孤高の戦い
無限に・・広大な宇宙が見渡す限り続いている・・・
その中で太陽が変わる事無く光り輝き、時折吹き付けてくる太陽風に、武蔵を始めとするイギリス艦艇のMSG(Magnetic Shield Generatar :磁気シールド発生機)がオーロラの様な輝きを放っていた。
その各艦艇のブリッジで、慌ただしく動く人の影が見える。
武蔵のブリッジでは、河野が振り返り立花に報告していた。
「前方7万kmの宙域で複数の艦隊が相対速度を落としつつあります」
「どこの国だ?」
「巡航戦艦ザールランド・・と無数のAARF艦艇が見えます」
「ドイツか・・・」と言いながら立花の脳裏に艦長アルベルツの顔が浮かんだ。
融通はあまり利かないが、頭の切れる男だ。
「ドイツ艦隊は、前方1、後方から2艦隊に挟み込まれています」
本来宇宙の艦隊戦において、不利な戦いは相対速度を大きくし戦闘そのものを避けてしまえばいい。
小惑星帯の艦隊決戦において立花が即座に取った行動である。
しかしそれを行わないという事は・・・
「機雷を散布されたな・・・」なのである。
速度を落とさず機雷原に突入しては躱しれず、大損害を被ってしまう。
宇宙に散布されたステルス性の高い機雷を発見するのは時間がかかり、航路計算が追い付かない。
その為速度を落とし、機雷を避けながらゆっくり進むしかないのだ。
12年前の無国籍艦隊との艦隊決戦時、機雷か敵艦かの違いはあったが、アルフレッドは速度を落とす事無く凄まじい操艦で敵艦隊を突破し、世界にその名を響かせた。
包囲され逃げ道を塞がれ、ここを死に場所と定めたか・・・
「エセックスと回線を開け」と立花。
アッシュ艦長がすぐに現れた。
「前方7万kmの宙域でドイツ艦隊が3倍のAARF艦隊と戦端を開こうとしている。
「こちらも捕捉した。しかしわが艦隊は損耗が激しく、戦える状態にない」
「こちらも使用可能兵装が限られていて、対宙銃座が使用できない状態だ。単艦で戦闘宙域に突入できない」
では・・・見殺しにするのか?・・・と二人は言葉を噛み殺した。
そこにアルフレッドが
「いや我々は仲間を見捨てない!突入する」と力強く言った。
「君は誰だ?」とアッシュ。
「アルフレッド・ビーンという者だ」とアルフレッドは名乗った。
「ビーン少佐?」アッシュは驚いた。
「今は軍から離れている。中佐」
「しかしドイツ艦隊を包囲するAARFの艦隊は、我々(イギリス艦隊)と戦った艦隊の4倍近い戦力がある。撃沈されるぞ!」
「武蔵が機雷原に穴を空けドイツ艦隊を導く」
「アルフレッドと言えど。機雷原突破は無理だ!」と立花。
「武蔵の艦底は恐ろしく頑丈だったな。時間がない!やるしかないんだ!
