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力よりも愛が欲しい  作者: 春波流音
神級魔法の力
6/10

魔法

 森とは、洞窟と同じく数々のゲームで登場する魔物出現スポットの1つである。そして、今俺がいる異世界でも魔物出現スポットと言われている。

 ところで、話は変わるが魔物が洞窟や森を好んで住む理由を御存知だろうか?


「暗いから」「人間が来にくいから」と思う人もいるかと思うがそれは不正解だ。


 「暗いから」が違う理由は単純。魔物のほとんどは夜行性ではなく昼行性だからだ。昼行性の彼らは夜目が利かない。そのため人間と同じく暗闇ではまともに戦うことすらできないのだ。


 次に「人間が来にくいから」が違う理由についてだが...これも答えは単純だ。魔物には知恵が無いからだ。

 魔物に知恵があることは絶対にない。断言できる。なぜなら知恵がある魔物は魔物とは呼ばれず魔族と呼ばれるからである。魔族は知恵だけではなく力もあるため人間から逃げる必要はない。

 よってこの回答も違うと言える。


 では、何故、魔物が洞窟や森を好むのかと言うと、これもまた答えは単純で魔物は静寂を好むからだ。静寂が好きだからだ。

 だから、静かな洞窟や森を好んで住んでいるとされている。


 ......仮に、仮の話だが、静寂が好きな彼らの住みかで怒鳴り声をあげたらどうなると思う?

 答えは......


◇ ◇ ◇


「うわぁぁぁぁぁぁ!」

 俺は走っていた。

 木々が生い茂る森の中をひたすら走っていた。

 走る俺の背中を追いかけているのは8体の魔物。


 ≪やっぱ、君バカでしょ?魔物出現スポットとして有名な森で大声を出すなんて......よっぽど魔物に追われたいのね≫


 神の冷めた声がグサッと心に突き刺さる。しかも、言ってることが珍しく正論なので俺は何も言い返すことはできない。

 俺は悔しくて唇を噛みしめた。


 ≪もしかして君、Mなの?≫

「んなわけあるかぁぁ!」


 って、ヤバい。今ので体力が......体力が尽きそうっ!!どこか隠れれる場所はないのか!?

 俺は痛くなってきた横腹に手を当てながら辺りを見る。


 左:魔物がいた

 右:魔物がいた

 前:何もない

 後:魔物8体


 うん。隠れれる場所なんてないねふざけんなこのやろーっ!

 左右後全てに魔物がいるじゃねぇか!前にしか進めねぇじゃねぇかっ!


 ≪左に行きなさいっ!≫


 迷える子羊の脳内に神のお告げが響く。

 ━━━っ、おぉい!?何でわざわざ魔物がいる左に行くんだよっ!?意味わかんねぇよ!


 ≪いいから行けよっ!≫

「あっ、はい......すみません」


 ねぇねぇ、俺今、神に脅されたよ?

 そして無駄な体力使っちゃったよ!

 ところで、この神信じてもいいのかな?小学生にも泣かされるような神だよ?

 などと思いながらも俺は素直にお告げ(?)に従い右に向けて走った。


 俺が右に走ってくるのが見えたのか、右に居た、全身薄い緑色でゼリー状の真ん丸い形をした魔物は身体を伸ばし始めた。


 ...何をするつもりなんだ?何か嫌な予感がする。


 ≪しゃがんでっ!≫

 その言葉に、俺は即座に従いしゃがんだ。


 ビュン‼

 何かが俺の頭を掠める。

 ドガンッ!

 風を切る音とともに、後ろから破壊音が響いた。


「な......」

 俺は言葉を失った。

 木が根本からボッキリと折れていた。


「い、今のは!?」

 ≪スライムの【突進】ね。まさかあれほどの威力が出るとは思わなかったけど......≫

「ス、スライムって、さっきの緑色の生物のことか!?」

 ≪そうよ≫


 嘘だろ?スライムっていったら青色のソフトクリームの先っぽみたいな形をした奴じゃないのか!?

 ≪それはゲームの話でしょ。ゲームと異世界を同じにするんじゃないわよっ!≫


 あっ、はいすみません。


「━━━って、あんな柔らかそうな生物が何やったら木が折れるほどの突進をくりだせるんだよっ!?」

 ≪あれは危なかったね...けどよ~く後ろ見てみなよ!≫

「......あっ!」


 後ろを振り返ると、先程まで俺を追いかけていた魔物は全滅していた。

 ≪きっとスライムの【突進】に巻き込まれたんだね≫

「スライムさん、まじリスペクトっす!」


 魔物をリスペクトするなんて馬鹿げた話だが、何はともあれ俺はスライムのお陰で逃げ切れたんだ。

 ありがとうスライム!自爆してったお前の分まで俺頑張るよっ!お前の分まで俺生きるよっ!


 ≪あーあ。......フラグたてちゃったね≫

 ガラガラッ。

 神の呆れたような声が俺の頭に入ってくると同時にスライムが突っ込んだ木の辺りから音が聞こえた。

 

 ......まさか、まさかね......。......頼む、スライム出てくるなよ!

 しかし、現実は残酷だった。

 折れた木の隙間を潜り抜けるようにしてスライムは姿を現した。

 俺は咄嗟に逃げようとするが焦ったせいか足がもつれてその場に倒れ込んでしまった。

 畜生!俺はチラッと振り返りスライムの方を見る。

 ヤバいッッ!スライムが身体を伸ばし始めている。あと5秒もしたら【突進】することができそうだ。それに対して俺は相変わらず足が縺れて動けなかった。焦れば焦るほど足が思うように動かない。

 あっ、これ俺死んだな......。

 俺は死を覚悟した。


 ≪魔法を使いなさい!!≫

 

 神の声が俺の脳裏に響く。


 魔法?何のことだ?

 ≪いいから魔法を使って!≫


 いやいや、どうやって使うんだよ!?

 ≪スライムを見て『チャーム』って叫んで!早く!≫


 なんだそりゃ?魔法って詠唱とかがいるんじゃねぇのかよ。

 ......まぁ、いいや。どうせ何もしなかったら死ぬんだから騙されたと思ってやってやるよ!


 俺は身体を伸ばしているスライムを見て叫んだ。

「チャームッ!」

 瞬間、俺の身体からピンク色の光線が溢れ出し、スライムを貫いた。スライムの身体の伸びが止まった。


 ≪...もう大丈夫だよ≫

 神の言葉に俺はホッと息を洩らした。


 ......すげぇ!倒したぞっ!これが魔法ってやつなのか!?


 しかし、喜んだのもつかの間、俺が自分が放った魔法(?)に感動していると、スライムは何事も無かったかのように身体を伸ばすことを再開し始めた。


「ちょっ!?神っ!?倒せてませんけどっ!?」

 ≪あーうん。......大丈夫だよ≫

「全然大丈夫じゃねぇよっ!」


 って、まずい。スライムがとんでもないスピードで俺に近づいてくる。おそらく【突進】を使ったんだろう。

 どう動いても避けれそうにない。俺はきたる衝撃に備えて目をつむった。


 ぼすっ。

「うぎゃあああああぁあぁあぁ......あれ?痛くない」


 おかしい。確かに俺は木をも砕く威力のある突進を食らったはずなのに......。

 そこまで考えた俺は自分の胸元を見て絶句した。

 

 スライムが貼り付いていた。

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