休暇なので弟子の家に行きましょう
今日、私は休暇です。
本当は私は休暇を一日たりとも入れる予定はなかったのですが、コアちゃんを弟子にしたため休みを取ることになりました。
さて、コアちゃんの家に向かいましょうか。
コアちゃんの家をどうして私が知っているのか。
もちろんコアちゃんに聞きました。
ストーカーはしていません。
コアちゃんに近づこうとしていた男性を叩きのめしたのは覚えていますが…
それはいいとして早く向かいましょう。
「コアちゃんの家はこのあたりのはずですが…」
私は貴族たちが住む区画にいます。
…なぜでしょうか?
コアちゃんは貴族の家の者なのでしょうか?
私は少し緊張しながら歩いている。
すると、
「レーヴァンお姉ちゃん!」
遠くからドレスを着たコアちゃんがやってきた。
やはりコアちゃんは貴族の家の子供でしたか。
そう思いながらコアちゃんのもとに近づいていく私、しかし、
「貴様、お嬢様とどのような関係だ?」
首元に剣を突き付けられそうになったので、反射的に、
「ふっ!」
突きつけてきた相手を背負い投げしてしまいました。
この技はマスターから教えてもらいました。
このような技を知っているマスターはいったい何者なのでしょうか?
そう思ったのですが、今はコアちゃんのもとに行かなければ、
走ってコアちゃんのもとに向かった私はコアちゃんから謝罪されました。
………なぜ?
実は襲ってきた人はコアちゃんの護衛だそうで、コアちゃんを心配し過ぎて私に剣を突き付けてきたというわけです。
先ほど投げ飛ばしてしまった護衛の方のもとに行くが、気絶しているようなので背中に背負ってコアちゃんの家、屋敷に向かうとしましょう。
「あの、先ほどは護衛の者が失礼なことをしてしまい申し訳ありませんでした。」
「気にしなくてもいいです。それより、喫茶店でいる時と同じように私に接してもらっても大丈夫ですよ。」
コアちゃんは笑顔で、
「わかったよ!レーヴァンお姉ちゃん!」
いつものコアちゃんに戻ったようですね。
コアちゃんに案内してもらいながら屋敷に向かい、ようやく到着した。
「………あの、コアちゃんの家、ここ?」
「ふふふ、やっぱりレーヴァンお姉ちゃんも同じ反応をしてくれました。そうです。この大きすぎる屋敷が私の家です。」
コアちゃんの家は、屋敷というより城と言ったほうがいいくらいの大きさだった。
私が王国にいたときに住んでいた屋敷よりも大きいです。
「レーヴァンお姉ちゃん、早く入ろうよ。」
「わかりました。」
門の前には兵士が二人、屋敷の敷地内に入ると、
「「「「「お帰りなさいませ、お嬢様。」」」」」
屋敷の使用人が大勢でコアちゃんを出迎えていました。
帝国貴族はかなり裕福なのですね。
「レーヴァンお姉ちゃん、早く入りましょう。あ!その前にクレーベンを使用に預けてもらってもいいですか?」
「クレーベンって、私が背負っている人?」
「はい!」
私は近づいてきた使用人の一人にクレーベン?を預け、コアちゃんとともに屋敷に入るが、
(し、使用人たちの目線が痛い…)
殺気がひしひしと伝わってきます。
本当にやめていただきたいものなのですが、これも、コアちゃんを大切にしている証でしょう。
ここは我慢です。
「コアちゃん。」
「はい、どうしたの?」
「何処に向かっているのか教えてもらえる?」
「えっとぉ、お父様に私の師匠ですって、レーヴァンお姉ちゃんを紹介しよと思ったの………ダメ?」
「………あざとさ満点ですが、まぁいいでしょう。では、コアちゃんのお父様のもとに案内してください。」
「はい!こっちです!」
案内され、コアちゃんのお父様がいる部屋の扉の前についた。
コアちゃんが扉をノックし、
「お父様!コアです!入ってもよろしいでしょうか?」
『コアか。入ってもいいぞ。』
「失礼します!」
コアちゃんが先に入り、私が後に入る。
「コア、そこの女性は?」
「私の師匠です!」
コアちゃんのお父さんが顔をしかめる。
「コア、一つ聞くが何の師匠だ?」
「魔法です!」
さらにコアちゃんのお父さんは顔をしかめると、
「魔法の師匠なら貴族の血をひくものが良いと思うのだが?」
「お父様、レーヴァンお姉ちゃんは複合魔法を無詠唱で使用できるほどの魔法使いなんですよ。そのような方を師匠として出迎えないほうがおかしいと思います。」
「複合魔法を無詠唱………ん?複合魔法、無詠唱、レーヴァン………レーヴァンだと!?まさか、ラーゼイン王国所属魔法騎士団団長、クルティエ・レーヴァンか!?」
「クルティエ・レーヴァン?」
私のようなものを知っているとは思いませんでしたが、今回は好都合です。
「そうです。私の名前はクルティエ・レーヴァンです。」
「何をしにこの帝国に来たのか尋ねてもいいか?」
「何をしにと言われましても、私は騎士団長という職業をクビにされて職を探しに帝国に来ただけです。今は喫茶店の従業員をしています。」
「さ、最強の騎士が、喫茶店の従業員?」
「はい。」
私がそういうと、
「くくく………くはははははははははははは!」
コアちゃんはお父さんが突然笑い始めたのを見て怖がっている。
うん、さすがに突然笑い始めるおっさんは怖い。
私たちの目線に気付いたコアちゃんのお父さんは、
「んん!あぁ、なんというか、突然笑ってしまってすまないな。それより、レーヴァン殿でいいかな?」
「かまいませんが。」
「レーヴァン殿がコアの師匠になってもらえるのであれば、私としてもとても喜ばしいのだが…本当にコアの師匠になってもらえるのだな?」
「もちろんです。ただし、私が休みの日の火の日と土の日の週二日だけですが、それでもかまいませんか?」
「………わかった。それでいい。」
「ありがとうございます。それと、私がコアちゃんに魔法を教えることに対しての給金はいりません。」
「理由を聞いてもいいか?」
「コアちゃんと私は友達です。友達からお金を巻き上げるようなことはふつうしません。つまり、友達なので給金はいらないということです。」
「う~む、あまり納得できる答えではないがまぁいいだろう。では、コアの師匠を頼む。」
「任せてください。」
こうして私はコアちゃんの師匠となりました。
「レーヴァン殿。」
「はい、何でしょうか?」
私とコアちゃんが部屋から出ようとしたところ、コアちゃんのお父さんが話しかけてきました。
「レーヴァン殿が騎士団をやめ、帝国に移住しているという情報を皇帝陛下に教えてもいいか?」
「いいですが、私が働いている喫茶店に迷惑をかけないということが前提ですが。」
「分かった。」
「では、失礼しました。」