出会い
少年は愛に飢えていた。
◇ ◇ ◇
少年の名前は宮城音流。小学生4年生、9歳。
運動が出来ない訳ではなく、勉強も出来ない訳ではない。顔もイケメンでは無いものの、不細工な訳でもない。
だが、彼は苛められた。
狙われた理由は
━━━彼が"捨て子"だったから。
初めは軽口を言われるとかそんな感じの些細な事だったと思う。そのため、彼自身もあまり気にしていなかった。すぐに飽きるだろうと思い、先生にも相談しなかった。
しかし、彼の思いとは裏腹に苛めは段々とエスカレートしていった。
軽口から暴言へ、暴言から暴力へと変わっていった。
毎日、人目のつかないところに呼び出されては当たり前のように暴力を振るわれた。
10人。
苛めっ子は10人を越えていた。
抵抗しようにも10人が相手じゃ話にならない。
死にたい。
彼がそう思うのに然程時間はかからなかった。
それから1ヶ月後、少年は自殺した。
親に愛されず、クラスメイトにも愛されなかった少年は、包丁を自分の首に刺して自ら命を絶った。
奇しくもその日は10歳の誕生日の前日だった。
◇ ◇ ◇
「......は?」
目を覚ました俺は思わず声を漏らした。
今日。俺は、確かに死んだ。
確認したわけではないが、100%死んだって言い切れる。
首に包丁を刺したのだ。
これで死んでなかったら、俺凄すぎるだろ。
━━━でも意識があるってことは......マジか。俺凄すぎたのか......。薄々気づいてはいたけど俺やっぱり凄かったんだな...。
「アハハハハ。お、面白いことを考えるねぇ。だけど残念、君は死んだよ?」
不意に甲高い声が響いた。
バッと俺は声がする方を振り向いた。
なんだこいつ。
振り向いた先にいたのは俺より小さい女の子だった。
真っ暗な部屋の中、俺と相対するようにその少女は立っていた。
「初対面の相手に向かって『なんだこいつ』は酷いなぁ。少し傷ついたよ」
うっせぇよ!
━━━って、俺、さっきから何も喋ってないよな?
ま、まさか、こいつ俺の心が読めるのか?
「正解!大当たりだよ」
少女は両手を上げて大袈裟に驚き、パチパチと拍手した。
何故だろう。何かムカつく...。
「━━━ていうか、ここはどこだよ?」
俺は1番気になってた質問をぶつけた。
「死と生の境目かな?」
「お前は誰だよ?」
「神様」
少女はぶっきらぼうに、だけどもハッキリと確かにそう言った。
うわぁ......
「うわぁ、痛い子だ。
この子痛い子だよ!中二真っ盛りだよ!」
「誰が中二真っ盛りだ!私は本物の神様だっ!」
神様を名乗る少女はジト目でこちらを見てくる。
俺は察した。
『これはめんどくさいパターンだわ。俺が認めるまで続くパターンだわぁ...』と
仕方ねぇ、適当に話を合わせるか。
「ハイハイそーだね、君は本物の神様だよ」
「......適当に合わせるって何だよ!全然信じてないだろ!」
「...あっ」
そうだった、コイツには俺の心が読めるんだった。
うへぇ...何か気味悪い奴だな。
「おいそこ!気味悪いはだいぶ傷ついたぞっ!私に謝れ!」
「あぁ。すまん。気味悪いじゃなくて気持ち悪いだった」
「素直に謝ればよろし......ん?余計に酷くなってるじゃないか!おい!謝れよ!」
ヤバイ。
コイツめんどくせぇ。モン○ンのゲ○ョス並みにめんどくせぇよ。
いや、下手したらコイツの方が心を読まれる分、ゲ○ョスよりめんどくさいかもしれん。
......仕方ないプランAを使うか。
「めんどくさいとか言うなし!てか、プランAってなんだよっ!
━━━まぁいい。実は君にお願いしたい事があるんだけど...」
「━━━で、ここどこなんだ?」
「無視すんなっ!
...まさか、プランAって無視のことかよっ!神様を無視するのかよっ!罰当たりだぞっ!天罰を降しちゃうぞっ!」
「━━━真っ暗すぎて何も見えないな。何でこんなに真っ暗なんだ?」
「嘘だから。天罰なんて降さないから......む、無視するのはもうやめろよっ!話聞いてよっ!」
「━━━どこかに灯りないかな。懐中電灯があればいいんだけど...」
「ぐすっ......。お、お願いだから、無視しないでええええええええええええええええええええええええええっ!」
少女は涙目で絶叫した。
「わかった!話聞くから!話聞いてあげるからっ!」
自称神様のくせに、なんてメンタルが弱いやつなんだ。無視しただけで泣くなんて...。今時の幼稚園児でも無視されただけじゃ泣かねぇぞ。
俺は呆れながらも必死に少女を慰めた。