……あのね?
あぁ…、何度この光景を目撃すればいいのかな。
もう止めようって、何度も何度も心の中で思った。
なのに、貴方の笑顔を見てしまうと“もう少しだけ“と弱い心が見ない振りをしてしまう。
「…好きだから…もう少しだけ。」
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高校二年の5月と言う中途半端な時期に転入生がやってきた。
同じ学年だけど、クラスも違うしその時は“珍しいな“ぐらいしか思わなかった。
友達が言うには乙女ゲームに出てきそうな子、らしい。
転入してきてまだ1ヶ月と少しなのに生徒会役員全員と面識があり仲が良いらしい。
後はとにかく乙女ゲームみたいなイベントを起こすのが多い、らしい。(全部友人談)
あ、私には同じ学年に彼氏がいる。
まぁ、だからどうしたって感じだけども、その彼が実は生徒会役員なのだ。
最近は生徒会の仕事が忙しいと言っていてなかなか会えていなかった。
“生徒会の仕事なら仕方ない、無理しないで“と笑顔でいい子ちゃんみたいな事を言った私。
我が儘なんて言って嫌われたくない、少し我慢すればいいんだ、なんて思っていたあの時の自分を凄い後悔した。
少しずつ少しずつ、彼氏の表情や態度、一緒にいる時間が減っていき、変わっていってたのに私は気付くのを無意識に恐れて知らない振り、見ない振りをしてしまった。
あの時、素直に少しでも会いたいと言えばよかった?
もっと、貴方に気持ちを言えばよかったの…?
そうすれば、貴方は…
まだ私に笑顔を向けてくれていましたか?
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「今度一緒に映画でも行こうぜ?」
「わぁ!行きたい!私ね観たい映画あるんだ~」
「じゃあ、今週の日曜日にでも行くか 」
「うん!楽しみだなぁ♪」
もう貴方には近くにいる私の姿も目に映らない。
少し前までは当たり前のように隣にあった笑顔はもう転入生のものなんだ。
転入生は可愛い、明るい、優しいとどこかのヒロインみたいな子。
私は何処にでもいる平凡な子。
全然素直にもなれない可愛いことも言えないそんな面倒くさい私に、飽きてしまったのかな。
もう、貴方が私に向けてくれた笑顔を思い出せない。
なのに貴方は別れの言葉を告げてはくれない。
そんなちっぽけな糸に縋る私はなんと、…惨めなのだろう。
「お前と話してると何か楽しい気持ちになれるんだよなー」
「私もね、一緒にいると嬉しくて笑顔になっちゃうんだよ!」
「じゃあ、ずっと一緒に………」
そっか、別れの言葉を告げる私の存在さえ貴方の中には残っていないんだね。
そんな事も分からなかったなんて。
それなら、私から告げなければ。
どんなに私の気持ちは違っても、告げなければいけない。
私が前に進む為にも…
『ねぇ__。』
「……あ。」
『もう、終わりだね。……私ね、素直に気持ちを言えてなかったけどちゃんと好きだったよ。ずっと、どうしようもないほど、好きだった。』
「……っ」
『ばいばい。』
あーあ、これで本当に終わっちゃった。
もう、当分は恋愛はしたくないなー。
「っ…俺は!今でも、好きだ!」
『………え』
え、な…んて?聞き間違い?
幻聴かな?それとも私の夢?
「……お前の気持ちに自信が持てなかった。お前は素直じゃないし、滅多に気持ちを言わないから…だから…、他の女子と仲良くしたら、嫉妬…してくれると思って…」
あぁ、なんだ。
彼も私と一緒だったんだ、不安な気持ちは私だけじゃなかったんだ。
最初から言葉にすればよかったんだね。
我慢なんてしないで、言えばよかったんだ。
“好きなんだよ“って素直に………
『…あのね?______………』
-end-
まさか読んでくださった読者様がいようとは!
こんなよくわからない作品を読んで下さりありがとうございます!
目に留めて下さり本当に嬉しいです。゜(゜´Д`゜)゜。
作者はメンタルが泡のごとく弱いので、厳しいお声はオブラート百枚位に包んで下さると嬉しいです。