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2話 樹の実



あー…吐いた



吐いてしまった。



よく考えたらあんなに長い間あの水のようななにかに入っていたんだから飲んでいて当然か…


苦しくなかったから全くきづかなかった。





改めて(というか吐いていてずっと下向いてた)新しい生の最初の景色を見てみる。


近くにある嘔吐物はスルーする。


うん。あんなものはなかったんだ。


進んで必要以上に黒歴史は見なくていい。





周りを見ると…森…森…森…


そして後ろには見上げると首が痛くなるほど高い超巨大な樹がそびえ立っていた。


その巨大な樹の影のせいか冷たい風が吹き抜ける…..


「さ、さむっ…ふ、服は…」




「え、服…」




吐いたりいろいろあったせいかここになって服を着ていないことにきづく。





「つッ…………………………………….。」







とりあえずなにか体を覆うものを探す。


前世も含めてこれほど早く首を動かして探したのは初めてだったに違いない。



しかしこんな周りに森しかないこんな場所に服なんていう都合の良い文明の産物なんて落ちているわけがなく…


目に入ったのは自分が先ほど生まれてきた実のようなもの


どうやら中に入っていた水のようなものが抜けてへにゃりとしぼんでいる。


それを素早く手に取り体に巻きつけるが素肌が当たるところを冷たい風が吹き抜けていく。


仕方なく自分が入っていた実の中に入る。


やはり水は抜けきっているもののまだ湿っていたが背に腹は代えられないと思い切って入る。


実から頭だけ出す格好になる。




着るもの(?)をきて一応の安心をしたのかおなかから食べ物を求める音が鳴り響いた。


先ほどのショックでなにも食べ物を探す気にはなれなかった。


ましてやこの実は、あの巨大な樹にくっついているのだ。せいぜい動き回れて10メートルくらいだろう。


そう思っていたとき


「痛っっ」


一つの手のひらサイズの赤い実が頭に当たって落ちてきた。


「この大きな樹から落ちてきたのかな..」


「これくれるの?」


樹がざわざわと揺れる


なんとなく話しかけただけなのだが``私``にはその樹が大きな声で「いいよー」と言っている気がした。


「まさか、そんなわけないか…どうしちゃったんだろ私。」


「いただきます。…」


落ちた実を取って口に運ぶ。


普通ならこんな見たこともない形をした実を食べるべきではないのかもしれないが、``私``はなぜか大丈夫だと思った。


どれぐらいぶりだろう。何かを食べるのがこんなにもすばらしいことだなんて。


「つッ…………………………………。」


なぜだろう…


なぜこんなにも涙がでてくるのだろうか。


そのあと残りの実を夢中になって食べた。








食べ終わると、これまでの疲れと長い間実の中にいて体力がないことが当たったのだろう。


肩から力が抜け、巨大な樹に背中を預けるようにして眠った。








とりあえずあまりにもショックだった時とあまりにも感動しているときは声も出なくなるのだと思いながら….









寝ているとき私が寝ているところだけなぜか暖かかったことには気づかなかった……。






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