正体
その少女は神社の縁側で眠っているようだった。見た目からしてこの神社の巫女とか、そういった人でもなさそうだし、このご時世に態々神社見物に来る観光客も、外国人でももういないというのに。
無理矢理にでも理由をつけるならば、きっと観光しにきて、ホテルの予約をし忘れた、できなかった、そのあたりだろう。私にはどうすることもできないし、1日ここで寝ていても死ぬことはない。このままジロジロ見てるのもどうかと思うし、今日のところは帰ろう。
そのまま振り返り、帰ろうとする
……っ!!?
な、何!?後ろから気配がする。あの女の子のではない、もっと恐ろしく、非常識なものだ。今まで何度もこういうものを感じたことはあるのに、今回はどうして?どうしてこんなに怖いの!?
足が震える……冷や汗をかく……身体が動かない……
……いや、私だけじゃない。あの子も危ないかもしれない。こんなのにビビって、誰かを置いてくなんて、宇佐見蓮子の名が廃る。振り向くんだ、振り向いてそに正体を暴くっ!!
え?
そこには、女の子がいた。さっきまで寝ていた、あの子だ。それも今目の前にいる。さっきの気配はこの子?明らかに人間のものではなかったはず。いくつもの心霊体験をしてきた私には分かる。
「ねぇ、貴方にも見えてるの?」
目の前のそれは、暗い声で言った。私は頭が回らない。声がでない。目の前に起きていることが何も、何も理解できない。
「ねぇ、貴方にも、見えているの?」
再び言う。理解らない、分からない、わからない、ワカラナイ……。ナニモカモガ……。
「アナタも、気をつけた方がいいわよ」
陽の光を浴び、目が覚めた私の最後の記憶はその言葉だった。