consensus
「前方、5万kmの宙域で、艦隊戦が繰り広げられています」
武蔵の光学望遠鏡の映像を確認していた河野が立花に報告し、大型スクリーンに投影した。
「あれはイギリスの重巡ハンバーサイドじゃないか?」
「イギリスとAARFの艦隊戦・・・」
苦戦を強いられている友軍のイギリス艦隊を支援する為、射程圏内に近づく必要がある。
と言って対宙銃座が使えない現状で、入り乱れている艦隊戦の真っただ中に突っ込むのは、武蔵といえど自殺行為に等しい。
「現行速度でおよそ30分後、戦闘宙域近辺を武蔵は通過します」
「総員、第一種戦闘配置、アルフレッド達を呼べ」
その頃アルフレッド達は、皆で夕餉の膳を囲んでいた。
すっかりビーン家の家として馴染んだ部屋に、ビーン家とオーソン、ブロディ、マリア、ウェイド、ソフィア、ドメニコと大人数が入った為、少々狭い膳を囲んでいた。
それは、BRパイロット達の精神、身体の健康管理を任されているアリソンが、パイロット全員に声をかけたからだ。
まだ6時だというのに日は落ち、暗くなったセントラルドームの森は、秋も終わり寒さが増していた。
街灯の明かりに照らし出された緑道には、大量の落ち葉が絨毯の様に引きつめられ、部屋の外に出ると乾燥した落葉の匂いに満ちていた。
街灯の明かりに、時折舞う落ち葉を窓から眺めながらの、そんな夕食前だった。
「おい、つめろよ。狭ぇんだから」とドメニコにブロディが言った。
「なんだと!もういっぺん言ってみろ!」気色ばみドメニコが言う。
「やめなさい!あんた達は本当に仲が悪いんだから!」とソフィア。
「すいません・・」とドメニコ。
そんなドメニコにブロディが
「いちいち突っかかってくんなよな」と言った。
きっ、とブロディを睨みつけたドメニコだが、そこは我慢した。
そんな彼らの足元をケイティが走り回り、それをベティが追いかけ笑い声をあげる。
重そうな鍋を抱えてテーブルに運ぶアリソンを見たオーソンが、
「お~俺が運ぶよアリソン」と立ち上がる。
「艦首部分の怪しそうな所は一通り当たってみたんだが、セントラルドームの生態認証の例もある。実際にマリアが行ってみない事には、実際のところ解らないな」とアルフレッド。
「わかりました。明日は艦首部分を重点的に探してみます」とマリア。
とそれぞれがそれぞれの会話を自由にし、ビーン家が寄宿する部屋は和気あいあいとした、雑踏にも似た賑やかな空間になっていた。
そんな空間に沈み込むかの様に、ウェイドが街灯の明かりに浮かび上がった窓の外の落葉を見ている。
それに気が付いたソフィアが、探る様にウェイドを見た。
ソフィアの視線に気づいたウェイドとソフィアの目が合う。
「私はまだ、あなたを本当に信じた訳じゃない・・」とソフィアが言った。
「好きにしろ」と言ったウェイドの横にベティが来て、楽しそうにチョコンと座った。
「ウェイドはなにか嫌いな食べ物ある?」
そんなベティを見下ろしながら
「ないな・・ベティは?」と聞き返した。
「私はニンジン!どうしてあんな物食べるのかしら?不思議だわ」
「ベータカロテンが豊富に含まれてて体にいいのよ」とソフィア。
「残すと怒られるから我慢して食べてるけど、あの匂いと味がどうしても駄目!」
「ベティ、好き嫌いせず食べないと大きくなれないぞ~」と鍋を持ったオーソン。
ブロディの隣に座り、そんな会話を聞いていたペグがブロディに
「ブロディは嫌いな食べ物ないの?」と聞いた。
「俺は・・なんでも食ってきたな・・でないと生きていけなかった・・でもしいて挙げるならチーズが苦手だな」
「なんで?あんな美味しいのに?」
「あの口の中がねっとりする感じが駄目だ」
「それは美味しいチーズを食べた事がないからよ」とソフィア。
粗悪品のチーズしか食べた事のないブロディは
「悪うござんしたね貧乏で」と言った。
ドメニコがブロディになんとか勝るところを見つけたかの様に、笠を着てかかり言った。
「イタリアではベラロディっていう本当に美味しいチーズがある。原材料にこだわっていて、ロディでとれる新鮮なミルクを使った高品質のナチュラルフードだよ。六か月熟成の柔らかいチーズ表面を薄く刃で削り食べるのさ。それを知らないなんて・・・なんと可哀そうな」ニヤリと笑いながら皮肉まじりに言った。
