森の月夜
月夜のこと。
猟師は山道でふと足をとめました。
――なにかに見られているような……。
見上げると、空にはまんまるな月。
猟をするのも忘れ、猟師はすっかり月に見とれてしまいました。
そこに……。
熊が通りかかりました。
おそろしい猟師に気づきます。
そっと通りすぎてから、おそるおそるふり返ってみました。
猟師は空を見上げています。
――なにを見てるんだろう?
見上げると、空にはまんまるな月。
熊は猟師のことなど忘れ、すっかり月に見とれてしまいました。
そこに……。
狐が通りかかりました。
おそろしい熊に気づきます。
そっと通りすぎてから、おそるおそるふり返ってみました。
熊は空を見上げています。
――なにを見てるんだろう?
見上げると、空にはまんまるな月。
狐は熊のことなど忘れ、すっかり月に見とれてしまいました。
そこに……。
兎が通りかかりました。
おそろしい狐に気づきます。
そっと通りすぎてから、おそるおそるふり返ってみました。
狐は空を見上げています。
――なにを見てるんだろう?
見上げると、空にはまんまるな月。
兎は狐のことなど忘れ、すっかり月に見とれてしまいました。
そこに……。
山道を下り始めた猟師が通りかかりました。
空を見上げている兎に気づきます。
――月を見てるんだな。
猟師は兎をおどろかせないよう、そっと通りすぎました。
月が地上を見ている夜のことでした。