イギリス艦隊は離脱してくれ、また後で合流しよう」
そして艦長席に振り返り
「マリア!急ぎ認証システムを探すんだ!ここが正念場だ!急げ!念のため宇宙服を着用しろ!」と付け足した。
「はい!」マリアは艦長席から飛び降り駆け出す。
立花が
「BR隊、武蔵甲板上からの迎撃準備をせよ。ザールランドに呼びかけろ、こちら独立艦武蔵代表、元国連宇宙艦隊提督代理立花だと言え!」
「了解!」と河野。
その頃、同様にオーロラの様な輝きを艦橋頭上と艦底に光らせているドイツ戦艦ザールランドブリッジでは・・・
「ほぼ相対速度を同じくするAARF艦隊が右舷後方と左舷後方から接近中です。前方に機雷散布痕変わらず」
ここまでか・・・アルベルツ艦長は
オーロラの輝きを見ながら
「逃げ道は全て塞がれた形だな・・・ならば我らの倍の数を道連れにしてやろうではないか!」
管制官達が不敵に笑いながら
「望む所です!やってやりましょう!」と大声をあげる。
「なぜかツークシュピッツェ山頂で飲んだビールを思い出す」
(ドイツ最高峰の山の山頂に山小屋があり、そこのテラス席でビールが飲める)
「はい、私も飲みました。雲と同じ高さで飲むビールは最高でした!」
「われらドイツ軍人の意地と誇りを奴らに見せつけてやれ!Prost(プロスト:乾杯)!」
「Prost!!」
ヴォルフガング隊(ドイツ国産BR)を出せ・・と言おうとした時、通信が入った。
「艦長、指向性通信が入りました」
「どこからだ?」AARFはこの様な真似はしない。
「独立艦武蔵の立花一佐と名乗ってます」
「独立艦?まぁいい。回線を開け」
スクリーンに映し出された姿は、彼のよく知る人物だった。
「立花一佐?独立艦?なんの事だ?」
「話は後だ!このままではドイツ艦隊は包囲殲滅されてしまう。速度落とすな」
「前方に機雷散布痕がある。落とさざるを得ない」
「これから貴艦隊の左舷後方から追尾しているAARF艦隊を突破し合流する」
「日本艦隊まで全滅してしまうぞ。やめるんだ!」
「我々は日本艦隊ではない。独立艦武蔵だ。信じてくれ」
小惑星帯での艦隊決戦時、的確な指示で国連艦隊を救った立花だ・・・なにか考えがあるのか?
とそこに一縷の希望を見出し
「了解、現行速度を維持し、貴艦をお待ちする」と即断した。
武蔵の前面に、ドイツ艦隊を追尾するAARF艦隊がグングンと近づいてくる。
一時イギリス艦隊から離脱した武蔵が単艦な事に侮られたものか、尻につかれてもドイツ艦隊を追尾する姿勢を変えずAARF艦隊が迎撃態勢を取る。
速度を落とさない艦艇から飛び立ったBRは、母艦から離れ乱戦になってしまうと帰還できなくなる恐れがある。
そのため不慣れなブロディ、ドメニコは、飛来するBRやミサイルを迎撃するため武蔵艦首甲板上で待機していた。
「いいか、くれぐれも武蔵甲板から離れるな、この速度では帰れなくなる」とソフィアがドメニコとブロディに言い、武蔵甲板上から浮き上がっていく。
飛び去るエスポジートに向かい
「了解」とドメニコ。
「解ってるよ」とブロディが応えた。
先に武蔵から離艦し、普段と変わる事無く平然としているパニッシャーの横に並びながら、ソフィアがウェイドに話しかけた。
「武蔵の艦底は頑丈だと言うけれど、大丈夫かしら?」
「南アメリカ艦隊の総攻撃に耐えたんだ、大丈夫だ」
「艦底は耐えられても、この速度で受ける振動や衝撃、爆発のエネルギーによる不規則な回転運動は想像を絶するはずよ」
「アルフレッドがなんとかする」
「そうね・・・少佐なら・・」とソフィアが笑った。
「少佐のお名前を始めて聞いたのが、中学生のときだった・・・
正体不明の国籍不明艦隊が地球に近づいて来ると、当時イタリアでも大騒ぎになったわ。
そして敗色濃厚の戦況を、たった一人の人が救った・・・憧れたわ・・・今思えば軍に入隊した理由もそこだったのかもしれないわね」
ちらりとパニッシャーがエスポジートを見て言った。
「戦場で思い出話しなんてするな。死ぬぞ」
「わかってるわ。でも・・なんかそんな話がしたくなったのよ・・・」
この危機的状況下で、悠然としている皇帝のパニッシャーの姿は、ソフィアに勇気と希望を与えた。
