓に向かって銃を1発撃つと急いで音を立てずにタンスに隠れる。


「何の音だ」

「どうした!ジェシー!」


 お決まりのセリフを吐いて慌てた仲間達が部屋に入ってきた。


「くそ!さっきのあのガキだ!」

「窓が割られてるな!くそ!こっから逃げていったに違いない!」

「でもこんなに早く去れるってことは………まさか速度を上げれる魔法を使えるのか!くそ!探せ!」


 ドタバタと音を慣らして出ていく男たち。

 それを聞いてからタンスから出る。


 ここで怖がって窓から出れば見つかり殺される。

 奴らの言う通りの魔法を現段階では使えないからだ。

 引き継げるのはステータスだけで魔法なんかは都度覚えなくてはならない。


「さてと逃げるか」


 ここは盗賊村。

 盗賊が廃村を利用し暮らしている山奥の村だ。

 物騒なことこの上ないし早く抜けたいところだが。



「あった」


 盗賊村は盗賊がたくさん暮らしている。

 ということは盗品が沢山あるということでもある。


「秘伝の書インフェルノ」


 秘伝の書というアイテムがある。

 使うと魔法を覚えられるものだ。

 それがこの村にあるのだ。


 それを1つ拝借する。

 ちなみにこれを取るのはかなりの勇気が必要だ。

 人間としての尊厳を捨てる覚悟が必要だ。

 このアイテムを使用して使えるようになる魔法が強力なため、人間を辞めるだけの見返りはあるが正直毎回いい思いはしない。


「くそ!ガキは見つかったか?!」

「まだだ!何処に行きやがった!」


 村の通りでは盗賊達があちこちで走り回っていたがやがて俺のいる建物に入ってくる男たち。


「くそ!秘伝の書が盗まれている!」

「一体誰が!」

「今はそんなことはいい、とにかくあのガキを探せ!じゃないと俺たちが終わるぞ!まだ近くにいるはずだ!村の出入口に仕掛けられた魔力探知機に何も残っていなかったからな!」


 魔力探知機。魔力の動きを探知するものだ。

 さっき男が言っていた魔法に限らず何らかの魔法を使っているとなると反応するのだが、それが反応していないため俺がまだ村を出ていないことを確信しているのだ。


「隠れてねぇで出てきやがれ!」


 おもむろにタンスを開け始めたりする男達。

 さて見逃してもらえるかどうか。

 ちなみに俺が隠れているのは大量に溜められた牛のフンの中だ。

 俺は何度もこれを取ってきたから分かるがそれ以外で隠れようとすると必ず見つかり戦闘になる。

 現状ステータスだけあっても魔法を使えない俺は最悪死ぬのでこうやってやり過ごすのが正解だ。


「くそ!どこ行きやがった!ガキが!」


 一人の男が俺のいる牛舎までやってきた。


「おい!ガキを見てねぇか!」

「モォ〜」

「ちっ、牛に聞いても仕方ねぇよな!」


 外に出ていった男たち。

 ふっ………流石にクソの中に紛れているとは考えないだろう。

 男達が出ていったのを確認してからフンの中から立ち上がる。

 にしてもあの盗賊達がこの辺適当で助かる。

 俺もこの村以外で人が1人隠れられるだけの量のフンを放置しているところなど殆ど見た覚えがない。


「にしても、他にいい場所ねぇのかな」


 探せばありそうなものだが仕方ないか。


「さて、一先ずは逃げるか」


 幸い秘伝の書は汚れていない。

 立ち上がると服を脱ぎ捨ててフンの中に突っ込んでから全裸になると手洗い場に移動し適当に体を洗う。近くに匂い落としがあるのでそれを拝借して体に染み付いた匂いを水と一緒に流す。


 服をここ以外に放置すると見つかる可能性が上がるからここが安全だ。

 それからこの村から生きて生存する1番のポイントは魔力を使わないことだ。

 魔力を使うと魔力探知に引っかかり戦闘は避けられない。


「いねぇぞ!あのガキ!何だ!盗賊でもやってんのか!」


 盗賊達の叫びを聞きながら俺は物陰から物陰に移りながら移動する。

 出口も見えてこのまま逃げられそうだと思ったところ。


「よぉ。兄ちゃん。それ秘伝の書よのぉ?」

「ちっ………」

「安心せぇ。咎めるつもりは無いからよ。だが腸引きずり出して殺したるで」


 盗賊村の頭に見つかった。

 ちなみにこのイベントは避けられないので避けようとするのは無駄だ。

 ゆっくりと近付いてくる頭の姿だけが視界に映る。


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