一匹目:ハム
「はぁ……」
と、溜め息をついた。
今日から僕の一人暮らしの楽しい日々の始まりのはずなのに……。
4月の肌寒い夕方、僕はそう呟く。
え?なぜ憂鬱かって?
そりゃあ憂鬱にもなりますよ。
今日は入学式でした、新しい人たち……あったこともない人とであうドキドキの入学式……なのに……。
僕は自分の名前のせいであだ名をつけられた……。
そう、僕の名は日清公。
そして皆、僕のことをこう呼ぶんだ……。
日清ハムと!!!!!
そうです、僕は人間です。ええ、人間ですとも。
ですが皆こう呼ぶのです……日清ハムと!!!!!(二回目)
僕はもうそれは怒りましたよ、僕は公だと……。
「ええ、僕はハムです!!」
噛みましたよ、噛みましたとも……。
公と、公と言いたかった……。
ですが今日から僕のあだ名はハムなのです。
なんと言うことでしょう、人間の人生とはたった一言で変わってしまうのです。
お母さん、お母さんが買ってきたプリンを勝手に食べたことは謝るからどうか僕のあだ名をなかったことにしてください、お願いします。
あと、なんで公にしたんですか。
そんなことを思っている間に家についてしまった。
いや、そこはもちろん今日から自宅になるアパートです。
そんなミスしません。
ふう、にしてもボロいなぁ……。
うん、ボロい。
いや、我が家ですが、我が家ですけども、もう階段が腐り落ちそうです。
大丈夫なんですかね。
まあ、一度みましたけどね!!
見に来ましたけど!!
うーん、二度目とはいい……うーん、なかなかのボロボロ。
まあいいか、早く家に入ろう。
何かこのままだとまた良くないことが起こりそう……。
そう、ここで僕は階段に足を踏み入れようとした……。
踏み入れる、踏み入れてしまった。
そしてここで………。
「うわああぁあああぁああぁああ!?」
足が階段にはまる。
それはもうずぼっと。
お母さん、僕もうやっていけないよ……。