祖父との記憶
私はふと鞄に入れた祖父の手紙が
雨に濡れてないか心配になって
鞄を見た。
案の定、雨に打たれ少し濡れてしまっていた。
私は乾かそうと手紙を出てきた太陽にすかした。
初めて私は祖父の考えに気づいた。
祖父は今までの想いをこの紙に透かしとして
隠していたらしい。
薄らと映る文字は震えていた。
死んだことを聞かされた時に書いたものだろうか。
いや違う、この震えは感動の震えだ。
所々つぶれて見えずらい所があるが何となく
こうだろうなと思える。
不思議と読んでいるさなか目から涙が出た。
心の中にぐっと押し込んでくるような悲しみが
目から溢れ私の顔を濡らした。
あぁ、祖父は兄に対してこんな思いを募らせていたのか。
あの珈琲の話も、ごはんの話も、延々につまらない話も、
この想いを行動にしたのだった。
きっと、祖父はこの想いを一人で消化しようとした。
けれどできなかった。
だから誰も気づかないように思いを綴ったのだ。
私はそれに気づいた、気づけた、気づいてしまった。
祖父はこのことを薄らと気づいていたのではないだろうか。
私はこのめぐる思いを涙として流したのだ。
これで私は祖父を理解できた。
その中でこの悲しみを拭った。