8話 本と家族
そろそろ太陽がちょうど真上に昇るころ。
私は外に出ると入口から数メートル先にまたあの樹の実が落ちていた。
少し歩いてそれを手に取ってはるか頭上を覆う巨大な樹を見る。
「ほんとうにありがとう!」
明るい声で声をかけてその実を食べた。
さて、昼ご飯も食べたしいよいよこの部屋にある書物から情報を得る時がやってきた。
少し休んだおかげで魔力を失ったことによる精神的な疲労も和らいできている。
「さーてと!どれから読もうかなー。」
個人的にはぜひともさっき見つけた『台所の最強本!』を読みたいのだがさすがに優先順位的に先にこれを読むわけにはいかない。
そう思い本棚で適当な情報が得られそうな本を探していると一人用の机の上に一冊の本がぽつりと置いてあるのに目が付いた。
なんとなくその本を覗き込むとそこだけ掃除するのを忘れていたのか埃が積もっていた。
しかたなく掃除ロッカーから雑巾を取り出し軽く本の表紙をなでる。
体から魔力が抜けていく感覚はあるもののほんの少しだったので疲れは全くない。
埃が取れた本の表紙には…
『あたらしく生まれてきた君へ』
との題名が書いてあった。
その本を外に持ち出し、樹に背中を預ける形にして座る。
本自体はそんなに分厚くなく日記ぐらいといったところか。
その題名の名前のこともあって私は恐る恐る表紙を開けてページをめくり、読み始めた…
そこに私の疑問に対する答えがあると思いながら…
…………………..
…………………
………………
……………
…………
…….
``きみがこの本を読んでいるということは、私はもうこの世にはいないのだろう。
こんな本でしかわたしや、君のことを伝えられないことをどうか許してほしい。
君は私が一生見ることがない妹か弟なのだろう。
そんなことを言うのも私が君の兄であり、同じ世界樹という母から生まれた家族だからだ。
君もきっと世界樹から伸びた実から生まれたはずだ。
外の世界で私たちはハイエルフとよばれている。
外の連中はエルフの上位種とかなんとか言っていたが私にもよくわからない。
それと、ハイエルフは世界にいつも一人しか存在できない。
私は2人目のハイエルフだから君は3代目ということになる。
一人のハイエルフが死ねば、その何十年か何百年後ぐらいに世界樹からまたハイエルフが生まれる。
なぜそうなっているのかは私にもわからなかった。
でも特に支障はないから気にしなくていいと思う。
君の好きなように生きなさい。
もし君が兄に名前をつけられるのを望むなら男の子ならカイル女の子ならソフィアと名乗ってほしい。
不甲斐ない兄のちいさなプレゼントだ。
わたしの大切な家族。``
そのあとには軽くこの世界の説明と、これからのことについて書いてあった。
ここまで読んで私はなぜか涙を流していた。
もしかしたら私は自分が思っていた以上に家族という言葉に飢えていたのかもしれない。
泣いていいんだよとこの本に言われている気がなんとなくして。
気がつくと私は思いっきり本を抱えて泣いていた。
それまでたまっていた寂しさを流すように…….
手紙の部分は自分でもあんまり納得してないのでまた書き直すかもしれません。
最近主人公が泣いてばっかな気がする....
誤字、読みにくい表現等ありましたら知らせていただければ幸いです。
評価、感想等もお待ちしております。(でも作者のメンタルは豆腐です。)