最後まで一緒だ
「んぅ……。」
目が覚める、朝が来た、隣では悠治がまだすやすやと寝息を立てて寝てて、俺は夢で見た事を思い返す。
浩介は、俺の中で生きている、俺だけじゃない、悠治の中、良太、園枝さん、比嘉さん、じいちゃん、八重子ちゃん、守君、沢山の人の中で、今も。
だから、寂しいけど、泣かないよ。
「おはよ、悠にぃ。」
「おはよう悠治、朝飯パンでいいか?」
「うん、ありがと。」
コーヒーを入れて、リビングでちょっとまったりしてると、悠治が起きてきた、パンをトースターにいれて、こんがりするまでちょっと待ち時間だ。
「ねぇ悠にぃ、昨日の話なんだけど……。」
「養子縁組の事か?」
「うん……。ほんとに、良いの?」
「あぁ。俺は本気だよ?」
悠治は、それを聞いて嬉しそうににっこり笑う、浩介によく似てる、笑うとこの兄弟は本当によく似てるんだなって思わされる。
「ほら、パン焼けたぞ?」
「うん、ありがと。」
チーンってトースターの焼ける音がして、この話は一旦お終い。
「そうだ、守君と電話したんだよ。悠治、気を使ってくれてたんだな。」
「守先輩と?そっか。だから、昨日連絡くれたんだ、先輩。」
「先輩だったのか?」
「だって、僕達同じ高校だったんだよ?部活だって浩にぃと僕は野球部だったし、守先輩も一緒に野球やってたから。」
そういえば、良太が守君は野球部だって言ってたっけ、皆が同じ高校だったのはちょっと驚いたけど、それもあながち不思議な話でもないのかもしれない、と思う。
「悠にぃ、朝ごはんそれだけで足りるの?」
「うん、朝はあんまり食べない生活して多っぽくてな、ご飯あんまり食べる気にならないんだよ。」
トースト二枚で済ませる俺と、まだ食べたりないってパンを焼く悠治、俺のほうがでぶっちょだから、もっと食べそうなのに、って感じだろうな。
「まあ、コーヒーに砂糖三杯も入れてるから、甘党ではあるんだろうけどな。太ってる原因、多分これだ。」
「昔から甘いの大好きだもんね、悠にぃ。」
温くなったコーヒーを啜りながら、俺は笑う、入院してる時に検査とかしたけど、別段異常はなかったみたいだし、まあまだ平気なんだろう。
「この後どうするの?」
「遺品整理、しようと思う。」
「わかった。あ、そうだ。守先輩、今日休みだってさ。悠介に会わせろ!ってライン来てた。」
「じゃあ、それは夜だな。」
守君からの連絡は俺のほうには来てなかったけど、多分それは気を使ったからだと思う、夜ご飯でも一緒に食べながら話が出来たらな、って思いながら、とりあえずは今日は遺品整理だ。
「食べ終わったら始めようか。」
「うん、すぐ食べる。」
そういって、悠治はトーストを口の中に詰め込んで、コーヒーで流し込む、そんな慌てなくてもいいのに、って俺は笑いながらそれを眺めてた。
「浩にぃ、部屋綺麗にしてたんだね。」
「そうだな。」
朝ご飯の片づけを終えて、俺達は浩介の部屋にいた、ちょっと掃除してない期間があったから、埃っぽかったけど、部屋自体は綺麗に整えられてた。
パソコンデスクにワードローブ、ベッドに後は部屋の備え付けのクローゼットに本棚があるくらいだ、俺の部屋が本棚とか資料とかでごっちゃごちゃなのを差し引いても、綺麗に使ってたんだなって感じだ。
「本棚、悠にぃの作品おいてあるね。サイン入りだよ?」
「わざわざサインしてたのか、俺は……。」
まずは手っ取り早い本棚とクローゼットから、ってなって、俺はクローゼットの洋服類を、悠治は本棚を整理し始めてた。
「これ……。」
マフラー、俺のとお揃いの、手編みのマフラー、本当にあったんだって、ちょっと感動するのと同時に、浩介がこれを使ってくれてたんだって思うと、嬉しくなる。
「マフラー、浩にぃは大事に取っておいてたんだね。」
「知ってるのか?」
「うん。だって、僕も色違いの青いの貰ったから。浩にぃと悠にぃのは緑と黄色、僕のは青と白。色違いだよって、僕嬉しかったんだよ?」
そっか、皆の分を一緒に作ったんだ、悠治の言葉を聞いて、また少し思い出がよみがえる。
それは、高校の授業中にマフラーとかを編んでて、教卓の目の前なのに度胸があるな、って笑われた時の事だ、笑ってるのは坊主頭のちょっと俺より慎重の小さい、糸目の子で、多分この子が守君なんだろうな、ってなんとなく感じた。
「……。」
「悠にぃ?」
「ん?あぁ、ごめん。思い出してたんだ。」
「ちょっとずつ記憶、戻ってるんだね。良かった、忘れたままだったら、寂しいもん。」
「これ、なんだろ。」
マフラーを一旦おいて、クローゼットの整理を続けてると、クッキーの缶が出てきた、中身を空けるのは、ちょっと背徳的というか、浩介の秘密でもあるんだろうか?って思うと、野次馬精神っていうのは湧いてくるもんらしい。
「……。」
「何か見つけた?」
「えっとな。ミサンガと、手紙。」
ミサンガには、ローマ字でKOUSUKE15って書いてあって、結構古い感じだ。
