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機械姫と天の風  作者: ブラボー
序章  鋼鉄の殺戮者
3/18

機会

「そうか。それ、聞いて安心したわ」


ガラさんは見た目はゴツいが、優しい人だ。

わざわざ心配してくれたのだ。

今は龍治と勝虎もいる。陽助も、ガラさんも、門下生もいる。中には困った奴もいるが、みんな家族同然だ。戻ってからかなり経つが、もう昔みたいに血の気にはやる機会も減った。


「さて、じゃあ指導に入りますか。今日は武器の弾き方でも………」

「へぇ!そんなのがあるのかい?」

「強盗とか素人の捌き方みたいなものですよ」

「大分違わねぇか、ソレ………」

「そうでしょうか?」


………でも、もし。


もしも機械兵が出ても私は正気でいられるだろうか?

私は自分の内に秘めたものに恐怖と疑問を感じずにはいられないのだった………。


━━━━…………。

━━━━━……………あれは3日後の事だった。


「リュウ~?しょうこ~?」


その日は2人におつかいを頼もうとしていた。

2人はまだ幼い。だから、街に出て人に関わり、買い物をするのも大切な彼らの勉強だ。

義務的な教育のない今では、学童に通うか道場通いなどで教養を学ぶ。

しかし、この日は2人が見つからないのだ。


「おっかしいな~………」

「おや、天風さん。どうしました?」

「いや、2人にまた、おつかいを頼みたかったんだけど」

「そういえば、見ていませんね……」


通りがかりの陽助さんも知らないらしい。

そこへ門下生が1人。助平だ。


「今日もイイ乳っすね!!」

「そのサムズアップはいらないから。あといつも通りだから。」

「助さん、ところで龍治と勝虎を見ませんでしたか?」

「え?2人ッスか?」


助平はアゴに手をやると、ううむ、と頭を捻り、記憶をあたる。

あ、と思い出す。


「そういやぁ、2人で外へ!何でもヒミツの場所とかなんとか!」

「ヒミツの場所…………」

「聞いたことがありませんね…………」


そもそも2人は進んで外には出ない。

勝虎はあんな調子だし、龍治はもっぱら私に勝つための稽古だ。

その2人が外にヒミツの場所………。


「なんすかね!ヒミツの場所とか!………あ!」

「何?」


「え!?いやまさか………あの年だし、兄妹で?まさかそんな………」

「もういい………。」


助平は放っておいて、道着のままだが念のため帯刀して出る事にする。


「………イヤな予感がする」

「それは………大変ですね」


私のその言葉に陽助さんも言葉を濁す。

経験則から来るのか、私のイヤな予感はなんとなくいつも当たるのだ。陽助も顔色を曇らせつつ、告げる。


「きっと大丈夫です。」

「もしも私が戻らない時は………」

「それはないです。信じてますから」


そう言う彼の口元は心なしか微笑んでいた。

理知的な彼だが根拠はないが、信じているのだ。


「いってくる。」

「はい。」


外に出るとまずは2人がいつも通る商店街への道へ。

注意深く見るが、特に何も無い。

商店街へはそう遠くない。往来の中を進みながら、商店街へ。

聞き込みからだ。

まずは肉屋。


「いや?来てねぇな」


米屋、八百屋、魚屋、雑貨屋、本屋、床屋………


「見てないね」

「はて?」

「きたかい?」「いや、きてねぇな」


果ては駄菓子屋だ。


「今日は来てないねぇ…………」

「…………そうですか」


しかし、全滅だ。

気が付けば、昼を過ぎていた。午後も2時近いだろう。


「…………参ったなぁ」


焦っていた。

まさか、本当にさらわれたのだろうか?殺されたり、また悪漢に捕まったりしていないだろうか?昔とは違い、今は痛感せずにはいられない。抱えるとは如何に不安な事かと。


「もし?」


道を戻りながら考えていると声をかけられ、思わず刀に手をかけて、鯉口を切ってしまう。その刀の音に驚いた様に両手を挙げた。


「わ、私です!!」

「君は…………」


声をかけたのは門下生の1人だった。

彼は少々顔が青ざめていたが、刀を納めるとすぐに胸をなで下ろした。


「ごめん。実は龍治と勝虎がずっと戻ってなくてね」

「そうなんですか………?あの2人なら午前中に神社の方へ行きましたが………まだ戻られてないのですか?」

御免ごめん!!」


それだけ言うと走った!

神社は商店街とは違う方向だ!山際にあり、賊は討伐されていて、今はいないハズだがあまり人は普段寄らない場所もある!


「ハァ!!ハァッ!!」


走った!とにかく焦った!何かあったに違いない!

