出逢い
月の魔力というものは、恐ろしく、人の心を魅了していた。
過去には、魔女が月から魔力を得たり、錬金術にも、満月時や、新月時にやらねば成功しないなど、ある意味特殊な人々から重要視されていた。そうでなくとも人々は、自然と夜空を見上げ、月を見る。
今では、月面旅行が計画されるほど、科学技術は進歩し、人は月に近づいた。
その裏、人の心は神仏から遠のいた。初詣もしなくなった。信仰はすべて、科学へと集まり、科学がこの世界を支配していた。
そんな世の中、人のいない、夜の神社に1人の少女が現れる。宇佐見蓮子は、1冊のノートを持っていた。ボロボロになったノート、たまたま実家の物置で見つけ、そこに書かれた時間、場所にやってきたのだ。
表紙の文字は掠れて読めなかったが、その時代では考えもしないような、つまりそこには非科学的な記述。もしそんな事があるならばと期待した蓮子は、すぐに東京の実家を立ち、目的地へ向かった。
その神社の名前は博麗神社と記されていたが、そんな神社は存在しないようだ。しかしその神社の写真が貼ってあり、蓮子にはそれだけあればすぐに場所が分かる。
生まれつきなのかも分からないが、蓮子は星を見ただけで時間が分かり、月を見ただけで場所を把握してしまう。無論、腕時計なりで時間は分かり、GPSを使えば自分がどこにいるかも容易に見つかる。ちょっとした特技としてしか認識していなかったが、稀なところで役に立ったのだ。
山奥にあり、誰もいない神社は廃れきっていた。所々木が崩れていて、よくも建っていられると言う感じである。その様子に蓮子は首を傾げた。
「博麗神社。写真が撮られた場所はここだけど、ノートの記述とは違う?」
ノートにはこちらでは誰か管理しているわけでもないのに、誰も来ないのに、埃一つも落ちていない綺麗な状態が保たれている、と書かれていた。
この現状を見るに、管理者がいないというのは嘘、もしくはノートの持ち主が出会わなかっただけだろう。
とりあえず蓮子は神社を一通り見回すことにした。賽銭箱……だったと思われるそれには、もちろん1銭も入っていない。中に入ってみようと思っても扉は開かず。
これはあんまし何かが見つかるわけでもなさそうだと思いつつ、神社の後方へ回ると、そこには日本の古風建築には相応しくない、金髪の少女がいた。