それは速度を落とさず、静かに航行する巨大な武蔵の姿も同様だった。
あの艦の舵を取っているのはビーン少佐なのだと。
なんとかなる・・・そう信じられた。
「オーソン空母を狙え!攻撃開始!」立花が指令を出す。
「おぅ!」
武蔵の副砲が火を噴き、艦尾から艦首まで大穴に貫かれたAARFの航宙母艦が爆発する。
その破壊力に驚いたAARF艦隊が、突入してくる武蔵を包囲しようと散開を始め、BRの大部隊を発艦させる。
「武蔵を頼む」とウェイドがソフィアに言い、パニッシャーがそのBR大部隊に突っ込んでいくと、次々に爆発が発生し、大部隊の統制が崩れる。
「すごい・・・」とドメニコが独り言ちた。
そしてAARF艦隊の中に武蔵が突っ込んでいった。
倍近い大きさの武蔵が、AARF艦艇の間をすり抜け副砲が火を噴き、AARF戦艦が轟沈する。
相対速度を落とさず敵艦隊に突入した武蔵の周りを、敵艦が行き過ぎていく。
敵艦が武蔵めがけて対艦ミサイルを発射する。
それをアルフレッドが奇跡の操艦で躱していく。
BR隊が武蔵に突っ込んでくる。
「来るぞ」
武蔵から距離を取っているエスポジートのソフィアが武蔵甲板上の二人に声をかけ、そのBR隊に突っ込んで行く。
2機を機銃掃射で撃墜させると、ハグアタックを仕掛けてきたBRの両腕をぎりぎりで躱しながら、フライングニーを脇腹に撃ち込む。
あっという間に3機を撃墜すると、続いて現れたBR隊に突っ込んでいく。
別角度からBR隊が突っ込んでくる。
それを甲板上のライジンがガトリング掃射し撃墜した。
ドメニコの正確な射撃に
「なんだ、やるじゃねぇか」とブロディ。
「うるさい!お前が言うな!後ろに回られた!僕が行く。お前はここで武蔵を守れ!」
「わかったよ。死ぬんじゃねぇぞ」
「お前もだ!」
この様な危機的状況になればなるほど、ブロディの中で眠っていた野獣が目を覚ます。
武蔵甲板上にいるブロディのライジンの周りには、補給に戻る必要がない様、大量のマガジンや弾薬が置かれている。
弾数を心配する必要のないブロディは、ライジンが抱え込むようにして持ったガトリング砲を飛来するBRに向け撃ち続ける。
雷撃コースに乗ったBRを撃墜した。
凄惨な笑みを浮かべたブロディが
「へへっ!かかってこいよ!おらぁ!!」と叫び、次々に飛来してくるBRと対艦ミサイルを撃ち落とした。!
武蔵艦首から虚空へ向け光弾が撃ち続けられ、その光弾の先で連鎖的に爆発が発生する。
それを操舵席から見たアルフレッドが、
あいつはやはり・・・あれが天職なのかもしれんな・・・と思いながら必死で舵をきった。
しかし圧倒的物量で攻めかけてくるBRの数機が武蔵甲板にとりついた!
そしてブロディのライジンに襲いかかってくる。
ガトリング掃射で1機を破壊したブロディに、挟み込む様に2機のBRが両手を広げハグアタックを仕掛けてきた!
重いガトリング砲を捨てたライジンが、BSBで滑る様にそれを躱す!
ぶつかり合ったBRの後ろから、超振動波刀を抜いたライジンが勢いよく突っ込み、1機の脇腹を突き刺した。
崩れ落ちるBRの横をもう一機のBRが、機銃掃射をライジンに浴びせてくる。
ガンッ!ガンッ!とライジンの装甲を跳弾する激しい音を聞きながら、
「へっ!」踏み込んだライジンの刀が見事に腰の関節部を一閃し、BRを両断した!
その時!ライジンの後ろから両手を広げた別のBRが突っ込んできた!
ブロディは咄嗟に、ライジンの腰を抱えるように組み付いたAARFBRの左腕の内側に刀を差し込む!
サバ折りの要領で締め上げられたライジンの腰の部分で、超振動波刀とダイヤモンドディスクカッターが火花を散らす!!
力を籠めるAARFBRとライジンが火花を散らしながら拮抗する。
「この野郎!!」ブロディが叫ぶ。
たまたまその近くで生態認証を探していたマリアがそれに気づいた。
「あぁっ!」悲鳴に近い声をあげながら、なにが出来るわけでもなかったが、スーツにケーブルをつなげるとハッチから宇宙に飛び出した!
その様子を操舵席で見つけたアルフレッドが、腰を浮かしながら叫ぶ。
「危ない!」
超振動波刀がダイヤモンドディスクカッターを破壊した!