「あ~そうかい」とブロディは相手にしなかったが、嫌味をまだ理解できないベティが
「美味しそう~私も食べてみたい!」と羨まし気に言った。
オーソンが持ってきた鍋から、出来立てのアルザシエンヌというスープをアリソンが各自の皿に取り分けていく。
アルザシエンヌはドイツ国境に近いフランス・アルザスの代表的な料理であるシュークルートと呼ばれる酢漬けのキャベツ、ジャガイモ、ソーセージを煮込んだ料理で、ソーセージの塩味とシュークルートの酸味をジャガイモがまろやかに包みこむスープだ。
「さぁ温かいうちに食べてちょうだい」とアリソンが声をかけた。
スプーンを手に取り、皆が食べ始める。
塩味と酸味が絶妙のバランスのポテトスープに
「うまい・・・」とブロディ
「美味しい・・」とソフィア
皆が手を休める事無く、食べ続けている時、
[総員。第一種戦闘配置。ビーン少佐ブリッジまでおこし下さい]とスピーカーから流れた。
「俺は軍属ではないって言ってるのがまだ解らないのか」と怒った様にアルフレッド。
「もう階級づきのお名前は、通り名に近いものがありますからね」と笑顔でソフィア。
あきらめた様にアルフレッドが
「みんな聞いた通りだ。持ち場に戻り待機しろ」と全員に言った。
「了解です!」とソフィア・ドメニコが言い。
「おぅ!」とオーソン。
「OK」とブロディ。
そしてウェイドは無言で立ち上がった。
後甲板と第二艦橋上のカタパルトを繋げる格納式甲板がせり上がり、セントラルドーム上で連結される。
その甲板上にパニッシャー、エスポジート、そしてライジンの2機を乗せたエレベーターがせり上がる。
「私が先行し、ヒットアンドアウェイ(一撃離脱)でAARFBRの足を止めさせる。
ドメニコとブロディは後方からイギリス艦艇の支援。ウェイドは回りこみ奴らを一掃して」とソフィアが指示を出す。
「了解しました」
「OK」とドメニコとブロディ。
パニッシャーが頷いた。
やはり戦場ではその実力がなによりもものを言う。
パニッシャーを駆る皇帝がそこにいるだけで、なんとも言えぬ安堵感があった。
ソフィアとドメニコは味方となった皇帝の、えも言われぬ安心感に不思議さを感じ、ブロディはその事を少しでも感じてしまう自分自身に怒りを感じていた。
けっ・・・おもしろくもねぇ・・・
カタパルト上のFSSに足を乗せたエスポジートがかがみこみGに備える。
「ドッグパウンドツー(ソフィアのコールサイン)発艦します」ソフィアがブリッジに報告する。
グンッとかかるGを膝で吸収したソフィアのエスポジートが、急加速し武蔵から発艦する。
続いてFSSに向かい歩いていくパニッシャーの後ろ姿を見ながら、ブロディは改めて皇帝と渾名される男の生きざまを、その背に感じていた。
「AARF大型戦艦突っ込んできます!!」
「コーンウォールと激突します!!」
重巡洋艦コーンウォールの左斜め下から大型戦艦が突っ込んだ。
宇宙空間では伝わる筈のない軋み音や衝撃が、雁行する(斜めに並んで進む)戦艦エセックスのブリッジに伝わるかの様だ。
コーンウォールの船体が中央から二つに割れ、艦艇内でいくつかの小爆発が起きる。
かつて見た事のないほどの、大型艦艇同士の凄まじい衝突の迫力でエセックスのブリッジは静まり返った。
真っ二つに割れたコーンウォールの間から、AARFの大型戦艦が青白い妖光を纏い突き抜けてくる。
なんだあれは?・・・
その燐光らしき物はすぐに見えなくなり、無傷のAARF艦艇があらわになった。
その衝撃から立ち直ったエセックス艦長アッシュ中佐が、叫ぶ様に指示を出す。
「面舵20!下げ角15、あいつを躱せ!!」
「敵大型戦艦雷管開きました!ミサイルきます!!」
「この至近距離で?!」
小惑星帯での艦隊決戦時、イギリスの重巡洋艦ドーセット艦長エイトキンは自沈覚悟での攻撃だったが、AARFのそれは一攻撃の選択肢である様に見える。
「発射管開け!応戦する!」
至近距離から双方の戦艦がミサイルを敵艦に撃ち込んだ。
エセックス左舷へ立て続けにミサイルが着弾し爆発する!
