プロローグ
寝て起きると俺はただの高校生だ。
当たり前のことを平然と述べる俺がイかれ野郎に見えるかもしれないが、決してそんなことはない。
ごく普通の平凡な高校生であることには間違いないのだが、他の人とは違う点が一つだけある。なんと、俺は夢の中では魔王と呼ばれる偉大な存在なのだ。といっても数日前から夢を見始めただけだけどな。
おい、お前。やっぱり頭がおかしいって思ったろ。違うんだよ。俺だって初めはただの夢だと思ったんだ。だがな、その夢が毎日見ているとしたらどうだ?
おっ、少し表情が変わったな。信じる気になったか?いや、まだ早いか。まぁでも俺でさえおかしいと思ったよ。毎日同じ夢、しかも前回の続きからときたよ。これはもう夢で済むような話じゃない。
起きてる自分と寝てる自分の二人が別々の世界にいると仮定した。そこで実験してみたことがあってだな、起きてる自分は寝てる自分の世界のことを覚えているのか紙に書き出してみたんだよ。したらどうだ、全部覚えてやがる。寝てる自分も試したが全く同じ答えだった。人間、夢の記憶は起きてすぐに忘れてしまうもんだがこれはつまり寝てる間も起きてる間もどちらもなんだよ。自分で話してて頭が混乱しそうだがこれでも簡潔に話してるつもりだから許せ。
つまり結論からいうと俺は二つの世界を共存してることになる。
これを作り話とあざ笑うというなら俺は諦める。
でも不思議だな。なんで今日初めて会ったお前にこんなこと話してるんだ?
なに?初めて会った気がしないでしょ、だって?そんなこと言われてもよく分からん。お前自体なんか不思議な感じがするからな。
あぁ、もうこんな時間か。俺のおしゃべりに付き合ってもらってすまなかった。さすがにもう帰らないと学校が閉まるから帰ろうか。
じゃあな。
ん?またあとでね?
おい、それってどういう意味――
行っちまったか。なんかよく分からないが不思議なやつだ。
あれ?そういえば、あいつの名前なんだったんだ?