しかしもう一機のBRがライジンを挟み込む様に抱きついた!
2機のBRに腰を締め上げられ、ライジンの腰から火花が噴き出す!
ブロディの足元を火花が飛び散る!
「のっ野郎!!」
ライジンが腰から両断された!!
一瞬時が止まったかの様に時間が遅く感じる中、ライジンのコクピットからはじき出される様にベイルアウトされたブロディをマリアが追いかける!
安全ケーブルがどんどん伸ばされていき、長さの限界が近づいていく!
「ブロディ!!」悲鳴の様なマリアの声に気づいたブロディがマリアを見た。
「マリア!来るな!」
マリアが必死に
「つかまって!!」と手を伸ばす。
長さの限界がきてピンッとケーブルが張られる瞬間!
不規則に回転するブロディの腰にマリアがしがみつく!
伸ばされたケーブルの反動で、二人はグンッとはじかれる様に引き戻される。
「馬鹿野郎!無茶な事しやがって!」と腰にしがみつくマリアを見ながらブロディが怒った。
目に涙をためたマリアが顔を上げた時、ブロディの顔越しに武蔵艦橋を見る形となった。
その時・・・
武蔵の最上部の艦橋と第二艦橋の左右にある、光学式3次元測距儀のレンズが赤く光った。
火器管制席に座る鷹森の前で、パネルやディスプレイが立ち上がっていき
「顔認証、マリア・ウィンフィールド確認。火器管制システムを立ち上げます」と告げられた。
ライジンを破壊したBR2機が、ハッチへ帰ろうとするブロディとマリアに銃口を向ける。
ブロディが咄嗟にマリアを後ろに庇う。
そのAARFBR2機が穴だらけになりながら吹き飛んだ!
ブロディが目で追った先に、勢いよく自動で敵を探す対宙銃座の一基があった。
武蔵各所に配置された無数の対宙銃座が、虚空へとニュートリノ弾をうち続けると、その先々で凄まじい数の爆発が起きる。
「すげぇ・・・」とブロディがつぶやいた。
その圧倒的火力と命中精度で、もはや武蔵に取り付けるBRも、対艦ミサイルも存在しなかった。
それを確認したソフィアがウェイドに
「武蔵の火器管制が機能している!すごいわ!これなら私達の必要はなさそうね!」と興奮気味に言う。
それをあくまでも冷静に
「俺たちは俺たちの仕事をするだけだ」とウェイドが言う。
「一基々々の対宙銃座の威力と射程距離の長さは、今までの艦の比じゃないわ・・・」と言ったソフィアのエスポジートの視線の先で、敵艦が武蔵に追い抜かれていく。
すると武蔵の速射砲がその敵艦に向けて、ドンッドンッドンッドンッと
副砲の1/10程度の威力のニュートリノ弾を連続で撃ち込んだ!
敵艦の左舷から右舷を一発一発が貫く!武蔵が通り抜けた先で敵艦が大爆発を起こす。
もしかしたら武蔵の最強兵器はこの速射砲かもしれない・・・
もう大丈夫・・・とそれが確信に変わった。
「ドッグパウンドツー帰投する」
エスポジートが武蔵の後甲板に向け降りていった。
機雷原が目の前に迫っていたドイツ艦隊、巡航戦艦ザールランドのブリッジでは、後方のAARF艦隊内で発生している戦闘を、固唾を飲んで見守っていた。
「立花一佐・・・」アルベルツは願うかの様にスクリーン上のそれを見ている。
ドイツ艦隊から見て一番手前のAARF戦艦が大爆発を起こし、その火炎の中から巨大な戦艦が現れた。
艦首を上げ、火炎と破片を艦底で乗り越えてくるかのようだ。
AARF艦隊を突き抜けた武蔵が、ドイツ艦隊に追いついた。
武蔵が逆噴射し、ドイツ艦隊と速度を合わせる。
とそこに通信が入った。
「立花だ。単縦陣を引き武蔵に続け!機雷原に穴を空ける!」
「無茶だ!艦がもたないぞ!」
「四の五の言っている時間は無い!」と言って、艦内に向けマイクのスイッチを入れた。
「総員!衝撃に備えよ!」
ドイツ艦艇が武蔵を先頭に単縦陣を引き、機雷原に突入していく。
機雷はステルス性が高く、武蔵の三点式立体解析技術でも見つけるのが難しく、この速度では発見がギリギリになってしまう。
単縦時の先頭で艦首を上げた武蔵の艦底に機雷が接触し爆発する!
