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手紙
私は彼をくそまずい珈琲を出す店に
連れていった。私のお気に入りの場所だ。
店の店長は口の堅い人だし、店員も何も言わないのが
私は気に入っていたのだ。
私と彼が席に座ると店員は黙って珈琲をテーブルに置いて
そのまま奥の方へと戻っていった。
店長のおごりだそうだ。
「君は、どうして私をここに。」
彼はとても不思議そうだった。
私は珈琲を一口飲み一息おいて彼にいった。
「君が、嫌いだからだ。」
彼はそれを聞いてきょとんとしていたがまたあの
貼りつけた笑顔に戻るのだ。
違う、そうじゃないだろう。君はまだ茶番を続けるか。
私は、その言葉を珈琲と共に飲み込んだ。
私からではない、彼から言わせるのだ。
彼の心の中を。
「嫌い、かぁ」
彼は珈琲に写る自身を見てつぶやくように言った。
「あぁ、嫌いだ。」
私は絶えず彼の心の中を探っていた。
そして珈琲をまた口に運ぶ。
「もう、言われなれたし思われなれたよ。」
彼がどこか疲れ切った顔で笑った。
私は、その時彼の本当の姿を見た気がした。




