クビにされたので働きに行こう
突然ですが、私、暇です。
理由としては仕事をクビになりました。
このことを語る前にまず自己紹介をしましょう。
私の名前はクルティエ・レーヴァン、ラーゼイン王国所属魔法騎士団団長を務めておりました。
しかし、今日の昼頃に国王陛下に呼び出されてみればお前はクビだと言われ、国から支給されていた鎧と騎士団の制服、そして、勲章すべてを剥奪されました。
クビにされた理由はよくわかりませんでしたが、まぁ気にはしていません。
ただ、暇なのです。
新しい職を探すのはいいのですが………お金は有り余っているのです。
今まで使うこともなかった金が大量にあるので一日中ごろごろと過ごす生活を送れますが、それではいずれ飽きてしまいます。
やっぱり新しい職を探すのが一番ですね。
さすがに職をクビにされた国にいるのは少しだけですが抵抗があるので少し離れた隣国のガーゼル帝国に行くとしましょう。
見たことがないものであふれていると思うので観光と職探しをしましょう。
私はさっそく帝国行きの馬車に乗り込みました。
休憩をはさみながら馬車に揺られること十三時間、
「帝都に到着しました!お客様方、降りてください!」
眠っていた私はすぐに起きて馬車から降り、御者に料金を払った。
帝都に入る前、門をくぐるには旅人は身分証または銅貨十枚が必要。
「次の者、早く来い!」
私は身分証は持っていない、理由は仕事をクビにされた際に騎士団所属の証をとられたからだ。
私はそれ以外持っていなかったから銅貨を払うしかない。
金は腐るほどあるからいいか。
私は門兵に銅貨十枚を渡した。
しかし、通ってよし!という言葉が聞こえない。
どうしたのだろうかと思い門兵を見ると、
「あ、あなた様は!」
驚いた顔をしている………まぁそれはそうでしょう。隣国の騎士団長(元ですが)が守るべき国を離れて、帝国にいればこんな顔もするだろう。
私は門兵に詰め所に連れて行かれ、
「す、少し待っていてください!」
そう言われ、椅子に座って待っていると、
「失礼します!」
扉が勢い良く開くと、なんと、帝国の騎士団長ロヴェル殿が来た。
お忍びの訪問だと思われたのかな?
「レーヴァン殿、このたびはどのようなご用件で?」
「用件はありません。私はただ、帝都で仕事探しに来ただけなのです。」
「し、仕事を探す?」
ロヴェル殿は動揺し、
「じょ、冗談にしては笑えませんよ。」
「いえ、冗談ではありません。私は騎士団長をクビにされました。今の私はただの一般人です。」
「………王国は馬鹿なのか?」
「それはあまり王国民の前で言わないほうが良いと思いますよ。私は大丈夫ですが。」
「むっ、そ、それはそうだな。では、本当に仕事を探しに来ただけなのだな?」
「はい。」
「分かった。それでは私はこれで失礼する。レーヴァン殿、帝国を思う存分楽しんでいってくれ。」
ロヴェル殿は笑顔でそう言うと部屋を出て行った。
取り残された私は部屋にいた門兵に銅貨十枚を渡し、身分証をどこで発行してもらえるのかを聞き、詰め所を後にする。
ようやく自由になった。
それにしても、まさかロヴェル殿が来るとは思いもしませんでした。
さて、まずは身分証を発行するため冒険者ギルドに行きましょう。
冒険者ギルドに向かう途中、何故か私の顔をじろじろと道行く人が見てきます。
私の顔に何かついているのでしょうか?
不思議には思いましたが気にせず冒険者ギルドに向かうことにしました。
「ここが冒険者ギルドですか。」
冒険者ギルドは見た目は酒場のようだ。
中はどうなっているのでしょうか?
