鋼鉄
━━━━………………ついさっきまではいつも通りだった。
家は剣術道場だった。
朝と夕方には門下生で溢れ、賑わっていた。
父は厳しく、政界にも意見できる剣士だった。
母は優しく、包容力のある人だった。
妹は私が大好きで、甘えん坊だった。
「…………………。」
その温かみのあった家は血糊でべったりだった。
妹は最初に頭を砕かれ、何も言わなくなった。
逆上した父はあっさりと刀を折られ、四肢を銃のようなもので精密に撃ち抜かれると首から血を噴水みたいに吹き上げて、頭がゴロリと転がった。
母は私を守ろうとして背中から開かれた干物みたいにばっくりと裂かれて死んだ。
「完了。プログラムに従い不穏分子を排除。」
目の前の奴は骨組みだけみたいな奴だけど、何かは分かる。
旧文明の機械。機械兵という、教科書で教えてくれる教科書にしか出てこない、お伽話にしか出てこない、機械の兵隊だ。
父を、母を、妹を、殺した………。
私はただ、泣きながら、何も言えず、失禁し、その場にへたり込むだけだった。
死ぬだけだった。死ぬはずだった。
「任務了解。緊急事態を感知。実行」
しかし、そいつは私に背を向けると空へ飛び、どこかへ飛んだ。
夕方、死体が臭くなるまで呆然としていた私は門下生に保護された。
生き延びた……………
生き延びた………………