表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編純文学

ウミガラス

作者: 飯田葵

冷たい海の風を受けながら知也は防波堤の上を歩いていく。


海では遠くに見える高い波が穏やかに一定のリズムを刻みながら浜辺に押し寄せている。


知也は防波堤の上に腰をかけて海を眺める。

日がやっと登り始めた冬の海には、いつも通りサーファーたちが数人いる。

その中に一人の女の子を見つける。


その女の子の名前は玲奈といって、数日前に毎日海を見に来ていた知也に声をかけてきた。


波に乗って浜辺に戻ってきた玲奈が知也に片手を大きく振る。

振っていない手には彼女の体には不釣り合いな大きなボードを抱えている。


玲奈は砂に足をとられながら知也のところに走ってくる。

階段を上ってきた玲奈の息はあがっていた。


知也は玲奈に声をかける。


「また海に来てたんだね」


「君もね」


玲奈が知也に笑いかける。

知也は玲奈のポニーテールにしている、少し癖のある髪に浜辺の砂が付いていることが少しおかしくて笑う。


「見てて、今日はいい波なんだ」


それだけ言うと彼女はまた海のほうに走っていく。


知也は吸い込まれるように彼女の黒い背中を見てしまう。

彼女の背中には自信が満ち溢れていて知也のことを魅了する。


玲奈が海に入ってパドリングをしながら沖に出ていく。

四つほど波を玲奈が見送った時、玲奈がいるよりも沖から高い波が来るのを知也は見た。


「来る」


知也の口から思わず声が出たとき玲奈が知也のことを見ていくよと言った気がした。


玲奈がその波に乗って立ち上がる。

彼女は海の中を飛んでいた。その波を捕まえて高く空の上を泳いでいるようでもあった。

波の中で玲奈のポニーテールが後ろにたなびいているのが知也にはやけにかっこよく見えた。


「ウミガラス」


玲奈にはまさにその言葉が似あう。

黒いウエットスーツを着て海の中を自由に飛ぶ姿はまさにその言葉に似つかわしいものだ。


玲奈が浜辺について和也に手を振る。和也が手を振り返すと玲奈はピースをして屈託なく笑う。


彼女がまた海へと泳いでいく。

そうして彼女はまた海の中を飛ぶのだ。

ウミガラスというのはおそらく方言で祖父と祖母の世代の人からしか聞いたことがありません。

サーファーという意味なのですがなんだかかっこよくてこの言葉がすきです。


お読みくださりありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 女性から男性に声をかけるというシチュエーションが好きで繰り返し読んでいます。 玲奈が海から上がって、海を眺めていた知也を始めて見つけた時、どんな風に見えて、どんなことを思ったろうとか、声をか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