冒険者ギルドの中に入ると、思っていた通り、ギルド内は喧騒に包まれていた。
私は受付に向かい、冒険者登録をすました。
冒険者ギルドの説明は思ったよりも短かった。
身分証を手に入れたので、次は仕事を探すことにする。
仕事探しはかなり難攻している。
パン屋に行ったっ際は、
「あ、あなた様のような方を雇うにはちょっと…」
建築業者、
「あんたのような人が来る場所じゃねぇよ。」
学園、
「ちょっと、難しいと言いますか、なんといいますか…」
図書館、
「こ、このような仕事はさせられません!」
雑貨屋、
「む、無理だよ!」
鍛冶屋、
「いや、その、なんというか、いや、いいますかその…」
このように、曖昧な返事だが雇うのはちょっといや、ということが分かる。
「………誰か仕事をくれないかな?」
まぁそんなことを言っても無駄だと思いますが、
「おや?どうしましたか?」
「え?」
公園のベンチに座っていた私に話しかけてきたのは、私と同じくらいの年の青年だった。
「あなた、捨てられた子犬のような雰囲気ですよ。いったいどうしたのですか?」
私はぽつぽつと様々な仕事を面接する前に断られたことをいうと、
「それは………分かりました。あなたは今、仕事を探していますよね?」
「は、はい。」
「僕の店で働きませんか?」
「………!?そ、それは本当ですか!」
「はい、本当ですよ。僕の店は喫茶店をやっているのでちょうどウェイトレスを雇おうと思っていたところなんですよ。」
「そうですか。」
「給金は銀貨二十枚銅貨十五枚ですが大丈夫ですか?」
「給金はどうでもいいのです!働かしてもらえるのであれば!」
青年は驚いていたが、笑顔になり、手を差し出してきた。
「分かりました。これからよろしくお願いします。」
私はその手を取り、
「はい!よろしくお願いします!」
私は仕事を見つけることができた。
さっそく喫茶店に向かうことにする。
「うちの喫茶店はあまり人は来ない喫茶店なんだよ。」
「それで商売になるのですか?」
「う~ん、商売としては赤字だけどお客さんが僕のコーヒーや料理食べて、喜んでくれるのを見るとうれしいんだよ。」
「…そうですか。いいお店ですね。」
「そうだね。おっと、ここが僕の喫茶店シランスだよ。」
「シランス?どういう意味ですか?」
「静寂っていう意味ですよ。さて、今日はもう暗いので一度帰ってもらえますか?明日の朝6時に来てくれれば僕としては助かりますが、大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫ですが…」
「どうしましたか?」
私はこの時、初めて気づいたことがあった。
それは、
「その、わ、私、宿をとってないのです。」
「………えっと、その、」
「大丈夫です!私は野宿でも大丈夫なので!」
私がそういうと、青年は焦ったように、
「だ、ダメですよ!女性を一人で野宿させるわけにはいきません!…そうだ!喫茶店に泊まりませんか?客室が空いているので!あ、で、でも、男の僕が女性と一緒の建物で寝るのは…」
「私は構いません。それに、あなたは私の寝込みを襲うような人ではないでしょう?」
「寝込みを襲うなんてことはしません!」
「そのように断言できるのであれば大丈夫でしょう。客室に案内してもらえますか?」
「分かりました。」
喫茶店の中に入った私は店内を見て驚いた。
「こ、この店は!?」
「どうしましたか?」
「い、いえ、こんなに綺麗で明るい店は初めてです!」
「そうですか………だからほかのお客さんも驚いていたのか…」
青年は何か言っているようだが…
「あの、客室はどこですか?」
「あ、あぁ、客室は二階です。」
青年に案内され二階の客室についた私は客室内を見て驚いている。
何故なら、まず、清潔ということ、二つ目は見たこともないものが置かれていること、そして、
「ここがシャワー室です。」
「しゃ、シャワー室?浴場とは違うのですか?」
「小さな浴場だと思ってもらえればいいです。今から使い方を教えます。」
私は部屋にある道具の使い方、シャワー室の使い方などを教えてもらった。
「では、明日の朝6時起床ということでお願いします。」
青年が扉を閉めようとしたとき、
「そういえば、お名前を聞いていませんでした。」
「そうですね。私の名前はクルティエ・レーヴァンと言います。クルティエかレーヴァンの好きな方で呼んでください。」
「では、レーヴァンさんと呼ばせてもらいます。僕の名前はイトセ・クレドウと言います。仕事の時はマスター、休憩時間はクレドウと呼んでください。よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
こうして私は喫茶店シランスで働くことになりました。
何とか頑張って投稿していきたい