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第7話:決闘の約束は、国境の火に消えて

 西側諸国連盟の威信をかけた授与式は、

 荘厳極まりない空気の中で執り行われていた。


 会場となる大講堂の天井には巨大な連盟旗が静かに式典を見守っている。


 檀上には、帝国の将軍、聖教国の司教、そして連合王国の特使といった、

 各国の重鎮たちが一堂に会し、会場を埋め尽くす貴族たちの

 宝石が放つ輝きが、式の重みをより一層引き立てていた。


「――西側諸国連盟は、ここにアステリア皇子、レオ皇子、ジークヴァルト皇子の三名を称える。その英断と武勇、未来へ語り継がれるべき功績である」


 重厚なファンファーレが鳴り響く中、

 私たちは檀上の中央に並び立っていた。


(……なんで私が真ん中なのよ。気まずい、胃が痛い、今すぐマカロンの元に帰りたい……)


 喝采の拍手の中、左隣のジークヴァルトが、

 微塵も表情を動かさず、吐き捨てるような小声で言った。


「……実に不愉快だ。アステリア、貴様のような『無能な石ころ』が、なぜ私と同じ高さの壇上に並んでいる? 貴様はただ、運良く悪魔の足元に転がっただけの障害物だ。自惚れるなよ、凡愚が」


 ジークは正面を見据えたまま、冷徹に言い放つ。

 彼は授与式の最中でさえ、私を「人間」として数えてすらいないようだった。


 彼は親友となったレオにだけ、わずかに視線を向けた。


「レオ。西側連盟も焼きが回ったようだな。このような『お飾り』を中央に据えねば、民衆の支持も得られぬとは。高貴な血を、泥で薄めるような真似だ」


「違いねえ。だがジーク、監視対象としては、この情けないツラが真ん中にあった方が好都合だろう?」


 二人の天才にとって、私は「利用価値のある駒」に過ぎない。

 しかし、会場を埋め尽くす女生徒たちの囁きは、

 ジークヴァルトの選民意識を容赦なく逆なでする。


「……見て、ジーク様もレオ様も、アステリア様を引き立てる『背景』としてようやく板についてきたわね」


 その言葉が聞こえた瞬間、ジークヴァルトの眉間がピキリと鳴った。


       ***


 式典の後、中庭のテラス。

 ジークは優雅に紅茶を啜りながら、私をゴミのように見据える。


「アステリア。お前の型稽古だけは認めてやる。……だが、実戦は別だ。私のような天才に依存して生きるのが、貴様の唯一の生存戦略だと弁えなさい」


「ええ……。ジーク君のような天才には、到底及びませんよぉ」

(嘘じゃないわ。魔法士相手は、現代格闘技の範疇を超えてるもの!)


「ふん。わかればよろしい。……それより、あの『キサラギ』についてだが。あれこそは、私ですら一目置かざるを得ない、至高の存在だ。アステリア、貴様のような、ただ立っているだけで隙だらけの男とは、魂の格が違う」


「……僕は、あんなにも気高く、美しい戦い方をする者を他に知らない」


 レオがふと、遠い目をして熱っぽく語りだす。


「いつか、必ずもう一度会って、この想いを伝えたいんだ」


「な……」


 目の前でレオが語るのは、紛れもなく「私」への告白だった。


 前世の十五年間、男の子から「好き」なんて言われたことは一度もなかった。

 親友のあっちゃんとアイドルを追いかけ、身近な男といえば鬼軍曹の田中先生。


 もし前世の「あおい」としてこの言葉を聞いていたら、

 間違いなく目の前がクラクラして卒倒していただろう。


「……~~っ!」


 顔が、耳の先まで一気に熱くなるのがわかった。


「……おい、アステリア。なぜ顔を赤くしている?キサラギ様の名を、貴様のような凡愚が耳にするだけで不敬だと言っているのだ!」


「えっ!? い、いや、あの、暑いかなって!」


 いたたまれなくなった私は、話題を変えようと必死にジークへ振った。


「そ、それよりジーク君は、どんな女性が理想なんですか?」


「決まっている。私という天上の存在を理解し、すべてを包み込み、そしてこの世界で唯一私を導ける……そう、私の母上のような完成された女性だ。貴様には、想像もつかない高みでしょうがね」

(出た、尊大マザコン!)


 私たちがそんな「恋バナ?」をしていた、その時。


 廊下がにわかに騒がしくなり、法国の第2聖女マリアが現れた。

 ジークヴァルトの尊大さが、一瞬で崩れ去る。


「……なっ!? ああ、なんて慈愛に満ちた眼差しだ。母上を彷彿とさせる輝き……。ふむ、マリア殿。貴女ならば、私の隣に立つことを許可しましょう」


 だが、マリアはジークを石ころのように無視し、

 一直線にアステリアの手を握りしめた。


「……見つけました。アステリア様、一目見た時からお慕いしております!」


「「「…………はぁ!?」」」


「アステリア……。私という高貴な存在を差し置いて、神聖なるマリア様をたぶらかしたのか……!? この女ったらしの悪魔め! 私のプライドにかけて、お前のその醜いメッキを剥ぎ取ってやる!」


 ジークが震える手で白手袋を私の足元へ叩きつけた。


「決闘だ、アステリア皇子! 私の許可なく幸せになることは、万死に値すると知りなさい!」


(なんでー!? 私、突然告白されただけじゃん!?)


 その阿鼻叫喚の最中、運命の時計が鳴り響く。


 ――ゴォォォォン……。


 空気を震わせる不吉な「弔鐘」。


「……緊急報告! 東の国境が突破されました!」

最後まで読んでくださって、ありがとうございます。

長編ファンタジーも書いてます。


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