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「・・・・・。」
「来ましたわね。今日はどちらが相手になって下さるのかしら?」
会場に着いて直ぐサーシャが声をかけてきた。
「とりあえずは僕だよ。サーシャとは久しぶりの全力勝負だね」
それに僕は笑顔で返す。
「確かに久しぶりですわね……。でも、今のあなたでは私には勝てませんわよ? さっさともう一人を出したらどうです」
「連れない事いわないでよ。僕と君の仲だろ?それに僕には作戦がある」
「作戦? それは楽しみですわね……。もっとも、おおかたの予想はついていますが……ね?」
「こわいなぁ。お見通しってやつ?」
「そんなの、はったりよ!」
「自信もちぃや。」
「がん……ばれ。」
遅れて三人がやってきた。
「あら? 誰かと思えばこの間の負け犬さんではありませんか……。弱い犬ほどよく吠えますのね」
「私の兄がたてた作戦なんだから。そんな簡単に見破れるわけがないのよ」
「たしかになぁ」
「ハッタ……リ」
「まぁ、僕もそう簡単に見破れるわけないとは思ってるけど……。相手がサーシャだからなぁ。少し心配だよ」
「………………」
サーシャが難しい顔でこっちを見る。
「じゃあそろそろ始めようか?サキの弔い合戦を」
「いいえ。あなたが私の物になる決定戦ですわ」
「じゃあいくよ?」
「えぇ」
「「フィールド展開」」
『デプロイメントオブフィールド、バージョンスクール』
僕とサーシャの言葉に従いフィールド発生装置から学校を包み込む光が発生する。
その光がおさまるとサキの時と同様に学校全体をバリアのような半円が包んでいた。
『コンプリート、ファーストジョブセレクト』
「ヒーロー」
「マナマスター」
僕とサーシャがたがいにジョブを選択する。
「「装備」」
瞬間僕とサーシャを光が包む。
光がおさまると僕はヒーローに、サーシャはマナマスターになっていた。
「やはりヒーローで来ましたわね」
「当然。君のクロスカウンターを防ぐにはヒーローしかないからね……。じゃあ早速いくよ? ヒーロー技発動! 主人公補正!」
僕はヒーローの技を発動した。
その技により僕の体を透明なベールが包む。
「知ってると思うけど、これはヒーローの基礎の技。ただし、効果時間は最大になってる。これでヒーローの間ダメージによる敗北は無くなった。」
そう。
この主人公補正という技は「点数に応じた時間だけダメージによる敗北、つまり勝利条件の1と2では負けなくなる」そして「効果時間は点数の十分の一(分)」つまり最大で十分。すなわち、ジョブチェンジするまでの十分間ダメージによる敗北が無くなるのだ。
つまり
「これで君のクロスカウンターは封じられた。あとはこっちからダメージをあたえるだけ!」
これが僕達の作戦だった。
・・・
・・
・
勝負する事が決まった夜みんなに話した作戦。
それはヒーローの技によりクロスカウンターを防ぐというものだった。
これによりダメージを気にする事なく十分間全力で戦える。ようするに短期決戦をしかけようというものだ。
サーシャのクロスカウンターはあくまでダメージを返すアビリティ。
ダメージで負けないなら発動を気にせず発動出来ないくらいの連続攻撃を仕掛ければいい。
「でもやなぁ……。そないなごり押しで何とかなるんかいな?」
たしかにユーキの言う通りだ。
だけど、これ以外にいい案があるわけじゃない。
それに
「大丈夫。いざとなったら奥の手を使うから」
「「「奥の手?」」」
「そう。奥の手。それさえ使えば多分何とかなる」
そう。
奥の手を使えばほぼ百パーセント勝てる。
「だから、僕を信じて」
「わかった」
「わかったわ」
「わか……った」
これがあの時話した内容だ。
だからこの勝負、最初から仕掛ける!!!!しかし
「たしかにそれで私のアビリティは封じられました……。ですが」
「!?!?!?」
瞬間サーシャが遠距離から攻撃を仕掛けてくる。
「その作戦には幾つか穴がありますわよ?」
かろうじてかわす僕。そこに
「まず一つ目。あなたの属性が「基」である事。私の「魔」とは相性が悪いですわ」
そう言いながら連続で攻撃してくるサーシャ。
「こうして遠距離から攻撃していればごり押しもできませんわよね?」
「そうでもないよ。ダメージで負けないんだからこうやって!」
瞬間僕は彼女に向かって走り出し当たる攻撃をものともせずに突っ込む。
「攻撃を無視して近付けばいい」
そしてサーシャに攻撃するが、瞬間
「クロスカウンター」
倍くらいの威力の攻撃がかえってきた。そしてその隙にサーシャが間合いをとる。
「二つ目は連続攻撃でなければクロスカウンターが発動し、あなたの攻撃を無効にしてしまうという事。そして」
再び連続攻撃を仕掛けてくるサーシャ。
「これでふりだしですわ。あなたは攻撃できない。」
「クッ!」
再び僕も突っ込む。しかし
「クロスカウンター。」
簡単に弾き返されてしまう。
「三つ目。その技の弱点であるヒーローの最中しか効果が得られないという所ですわ。そして四つ目。負けないというだけでダメージは通るという所ですわ。なので」
『ライフゼロ確認。主人公補正が終了しだいサーシャの勝ちとなります』
審判役のロボットから警告が発せられる。
「このようにライフはゼロになってしまう。これで私の勝ちは決まったも同然ですわね。あとは逃げるなり隠れるなりして時間を待つだけですもの……」
「そうはさせない!」
僕はもう一度突っ込み彼女から離されないように間合いを浅くする。
「ですが、それでは面白くありませんし……。このまま時間までお相手して差し上げますわ」
しかし再びサーシャが攻撃を仕掛けてくる。
クソッこのままじゃ……勝てない?
僕は予想していたとはいえサーシャのアビリティの強さに恐怖していた。
でも
「仕方ない。奥の手を使おうか……」
その声はどちらの声だったか……。
「!?!?!?」
僕の呟きにサーシャが驚く。
(使うのか? 俺。あれはお前の負担が大きいぞ?)
(ダメージがあろうが無かろうが、僕がここにいるために必要なら使うさ。)
(わかった。俺の体を使わせて貰う。)
(頼むぜ相棒。)
(任せろ相棒。)
「バイオレーション」
その言葉をはっした瞬間僕の周りに十個の光球が現れまわりだした。
「コール」
続いてはっした言葉に従うように僕の前で円になり止まる光球。
「ヒーロー&ハイスペッカー」
僕はその中から二つを選び両手で掴む。そしてそのまま両手を前で組み
「装備」
言葉と共に手の中で二つの光球を一つにした。
次の瞬間僕の体を光が包み一瞬で弾けとぶ。
光がおさまると僕の姿が変わっていた。
「さぁ!俺の強さに惚れな!」
そしてポーズを決め彼女にいいはなつ。
これで完全にスイッチが入り、俺は俺に変わっていた。




