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就職して働いていています

 朝五時、起床した私は身支度を整える。

 制服に着替え、一回に下りるのだが、


 「早く起きるのはいいですが、開店までまだ時間はありますよ。レーヴァンさん。」

 

 そう言うのは、この店の店主であるクレドウさんだ。

 私がこの店で働き始めてもう一か月ほどが経っている。

 最初はこの喫茶店の経営は傾いているのではないかと思っていたが、そんなことはなく、しっかりと稼いでいるようです。

 さて、私も仕事をするとしましょう。

 

 私の仕事は店内の清掃、給仕としての仕事くらいです。

 店内の清掃は簡単なのですが、給仕としての仕事は本当に大変です。

 接客の際にセクハラされかける時が時々あるのでその迎撃が困っています。

 力加減が難しい。

 腕、手首を折らないようにしないといけないので…


 「レーヴァンさん、開店時間になりましたので立て看板を出してきてもらえませんか?」


 「わかりました。」


 外に出て、看板を出してきた。


 「では、店内の清掃をお願いします。」


 私は仕事を開始する。

 






 一時間後







 ………お客様が一人も来ない。


 「マスター、今日は誰も来ませんが、どうしたのでしょうか?」


 「あぁそういえば今日は学院の入学式だったね。この喫茶店は学生が多いから、みんな入学式に参加していると思うよ。」


 「入学式ですか。そういえば、マスターは学院に通われていたのですか?」


 「え?」


 「帝国に住んでいる者は6歳から15歳まで義務教育?というものを受けるため学院に通っていると聞いたのですが。マスターも通っていたのですか?」


 私はそう言うとマスターは慌てながら、


 「ぼ、僕はもともとは帝国民ではなかったので学院には通っていませんでしたよ。」


 「そうですか。」


 結局、世間話を続けている間も誰一人として客が一人も来ませんでした。

 午前中は店内に閑古鳥が鳴いていましたが、午後から違うはずです。

 

 「お昼になりましたね。マスター。」


 「そうだね。まだお客さんは来ないと思うからお昼ごはんにしましょうか。」


 「はい!」


 私はこの言葉を待っていたのです。

 マスターの作る料理はとてもおいしいのです。

 いえ、おいしいという言葉に収まるのかどうかというくらいおいしいのです。

 はっ!またおいしいと言ってしまった!

 今日はどのような料理が出るのでしょうか?


 カラン コロン


 私とマスターがカウンター裏に休憩しに行こうとしたときだった。

 店のドアが開き、ベルが鳴った。

 ということは、


 「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」


 「十人です。」


 「かしこまりました。十名様ご案内いたします。」


 私は十名のお客様をテーブルに案内する。

 お客様は皆、学院の生徒のようだ。


 (入学式の帰りのようですね。昼から忙しくなりそうです。)


 私はそう思いながら、お客様にメニューを渡していくのですが、


 「そこのウェイトレス。」


 突然声を掛けられましたが、何か間違ったことをしたのでしょうか?


 「どうされましたか?」


 「君、僕の家でメイドとして雇ってやる。」


 そう思ったのですがもっと面倒なことになりました。


 「お、おい、お前はここに来たことがないからわかんねぇだろうがヤバいんだよここの店主。」


 「何を言っているかと思えばそんなことですか。僕がここの店主と話をつけてきてあげましょう。」


 「だ、だからやめろって!」


 お客様の一人がおバカ様を止めているのですが、おバカ様がマスターのもとに向かっています。


 ………これはまずいのでは?

 

 ここで問題が起こればマスターに迷惑が掛かってしまいます。

 私は急いでおバカ様を止めようとしたのですが、


 「おい、貴様がここの店主か?」


 「はい、そうですが。お客様、どうされたのですか?」


 遅かったああああああああ


 おバカ様とマスターが対面してしまった!

 おそらくこのおバカ様は貴族のボンボン、ということは、マスターが適当な罪を押し付けられて捕まってしまう!


