表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/20

第16話:死角は間合いの内側に。なぎなたVSレイピア

「……その武器はなんだ? 魔界でも見たことがないぞ」


 デーモンロード――ヨーダ先生は、眼前に現れた美しき少女剣士と、

 その手に握られた奇妙な得物を凝視し、戦慄を帯びた声を漏らした。


「それに、その姿。……お前がキサラギだというのか? では、あのユリアは一体……!?」


 彼が「キサラギ」を封じるために、大真面目に王都中のほうきを排除させた根源的な恐怖。


 その正体が、目の前の神童王子の「変身した姿」である事実に、魔国代行としての理性が悲鳴を上げる。


 しかし、彼は即座に口角を歪め、昏い歓喜を瞳に宿した。


「あなたが……。ふふ、それなら話が早い。ここで散っていただきましょう」


 あおいは静かに、しかし凛とした声で応えた。


「私が、如月あおいです。……先生、お待たせしましたね」


「舐めるなよ、小娘がッ!」


 混乱を殺意で塗りつぶし、ヨーダ先生のレイピアが再び閃く。

 一打に十の残像を込めた神速の刺突。


 しかし、あおいは半身に構えたなぎなたの柄を滑らせ、円を描くような最小限の軌道ですべてを弾き飛ばした。


 金属音が重なり合い、白銀の火花が夜の闇を鮮烈に染め上げる。


「な……!? レイピアの速度に、その長尺で追いつくだと!?」


「遠心力を利用すれば、先端の速度はあなたの腕の動きを超えます。……次は、こちらの番ですよ」


 その頃、階下の中庭では、一人の「王女」が周囲を震撼させていた。


「ジーク様に……指一本触れさせませんわッ!!」


 ユリアだった。


 負傷したジークヴァルトを背後に庇い、手にした折れた棒切れ一本で、襲い来る魔族の精鋭たちを次々と叩き伏せていた。


 最短距離で急所を打つ刺突、無駄のない足捌き。

 ジークを守るという一念が、彼女の内に眠る本能を呼び覚ましていた。


「な、なんだあの王女は……! き、キサラギめーーーっ! 化け物か!?」


 魔族たちが絶望的な悲鳴を上げる。

 だが、その言葉を聞いたユリアは、眉を吊り上げて凛然と言い放った。


「失礼ですわね! 私はキサラギなんて恐ろしい名前ではありませんわ! 私はユリア、ただの王女ですわ!」


「「「えええええええええっ!?!?(敵味方総ツッコミ)」」」


 その光景を横で見ていたレオは、

 激しい戦いの中で、不思議な安堵を覚えていた。


(……ああ、よかった。やっぱり、ユリアはキサラギじゃなかったんだ)


 レオにとって「キサラギ」とは、

 戦火を呼ぶ神話の怪物のようなイメージだ。


 だが同時に、どことなく神秘的で、時折見せる表情が胸をときめかせる。


 もしジークに片思い中のユリアがキサラギなら、と考えるとレオは複雑な思いで夜も眠れなかったのだ。


 そんな矢先、「私はただの王女」という叫びを耳にし、彼はようやく彼女を、自分の手の届く「ユリア」として信じ直すことができた。


 だが、安堵したのも束の間。ユリアの動きがふと止まる。


 戦いの中、極限まで研ぎ澄まされた彼女の「感」が、旧校舎の最上階から放たれる凄まじい気配を捉えた。


 白銀の光と共に溢れ出す、懐かしくも恐ろしい、けれど何よりも恋焦がれた「凛とした風」。


「あおい……先輩……?」


 無意識にこぼれたその名を口にすると、自然と涙が流れた。


 ユリアは棒切れを強く握りしめ、吸い寄せられるように光の源へと走り出した。


 特別講師室では、戦いが最終局面を迎えていた。


 ヨーダ先生は身体強化を最大まで引き上げ、残像を残しながらあおいの死角へと潜り込んだ。


「これで終わりだ、如月あおい!」


 だが、あおいは見向きもせず、なぎなたを背後へ滑らせ、石突きで先生の鳩尾を正確に貫いた。


「ぐはっ……!?」


「死角は、間合いの内側にしか存在しませんよ」


 あおいは流麗な動作でなぎなたを振り抜き、先生の持つレイピアを弾き飛ばした。


 丸腰となったデーモンロードの喉元に、あおいの刃がぴたりと止まる。


「……チェックメイトですね、先生」


 その時だった。


「せんぱああああああああああい!!」


 扉が勢いよく開き、涙で顔をぐちゃぐちゃにしたユリアが飛び込んできた。


 彼女は変身したあおいの姿を見るなり、全力でその腰にしがみつく。


「あおい先輩! 私です、かをるです! 先輩ーー!」

最後まで読んでくださって、ありがとうございます。

長編ファンタジーも書いてます。


もし「面白いかも」と思ってくださったら、

下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援いただけると、

作者のモチベーションがアップして執筆速度倍増します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