そうでなければこんなことになるものか!

神社に着くなり、焦りあちこち覗き込んだ!

いない!いない!


「龍治!!勝虎!!」


いない!!


「返事をして!!」


いない!!どこにも!!

そんな時だ。


「お~い!!天ちゃん!!天ちゃんいるかぁあ!!」


ガラさんの声だ!


「ハァ………ハァ………柄日さん!」

「落ち着けよ!ほれ、水だ!!」


よほどその姿がみっともなく焦っていたのか、水筒を差し出され、水をガブ飲みして、呼吸を整える。


「よし!こっちゃ来い!!」


ガラさんに手を引かれ、神社を下り、途中の道の道なき道を行き、草むらの中に入って行く。


「さっき、別の奴に聞いた!龍治と勝虎なら、この先に行った!!俺も神社に参拝した帰りに見て、跡をつけたんだがここで見失った!!」

「柄日さん!2人はヒミツの場所って!もしかして、遺跡とかない!?」

「遺跡ぃ!?んなもん、この先はもう調査済みのやつしか………」


それだけ聞いて走った。

きっと2人はそこだ!!


「おい!!天ちゃん!!1人で走んな!!」


焦る私を抑えるガラさんの案内を得て、調査済みの遺跡・ロータスに来た。大きな工場跡で、錆び付いたレールなどには獣が生活した跡などが残ったままだ。しかし、隠れる場所などは殆ど無い。


「龍治ぃ~!!勝虎ぉ~!!」


声は付近の森に木霊こだまし、周囲に響いた。


━━━………………。


「…………何もねぇな」

「シッ!!」


耳を澄ます。

鳥や虫の鳴く声に混じり、わずかに聞こえる。


「…………勝虎!!」

「あ、おい!!」


勝虎の泣く声だ!

確かに聞こえた!建物の奥だ!!

床にポッカリと空いた穴の前で泣いていた。


「勝虎っ!!」

「あ…………」


勝虎は姿を見つけるなり、すぐに飛びついて来た。


「おねえ″ぢゃ~ん!!」

「勝虎!龍治は!?龍治はどこ!?」


「お~い!ねーちゃーん!」


穴の中から龍治の声がした。

覗き込むと、龍治が手を振っていた。

良かった!元気そうだ!怪我もなさそう!


「馬鹿っ!!そんなところで何してるの!?」

「ご、ごめんなさい…………。でも、これ、ほっとけないだろ」

「うるさい!!早く上がってきなさい!!」


申し訳なさそうにガラさんに引き上げてもらい、上がってきた龍治の頬を思わず叩いてしまう。

叩かれた音が辺りに響くと、抱き寄せた。


「馬鹿っ!!どれだけ探したと思ってるの!?」

「うっ…………」

「天ちゃんなぁ、必死に探して、ずっと走ってたんだ。何してんだ、おめぇは…………」

「うっ………うッ………うわぁあぁああ!ごめんなさい~!!」


泣き崩れる龍治と勝虎を抱き寄せて頭を撫でると、理由を聞いた。

最初はただの冒険だったらしい。

ただ、何回か来た時に龍治の足下が崩れて、地下室に落下してしまい、その時に見つけたのだ。


「…………これは」

「ゲッ!?仏さんかよ!?」


見つけたのは人だ。しかも女性。ドレスのようなものを身に付け、往来を歩く人とは少し違う。地下室は明らかに調査がされていないし、機械的なものが沢山、そのまま遺ったままだ。


「違う………」

「分かんのかい………?」

「死体にしては綺麗すぎる。」


腐っていないし、所々が汚れているが、綺麗すぎる。

なら、なんなのか?


「とにかく、これは持ち帰った方がいいだろうよ。調査も後でお国に頼まにゃ………」


…………一瞬だ。

一瞬だけ、機械兵じゃないかと思った。

でも違う。家族を殺したのはもっと餓者髑髏がしゃどくろみたいな奴で、こんなんじゃない。それに、こんなに綺麗なものか。


「天ちゃん………?」

「いえ………。」

「この娘は俺が道場に抱えてくから、天ちゃん、2人を連れて帰んな。」

「お願いします。一応、龍治のしたことです。ウチで預かります。」


…………そして、2人を連れて天風が帰った後だった。


「さぁて、と………」


女性を抱えようとして柄日は気が付いた。


「重っ!!見た目より重………おおっと、女にゃ、んなこと言えやしねぇなぁ!」


その時、ハッとした。


「………………………まさか」


柄日は気が付いたが、この後の事などどうしようもない。

連れ帰るしかないのだ。

連れ帰ると言って、預かると言わせてしまった。

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