 「店主、あのウェイトレスを引き取りたいのだが。」


 「………え?今何と?」


 「はぁ~まったくこれだから平民は嫌いなのだ。いいか?僕は、この帝国の貴族、ポルーラ子爵の息子、デフィル・バン・ポルーラだ。その僕があのウェイトレスを引き取ってやろうと言っているんだ。おとなしく引き渡してもらおうか。」


 「………それは本気で言っているのですか?」


 おバカ様はマスターの言葉に対して、馬鹿にしたように、


 「何を当たり前のことを言っている。おとなしく引き渡せと言っているのが聞こえないのか?」


 マスターはうつむき、肩を震わせています。

 その様子を、私とともに見ていたお客様の一人がかなり焦っていた。


 「ま、まずい………デフィルが殺される…」


 え?ど、どういうことなのでしょう?


 そう思った私はお客様に尋ねようとしたとき、お客様がデフィルというおバカ様に向かっていくと、


 「すみませんでした!」


 お客様がおバカ様の頭を掴むと、机にたたきつけるくらいの勢いで頭を下げさせた。


 「兄上!なぜこのような平民に頭を下げなければならないのです!」


 「いいから黙って頭を下げろ!本当にすみませんでした!」


 二人が頭を下げているのですが、マスターはうつむいたままです。

 このまま硬直状態が続くかと思ったのですが、マスターが顔を上げました。

 その瞬間、


 「!!?」


 店内に殺気が広がりました。

 私にはわかります。

 長年戦いに身を置いていたのでこの手の殺気には敏感になっているのです。

 そして、今このさっきを放っている人物はマスターただ一人。


 「きみ、デフィル君って言ってたよね?」


 おバカ様は声すら出せないようになっているようです。

 顔を青ざめ、額には汗をかき、全身を震わせている。

 隣にいるおバカ様のお兄さんも同様だ。


 「デフィル君、君は貴族の身でありながら、無駄に権力を行使しようとしたよね?僕はね、そういう貴族が好きではないんだよね。そこにいる君のお兄さんもこの間まで似たような貴族だったんだけど、どうして今は平民に優しい貴族だと思う?」


 マスターがおバカ様に質問するが、おバカ様は震えるだけだ。


 「返事がないけど、まぁ教えておこうか。君のお兄さんは、僕にお仕置きをされたんだよ。内容までは教えるつもりはないけど、考え方を一瞬で変える方法だと言っておこうか。君にはそれを施そうと思っているのですが、どうでしょうか?」


 マスターが笑顔で殺気を振りまきながら、デフェル君に近づいていく。

 私は急いでマスターのもとに行き、


 「マスター、もうその辺にしておいたほうが良いと思います。私は大丈夫ですので、一度落ち着いてください。」


 そういうと、マスターは殺気を収め、いつものマスターに戻った。


 「ふぅ、ごめんね。落ち着いたから、手を放してもらえるかな?」


 「へ?」


 私は気づかないうちにマスターの手を強く握りしめていたようだ。

 …手を、握る?


 「あ、ああ、ああああああああああああああ!す、すみません!」


 「大丈夫ですよ。それより気分を害されたと思うのですが、彼に文句の一つでも行ってあげてください。」


 マスターにそう言われた私はまだふるえているおバカ様に近づくと、


 「このようなことはもう二度としないように。」


 「ひ、ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」


 おバカ様は店から出て行ってしまった。

 それと同時に店内にいたお客様九名が逃げるようにして出て行った。


 「………お客様がいなくなりましたね。」


 マスターにそう言うと、マスターは笑いながら、


 「そうだね。」


 そういった。

 私とマスターはほかの客様が来る前に持ち場に戻っていった。














 「結局、今日はお客様が一人も来ませんでしたね。」


 「そ、そうだね。」


 「お客さまが一人も来店しなかった理由はなぜですか?」


 「僕が怒ったからかな?」


 私はマスターにこれからは怒らないように注意することになっていたのだった。







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