その相対速度と爆発のエネルギーが、武蔵の艦首を持ち上げコースを外させ様とする!
それを強引にアルフレッドが抑え込み操艦する!
連続で武蔵艦底に機雷が接触し爆発を起こす!
爆炎の波を抑え込み、単縦陣を引くドイツ艦艇に被害が出ない様、必死にコースを守ろうとする武蔵の姿に、ドイツ軍人達は等しく感動し
独立艦などと名乗ってはいるが、あの艦はまごう事なき味方だ・・・と確信させた。
衝撃と振動が武蔵艦内を襲う中、ブロディとマリアがよろめきながらブリッジに戻って来た。
全員が何かにしがみつき、嵐のような衝撃とGに耐えている。
操舵席ではアルフレッドが神業の様な速さで、武蔵各所のスラスターを操作している。
それはコンピューター制御の限界を遥かに超えた、人間の能力の素晴らしさを感じさせた。
爆発の衝撃でマリアが飛ばされる!
それを手すりにつかまったブロディが抱きかかえ耐える。
「機雷原を抜けたぞ!」アルフレッドが叫ぶ。
機雷原を抜けた先に、機雷を散布したAARF艦隊がある。
舳先を通常の状態にした武蔵の射線がとれる。
「オーソン!いいぞ!」
「おぅさ!」副砲で待機していたオーソンが応える。
武蔵の副砲が火を噴き、AARF重巡が轟沈する!
回線を開いた全ドイツ艦艇に立花が
「全艦、散開し前面のAARF艦隊を包囲殲滅せよ!」と国連艦隊元提督代理として指示を出す。
それに対し、なんの疑問を持つことなくドイツ艦隊が従い、散開を始める。
迎撃態勢を整えようとするAARF艦隊に武蔵を先頭に、ドイツ艦隊が突っ込んでいく!
武蔵の副砲が火を噴き戦艦を轟沈させ、速射砲がすり抜けざまにAARF艦艇をハチの巣にしていく。
混乱状態になったAARF艦隊を、後方から押し包む様にドイツ艦隊が攻撃を開始する。
一方的な戦いとなったAARF先行艦隊との戦いが終り、相対速度の速い武蔵を始めとするドイツ艦隊がすり抜け去った後には、破壊されつくし壊滅したAARF艦隊が残された。
後方を確認したドイツ艦艇から歓声が上がる。
「やったぞ!」
ザールランドブリッジも例外ではなく、アルベルツを始めとする管制官達が、喜びの雄たけびをあげていた。
「よしっ!!」
そこに立花から通信が入った。
「武蔵は進路変更後イギリス艦隊と合流し、地球へと進路を取る。ドイツ艦隊はいかがするか?」
アルベルツは喜びを隠そうともせず、
「我らの目的地も地球だ!御同道する!」叫ぶように言った。
追尾してくるAARF艦隊を引き離し、戦いが終わり各艦艇に落ち着きが戻る。
そして、皇帝のパニッシャーが武蔵に帰投しようとした時・・・
武蔵の対宙銃座が一斉に、パニッシャーに向け攻撃を開始した!
雨の様に降り注ぐニュートリノ弾をパニッシャーが凄まじいスピードで躱し続ける。
「火器管制を一時停止しろ!!」アルフレッドが叫ぶ。
鷹森が慌てて止めようとするが、操作方法が解らない。
武蔵艦橋の横をすり抜け、パニッシャーが一時対宙銃座の射程圏外に離れる。
何とか火器管制システムを落とした鷹森が
「止めました!」と報告する。
立花が皇帝に向け
「ウェイドすまない。火器管制を落とした。大丈夫だ」
それに対しウェイドが冷静に
「了解、ドッグパウンドワン帰投する」と報告する。
それを操舵席から見ていたアルフレッドが、
「あいつが味方でよかった・・・」と心の底から思って言った。