エセックスの放ったミサイルも敵艦に着弾し、近い距離で戦艦同士が火球に包まれた。
エセックス艦内に衝撃と爆発音が響き渡る!
「舵がききません!第1プラズマエンジン融解!爆発します!」
「第1プラズマエンジン切り離せ!」
「第1プラズマエンジン切り離します!」
切り離されたエンジン区画が、艦体から遠ざかっていく・・・
区画に取り残された機関士達を想い、アッシュ艦長は歯ぎしりした。
爆発する!アッシュは直視できず目を背けたが、すぐさま敵艦を目で追った。
敵艦の様子は・・・まったくの無傷である。
「ばかな・・・・」アッシュ艦長は小惑星帯での艦隊決戦時、単縦陣を引いたAARF艦隊へのロングレンジのミサイル攻撃がまったく無効にさせられた事を思い出した。
こいつが先頭艦だったのか?・・・
「敵艦、攻撃態勢をとります!ミサイルきます!!」
エセックスはいまだ反撃の態勢を取れず、イギリス宙軍の味方艦艇は数隻残すのみで、その多くが撃沈されていた。
やられる・・・アッシュ艦長の頬を冷たい汗が流れた。
ブリッジにいる乗組員全員が覚悟した。
その時!
そのAARF戦艦の艦首に青白い妖光が吹き飛び巨大な穴が突如として空いた!
AARF戦艦が大爆発を起こす!
「なんだ!?なにがおきた!?」
無秩序な戦場で、味方艦の不自然な轟沈に気が付かないAARFのBR群が、攻撃の手を休める事なくエセックスへ群がる様に攻撃してくる。
先ほどの攻撃で対宙銃座が沈黙してしまっているエセックスへ、至近距離から艦橋への雷撃コースをとって数機突っ込んできた。
生き残りのイギリスのBR、Chrchil SMK.Ⅳ(チャーチルスペースマークフォー)が、必死に迎撃行動に入る。
そのチャーチルにAARFのBRが、まるで抱き着くように突っ込んだ!
マニュピレーターのない右腕の鉤爪を、左腕のダイヤモンドディスクカッターのフックに引っ掛け、サバ折りの要領で火花を散らしチャーチルの腰を締め上げる!
脱出しようともがくチャーチルを、真っ二つにした!
ハグアタック・・・その無残さを、目の当たりにしたブリッジ要員達はうなった。
チャーチルをぬって雷撃コースに乗ったBRがエセックスに突っ込んでくる。
艦橋に直撃する・・・アッシュは身構えた。
そのBR達が銃撃を受け、爆発した!
エセックスの正面を真紅のなにかが高速で飛び抜ける。
「イタリアのエスポジート!友軍だ!」ブリッジに歓喜の歓声がわいた。
「全艦艇に打電!イタリアが援軍に来てくれた!あきらめるなと!」
「了解!」通信士が、その内容を急いで打電する。
生き返ったブリッジ斜め上方から、AARFのBRが急襲してくるのがそのブースター光で分かった。
「弾幕をはれ!近づけさせるな!!」
ダメージでその数を減らした対宙銃座をかいくぐって、BRが突っ込んでくる!
