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天から落とされた天使が世界を救うだけの物語  作者: 草壁輝美
第1章 第一の国を救出
4/8

鳥は歌い、風たちは舞い踊る。死ぬにはいい日だ。

無人の野原を歩く1人と1匹。

空には燦々と輝く太陽。

この辺りには、水辺はないが草に溢れている。

そのせいか、太陽が照らしているのに過度に熱いことはない。

心地よい風も吹いており、絶好の旅日和だ。


「いい天気だねー。こういう日は散歩に限るねー」

「露頭に迷って、目的地が曖昧の状態の放浪を、散歩と呼ぶのかは微妙だけどね」


1人と1匹は歩く。

目に見えない目的地を目指して。

北にはきっと何かがある。

もなみの言葉を信じて、ただ前に進むのみである。


「しっかし、ほんと景色変わらないねー。本当に村とかあるのかなー」

「まぁこんなものじゃない?」

「そうかなー。でも暇だなー。なんかすることないのナギ―」

「ないよ何も」

「えー、そんなことないでしょー。何か出してよナギえもーん」

「なんだよナギえもんって……。それじゃしりとりでもする?」

「しりとりはいいや」

「わがままだな……」


とりとめのない会話をしながら、確実に歩みを進める。

ここは争いの絶えない死の世界。

しかし、日が高く昇る日中は魔物は行動しない。

神の力を宿す太陽の光に魔物は弱いのだ。

そのため、比較的安全に日中は旅をすることが可能である。

しかし、逆に言えば移動はできるだけ速やかにする必要がある。

夜になると、魔物の群に襲われる可能性があるからだ。 


それでも、止まることなく歩み続ければ、いつかはゴールに辿りつく。

とくに中身のない話を続けながらがむしゃらに歩いていると、遠くに村が見えてきた。


「お、ナギ!みてみてー!あれじゃないかな!」

「んー、そうかも」


この世界に時計はない。

よって時刻はわからない。

夕方くらいであろうか。

日は落ちる寸前で、もう太陽は頭半分しか残っていない。


「うーん……まずいなぁ」

「どうしたのナギ?」

「この世界にいる魔物は夜行性なんだ。だから、早く村までいかないと、私たちが魔物に襲われてしまう」

「えー、でも魔物ってあれでしょ?スライムみたいな」

「その言い方だと、スライムが弱いみたいな言い方だけどまぁそうだよ」

「いやいや、スライムでしょー?そんなの強いわけないってー」

「なんかすごい雑に死亡フラグ貼ってくれているけど、この辺りでスライムは出ないから心配しなくても戦わないよ」

「あ、そうなんだ……」

「なんでちょっと残念そうなの?」


昼間は激しく照っていた太陽は文字通り見る影もない。

夜は魔物の時間。

夜が来る前に村に向かわねければ、死んでしまうかもしれない。


「ほら、ぽん急いで!早くしないと夜になっちゃうよ!」

「ち、ちょっと待ってよー!」


ぽぽぽんを置き去りに速度をあげるナギ。

それを全速力で追いかけるぽぽぽん。

天使の身体ではなくなってしまったぽぽぽんは、元々空を飛んで暮らしていたために走り方がわからない。

全力で走ることを要求されるが、その走り方はぎこちなく速度は上がらない。

このままでは夜が来てしまう……。


「grrrrrr……」

「……?」


ぴたりと動きを止めるぽぽぽん。

周りを伺う。

何やら、物音がした気がするのだが……。


「ぽん?どうしたの?」

「待って、ナギ。何か聞こえなかった?」


周りを見ると、すでに日は落ちていた。

電気がないこの世界では、周りの照らすのは月あかりのみ。

さっきまで風によって音を立てていた草木たちも、今は静かになっている。


「grrrrrrxsu」


聞こえるのはうめき声だけ。

周りを見ても姿は見えない。

不吉な感覚が胸をよぎる。


「聞こえるね……」

「ねぇナギ。ちょっと周りを照らすことはできるかな?」

「できなくはないけど……ちょっと様子をみようよ。何が起こっているのかわからないし」


明かりを照らせば、不要に位置を知らせることになってしまうかもしれない。

そういった理由付けもあれば、不吉な予感がやめておけと囁いている。


動いたら死ぬ。


感覚でそれがわかるのだ。


「ナギ―……」

「しっ……」


しばらく様子をみている2人。

ずっと続くんじゃないかと感じる。

しかし、何事にも永遠はない。

状況が動き出すのは早く、声が聞こえてから5分後だった。

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