にっ!――「俺の日常」
「お、おにちゃん!!」
入学早々一年が二年のクラス来たことによりクラス中がざわめきだす。
まあこれだけの美貌を持ち合わせているんだ無理もなかろう。その上頭もいいしな。
そして、クラス中のやつら。いや、もっと多くの人からこう呼ばれる『妹はできがいいのに』と。
しかし、そんなことを言っているやつの目は節穴だと目の前でいってやりたい。
俺の妹は――
『俺のことを溺愛しすぎている。』
コミュ症、友達ゼロ、俺を除く家族との会話も最低限で俺の幼馴染の恵とも会話が成り立たない。
決して饒舌ではないが俺となら会話できるレベルだ。
コミュニケーション能力だけなら勝っている自身はある。
「よう。言美どうしたんだ? 告白か?」
「それとも人生相談か?」
クラス中は冷ややかな目でこちらを直視してくる。特に男子の目線はなかなか鋭い。こいつらは言美が俺の彼女とでも思っているのだろうか。残念ながら妹だ。
「違うよ。一緒に帰ろうかなって……」
更に男子は鋭い視線を向けてくる。ジャックナイフの雨……いや、日本刀の雨だ。女子からは俺が自意識過剰でないければ興味心からか爛々と目を光らしている。
「いいよ。いま準備するから待ってて」
「あと、恵も一緒だがいいよな?」
「う……うん。」
恵と言美は古くからの知人だ。知人と言っても俺がいなくなったら一生この二人が会うことはなくなるだろう。
そして恵は俺と家族以外に唯一挨拶ができる貴重な存在だ。リハビリの治療薬みたいな。
「こんにちわっ言美ちゃん」
「え、あ、うん……こんにちわ……」
何百回このやり取りをみてきたことだろうか。恵の挨拶のほうが変化があるが言美は毎回このワンパターンの返しだ。よくこんなセリフを毎回繰り返せるものだ。
やはり言美は器用なやつだ。
「ただいまー」
帰宅道中は特にこれといったものはなかった。恵としゃべり言美は俺にピタリとくっついてくる。いつもの風景。本当は三人で話したいが俺とワンツーマンでないと言美は口を開かない。
「おかえりー。今日は早いわね。また言美、将直とラブラブしちゃって~」
俺たち、兄妹に全く笑えない冗談をいっているのは、俺達の母親だ。
妹があまりに俺にしか心を開いていないので親父も母親も諦めてはいないが半分以上は俺任せになっている。
「そ、そうかな…… お兄ちゃん?」
そんなことは知らない。しかし、改めて意識してみればはたから見れば本当に高校生カップルに見えているのかもしれない。
「ノーコメントで。じゃあ、俺は部屋に戻るぞ。」
「お兄ちゃん、ちょっとまって!!」
「何だいきなり大声出して? ついに壊れたか?」
言美は俺に小走りで近寄り俺の耳に口を近づいてくる。
『きょ、今日一緒にねてくれませんか……』
なんなんだこの急展開は。なんなんだこの敬語は。
まあ、いつものことなんだけどね。
前は風呂とか散歩とか駆け落ちとか。一つは嘘だけど。
これが俺の「日常」だ