緊張に包まれるブリッジの死角から、突如銃撃がそのBRに降り注ぎ爆発する。
その方向を覗き込んだ航法士が
「日本のライジンもいます!」と喜びを爆発させ言った。
群がるAARFのBRに、ライジンが攻撃している。
アッシュが安堵したのも束の間、AARFのさらなるBR大部隊がエセックスめがけて突っ込んできた。
くっ・・・
その時!いくつもの爆発が連鎖的に発生し、立て続けにAARFのBR達が撃墜されていく。
その様子は圧巻の一言だった。
「凄いな・・・」大部隊が応援に来てくれたのか?・・・と歓喜したアッシュだったが、エセックスの近くを通りすぎたのは、一機の漆黒の機体だけだった。
「パニッシャーか!南アメリカも援軍に来てくれたのか?」アッシュは不思議そうにパニッシャーを目で追ったが、そのあまりの速さに、すぐ見失ってしまった。
恐るべしD小隊・・・噂に聞くD小隊の実力をまざまざと見せつけられ、援軍に来てくれた機体にも関わらず、アッシュの背に冷たい汗が流れた。
AARFの重巡に大穴が空き大爆発を起こす。
事の重大さに気づいたAARF軍が撤退を開始する。
慌てる様に撤退を開始したAARF軍を呆然と見ていたアッシュだったが、すぐに気を取り直して友軍を確認する。
寄り添う様に航行する生き残りのイギリス艦艇は8隻だけだった。
戦闘が終り緊張状態からぬけたイギリス宙軍だったが、
2隻はすでに損傷が激しく爆発寸前だったため、対艦命令が出て、多くの脱出艇が宇宙に射出され続けている。
それを傷だらけの艦艇が、回収してまわっていた。
アッシュは改めて援軍の存在が気にかかった。
エスポジートもライジンもパニッシャーもいたという事は国連軍か?・・・
「援軍に来てくれた艦艇が近づいてきます。あれ?・・一隻だけですね・・」と管制官も意外に思ったのか言った。
後方から近づいてくる艦艇が、残骸と化した重巡ハンバーサイドの横を通りすぎる・・・
ハンバーサイドの2倍以上の大きさがある。
「でかい・・」と驚いたアッシュだったが、マイクを取るとその巨大な戦艦に話しかけた。
「こちらイギリス宙軍、第一艦隊所属、エセックス艦長アッシュ中佐だ。貴艦の所属を明らかにされたし」
すぐに返信があった。がそれは歯切れの悪いものだった。
「こちら・・・所属に関しては、どうかご容赦願いたい・・」その声に聞き覚えのあったアッシュは
立花提督代行?・・・では日本艦艇なのでは?・・・と思ったアッシュだったが
国際ルールを逸脱した艦である為、その名を名乗れないのか?と、当たらずとも遠からじの考えに至り、イギリス艦隊全滅を救ってくれた艦に心から感謝していた為、深く追求する事が憚られた。
「では貴艦をコールする際、なんと呼びかければよいか?」
「ムサシ・・・」
「了解した。ではムサシ、改めて言わせてもらう。我々を助けて頂き心から感謝する。できれば貴艦の目的と今後について聞かせて頂きたい」
「我々は世界秩序を脅かすAARFに敵対する者である。国連規約を批准し帰国と共闘する事を約束する」
「それは願ってもない事と、私個人として思う事だけお伝えしたい」
「今はそれのみで十分。感謝する」
「本艦及びわれら残存艦艇は漂流者の救助と艦の修理の為、現宙域を離れられない」
「了解した。本艦は現宙域に今しばらくとどまり、貴艦隊を護衛する任につく」
「大変ありがたい感謝する。要救助者の回収と修理が済み次第、本艦隊は地球へと進路をとる。貴艦はいかがするか?」
「われらの目的地も地球である。御同道しよう」
「了解した。では要救助者の回収を急がせる」と言ってアッシュは通信を終了させた。
彼はエセックスの隣に並んだ武蔵を見た。
青みがかったガンメタル色の巨大な船体は宇宙空間に溶け込み、艦底の波の様な稜線は美しさすら感じる。
なぜ身元を隠すのか?・・・
AARF戦艦の青白い燐光の様な物は何かしらの防壁だったのか?・・・
それをいとも簡単に撃ち抜いた、ムサシの砲とは?・・・
必死に脱出艇を救助してまわる僚艦を見て、アッシュ艦長はとりあえず考える事を止め指示を出した。
「無事なチャーチルは脱出艇の回収にまわれ。宇宙空間に放りだされた者達を一刻も早く救助するんだ」
