信じる心を失ったら、その瞬間から世界の色は失われてしまう
「おや、珍しいな。旅人さんかな?」
「あーはい!どうも初めましてぽぽぽんっていいます!」
ぽぽぽんとナギは村に到着した。
ここまでかなり歩いた。
時間にすると2日弱だが、変わらない光景に慣れていない旅路。
身体もだが心まで衰弱してしまった1人と1匹である。
「この村には宿屋とかありますかね。旅でかなり疲れてしまって……」
「宿屋か……やめておいた方がいい」
「えっと、何故ですか?」
「この村は追い詰められた人が集まる村。他の街で爪弾きにあい、居場所がなくなったやつがここにいる」
ちなみにナギはぽぽぽんの懐に隠れている。
この世界の住人には魔物に対する恐怖が根付いている。
カーバンクルはドラゴンであり、つまりは魔物だ。
魔物であるナギが姿を見せると、村人が警戒してしまうかもしれない。
一先ず、ぽぽぽんだけで反応を伺うために、ナギは懐に隠れることにしたのだ。
「それと宿屋と何が関係あるんですかねぇ」
「つまりな?安心できる寝床を提供できる奴なんて、この村にはいないのさ」
この村の住民は周りのことが信用も協力もできなかった人が集まっている。
もちろん治安はいいとは言えず、常に死と隣り合わせだ。
なぜ、そのような人たちが集まって村ができたかといえば、魔物を避けるには徒党を組む必要があったからである。
「そっかー。それじゃここに来た人はどうやって寝てるの?」
「そもそも旅人なんて来る場所じゃない。みんな自力で寝床を確保して休んでるさ」
話もそこそこに、話をしていた村人は姿を消してしまった。
人が恋しかったのであろう。
美少女であるぽぽぽんと話してたいそう満足そうにその場を去った。
「いい人だったねー」
「ただの暇人だよ。それより、これからどうする?言われた通り寝床を探す?」
「寝床ってそんな簡単に見つかるものとは思えないんだけど。てか、寝床ってみつけるもの?」
「それは私もわからないけど」
周りをみると、木造の簡易的な小屋が目立つ。
それはとても簡素な作りで、雨風を防ぐには頼りなく見える。
とても人間が生活している環境には思えなかった。
「……ねぇ、この村を救うってどうすればいいの?」
「そうだなぁ、とりあえずきっといると思うから村長にあってみたら?」
人が集まれば衝突はどうしても起こる。
衝突を避けるためには、その人たちを纏める人が必ず必要だ。
それが人望によって選ばれるか、暴力によって選ばれるか、環境によって変わるのだが。
「そうだねー。この村を纏めている人に困ってることをきけたら、救う方法もわかるかな」
「寝床を探すのはその話が聞けてからでもいいんじゃない?」
できれば日没までに寝床を確保する方が望ましいと思うのだが、1人と1匹はめんどくさい問題は後回しにする派であった。
「とりあえず、また人を捕まえて村長がいるか聞いてみよっか」
「オッケー。それじゃまた私は懐に隠れとくね」
「う、うん。これちょっとくすぐったいんだけどね。あんまり動かないでよ?」
そうして2人は村人たちへの聞き込みを開始する。
治安が悪く、人のことを信用しない村人から情報を引き出すのは一苦労。
とくにぽぽぽんは一見美少女で、1人で歩いている。
悪い人間から見れば、格好の鴨である。
「よぉよぉ姉ちゃん、こんなところで1人で何してんだ?」
「こんなところで1人でいたら危ないよー?俺の寝床に来る?守ってあげるよ?」
数々の男がナンパしてくるが、それを華麗に躱すぽぽぽん。
「え?ほんとー?ちょうど寝床に困ってたんだよー」
華麗に躱すぽぽぽんはそこにはいなかった。
今まで神界で過ごしてきたぽぽぽんは人の悪意に触れたことがない。
善意の塊であるぽぽぽんは、あまりにもこの村の人の感覚とはかけ離れていた。
「えっ?そ、そんな簡単に?」
「お、お嬢ちゃん?俺たちが言うのもなんだけど、もっと周りを疑った方がいいよ?」
この村に来る人は、人を信じることを忘れてしまった人が集まる。
無条件に人を信じるぽぽぽんは、とても刺激的だった。
「あ、あぁ、村長か。それならあいつがたぶんそうだな」
「お、おう。名前は知らないがめちゃくちゃ強いやつがいてな。そいつがここぞというとき魔物を倒してくれるから、俺たちはそいつに従っている」