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第一話

 神がいない月と書いて、神無月。10月の異名である。八百万の神々が出雲大社に集まるから神様が不在ということらしい。ということで、今月は10月の擬人化した女性の神無月さんが主人公である。


「スポーツの秋、芸術の秋、読書の秋に食欲の秋。はぁ、やることが多くて困ってしまうわ」


 神無月さんは困ったと言いながら、そんなに困っているとは思えない余裕のある微笑を浮かべた。彼女はスポーツウェアを着て秋晴れの中、ランニングをしていた。10月の祝日は体育の日だから、そういう設定になってしまうのは予想できたが、彼女は思った以上に自信に満ちた性格になっているようだ。


「でも、秋は9月の長月さんや、11月の霜月さんがいるじゃないか。それぞれで役割分担をすれば、神無月さんの負担も減るんじゃないですか?」


 私がそう訊くと、神無月さんは眉を寄せた。


「うーん、そうしたいのはやまやまなんだけどね。そういう訳にも行かないのよね。だってあの二人には荷が重いじゃない」


「そうですか?私は霜月さんはまだお会いしたことがありませんが、長月さんは随分と余裕のあるようでしたよ」


 私がそう言うと同時に私の肩に背後から手が置かれた。振り返ると6月の水無月さんが難しい顔をしていた。


「ただ自慢したいだけなのよ。自分がいかに充実した月であるかをアピールしたいだけなのよ」


 水無月さんはそう言って呆れたようにため息をついた。それには私も思わず納得してしまった。ここに出てくる擬人化した女性はその月のイベントや祝祭日が性格に反映している。例えば、水無月さんは梅雨で祝祭日もないからか、性格がネガ・・・・、それ以上はやめておこう。本人が傍にいると説明がしにくい。実際、心が読まれたのか、水無月さんはすごい目でにらんでいるし。


「あら、誰だと思ったら、6月の水無月さんじゃないの。私、あなたに何故か混同されてしまうのよね。名前が水無月と神無月で似ているかしら。でも、水と神じゃあ、似ても非なる物だけどね」


 神無月さんはそこでフフと笑った。全く相手にもしていないようだ。


「話を戻すけど、私が長月さんや霜月さんに協力を頼まないのかというと、それは・・・、私が一番適した気候であるからよ!!」


 神無月さんは両手を空に高く掲げ、自分がいかに選ばれた存在であるかをアピールした。八月の葉月さんも自信に満ち溢れた人だったが、この人もかなり自信からしい。


「あなた、今、八月の葉月さんを思い浮かべたわね。でも、彼女と私は決定的に違うわ。葉月さんはイベントをするには暑すぎるのよ。それに対して、私は気候的に暑すぎず寒すぎない最適の気候。体育の日だって、東京オリンピックが行われた日から来ているのよ。それなのに今は夏の最高に暑い時期にしようとしている。アスリートの体のことを考えていないわよね」


 神無月さんは何でも自分でやりたい性格のようだ。ただ、彼女の言うことにも一理あるように思えた。確かに八月の猛暑の中で競技をするよりも、十月の気候でやった方がいいかもしれない。

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