漆黒の宇宙に多くの残骸が漂っている。
その多くの漂流物は光を失い、時折太陽の光を反射してキラリと光るのみだった。
そんな中、窓から明かりが漏れる小型の脱出ポットが多くの残骸と共に漂流していた。
その脱出ポットには、5人のイギリス軍人が救助を待っていた。
そのうちの一人、イーサン・フィリップス准尉が不安げに他の者に聞いた。
「戦闘はどうなったんでしょうか?」無重力状態が不安を助長させる。
「分からん・・・」と宇宙服の上からでも細身と分るディラン中尉が答える。
「我々はこれからどうなるんでしょうか?」とイーサン。
「知るものか!」と自らの不安を露呈させない為、怒る様にディラン中尉が言ったその時。
ゴトンッという音と共に、軽い振動が彼らを揺さぶった。
窓の外には日本のライジンが脱出ポットを曳航する為、ポットを抱え込む様にしている。
「ライジン!日本の援軍か?」皆が喜び歓声をあげた。
とそこに、
[戦闘は終了した。このポットをイギリス艦艇まで引っ張ってく]と、どこか不愛想な物言いだが、不安の中にある人達を少しでも安心させようという気遣いが感じられた。
姿勢制御とスラスターを吹かす軽いGが彼らを包む中、見慣れた僚艦である駆逐艦ブリストルに近づいていく。
彼らは軍人らしからぬこのライジンのパイロットに、不思議なやさしさを感じていた。
武蔵のブリッジにオーソンが副砲座から帰ってきた。
「相変わらず見事な腕だな」と立花が声をかけた。
「昔とったなんとやらだ」と冗談めかしてオーソンが応える。
横からアルフレッドが立花に話しかけた。
「さっきは船籍を名乗らなかったな」とアルフレッドはニヤリと笑った。
憮然とした様子で立花が言った。
「どうすべきなのか・・・解らん・・」この男にしては珍しく答えの出ない様子である。
「しかし、この艦が日本の物だと周知される事は、これから先立ち行かなくなる様な気がしてな」
「いや・・確かにそうだ」真顔に戻ったオーソンが言った。
「日本の艦だと知れると、この戦争が終った時、援助や補償の見返りとして技術開示を求めらるのは確実だからな・・・」とアルフレッド。
「あぁ・・・」と深く息を吐きながら立花は応える。
そんな腕を組み宇宙空間で星の様に小さく見える地球を見ながら話す三人と、艦長席に座るマリアの目線が同じだった。
マリアは祖父の遺言を守ろうとしてくれている事が嬉しかった。
とオーソンが
「このまま宇宙海賊でもおっ始めるか?」冗談めかして言った。
「この艦の乗組員達を日本に帰させない気か?」立花が笑いながら言う。
「そ~と帰ればいいのさ。誰がこの艦に乗っていたかなんて誰も知らんのだからな」
ちょっと調べれば解ってしまう様な事を、気楽に言うオーソンをブリッジの皆が笑った。
「はっはっはっははははは。オーソンさんは気楽でいいよ」と粟野。
「気楽とはなんだ。ポジティブと言え」そんなオーソンをまた皆が笑う。
マリアも楽しくなって笑った。
一通り笑ったアルフレッドが
「まぁなんだ・・・海賊案は却下だな。」
「じゃあ海賊が駄目なら、独立国家樹立ってのはどうだ?この艦を一つの国家だと思わせればいいんじゃないか?」とオーソン
その冗談の様なオーソンの提言を、また皆が笑った。
「はっはっはっはっはははははは、それはまた豪胆な!」と河野
「じゃあオーソンが国家元首を務めるか?」と笑いながら立花。
「俺はやっぱり宇宙海賊キャプテンオーソンの方が性に合ってるな」
「はっはっはっはっはははは。俺もそう思うよ」と粟野。
皆が笑っている中、アルフレッド一人だけは真顔で考えていた。
戦闘艦の独立・・・武力を背景に国連と一国家として対峙し独立を勝ち取る・・・か・・・
「野郎ども!錨をあげろ!AARFの連中からお宝をいただくんだ!」とオーソンが大声で冗談を言う。
「おぅ!」と粟野と河野が受けた。
「はっはっははっははっはははは」
アルフレッドは一縷の望みを見つけた思いを、宇宙空間に目をやりながら味わっていた。
申し訳ありません。
イラストが間に合いませんでした。
正月休みを利用して仕上げる予定です。