「ミサンガ、悠にぃよく編んでたもんね。15って事は、中学の時の背番号じゃない?」
十年以上、これを大事に取っておいてくれたんだ。
「悠介からのプレゼントだからね!大事にしないと怒られちゃう!」
なんて声が、聞こえてくる気がする、嬉しそうな浩介の顔、まだ付き合って日が浅いからか、ちょっと照れてた俺の感情。
そういった事が、思い起こされる。
「じゃあ、こっちの手紙は、っと……。」
大事そうにしまってあった手紙を、ちょっちと興味があって開いてみる。
―浩介へ
俺は、浩介が好きだ。誰に何と言われようと、気持ち悪がられようと、俺は大好きだ。だから、付き合ってほしい。―
「これ……。俺か。」
それは、俺が書いた手紙、もう紙が黄ばんで変色してて、ちょっと涙の跡でぼこぼこになってる手紙。
それは、俺が昔浩介に宛てた手紙だった。
「思い出すしか、無いよな……。」
手紙を書いた時、ドキドキしたな、それで、返事を待ってる間、もっとドキドキしてたな。
忘れられるはずがないじゃんか、嬉しそうに付き合ってくれた、浩介の笑顔、それに、兄弟みたいにずっと一緒にいて、俺達の仲を嬉しそうにしてくれた、悠治の事。
「なんでだろうな。あんなに忘れた事ばっかりだったのに、こうして色々思い出してさ。なら最初っから忘れるなって話じゃないか?」
「そうかなぁ。僕は、そんな事もあると思うよ?」
「でも、迷惑かけたろう?」
「迷惑だなんて思ってないよ、悠にぃ。」
嬉しい事を言ってくれる、と思って、悠治を後ろからハグする。
「悠にぃ……!?」
「ありがと、悠治。」
悠治はちょっと顔を赤らめながら、嬉しそうにしてくれる、本当に、この兄弟は似てるなって、初めて浩介をハグした時の事を脳裏に思い出しながら、俺は笑った。
「緊張するな……。」
「大丈夫だよ、悠にぃ。守先輩、言葉は荒いけど優しいから。」
遺品整理が半分くらい終わって夕方、守君に会うために、俺達は新松戸のファミレスに来た。
そわそわしながら、俺と悠治は守君を待つ。「悠介!悠治!」
「あ、守先輩!」
メニューを見ながら待ってると、こっちに向かってくるガタイのいい糸目の坊主頭が、真冬だっていうのにパーカー一枚な彼は、俺達を見つけると駆け寄ってきた。
「悠介、無事だったんだな……。」
「ありがとう、心配してくれて。」
「ホントに、心配、したぞ……!」
守君は、席に着くなり俺の手を握って、泣き出した、それだけ心配かけてたんだなって、この子はやっぱり良い子だなって、心底思う。
「泣かないで、守君。……、ありがとう。」
「君なんて……、つけるなよ……!いつも、みたいに……、守って、呼んでくれよ……!」
「ありがとう、守。」
涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら、守はそういってくれた、覚えてなくても、友達だったんだから、って。
「それで、記憶がねーんだっけ?それってダイジョブなのか?小説、書いてんだろ?」
「今は休刊にしてもらってるよ。でも、ひとつ考えてる事があるんだ。」
「考えてる事?」
「今はまだその時じゃないかな、って思ってるけど、そのうち話すよ。」
「んだよー。」
ちょっと話してるうちに、普段の調子を取り戻したのか、守は饒舌になってくる、俺は、そんな守を見て、ちょっとずつ守に関する記憶を思い出してた。
悠治に関する事も、今日話してる間にちょっとずつ思い出してきたし、これが俺にとって良い方法なんだと思う。
「守ってさ、浩介の事好きだったんだろ?」
「は!?えっと……、おう……。」
「ありがとな。」
「な、なんでお礼なんだよ?ふつー、俺の男だ!ってなるもんじゃねぇの?」
良太に言われた事を思い出して、ふと口にしてみる、守は顔を真っ赤にして、でも素直にそう答えてくれた。
「だって、浩介の事を覚えててくれてるから。教えてくれた人がいたんだ、覚えてる限り、その人の中で浩介は生き続けるんだ、って。」
「忘れられっかよ……。だって、俺悠介も浩介も好きだったし……。」
「俺の事もか?それは嬉しいな。」
「ば、ばーか!好きったって友達だっての!」
「わかってるよ、それでも嬉しいんだ。」
守は顔を真っ赤にして、口をとがらせる、わかってるよ、だからそれが嬉しいんだ。
「高校の時の思い出とかさ、教えてくれよ。思い出せる事があるかもしれないし、きっかけがあれば色々と思い出せる気がするんだ。」
「おう、いっくらでも聞かせてやるよ!そうだ、あいつの事とかどうだ?俺らの一個下の女子の後輩でよ、悠介と浩介のカップリング?よくしてたやつ!えーっと……、確か並木だったっけ?ほら、漫研の後輩。」
「うーん……。大福先輩、って言われてた……?」
「そうそう!どっちが入れるか入れられるか、ってなんかそんな話してた覚えがあるぞ?」
言われると思い出してくる、確か恰幅の良い後輩の女子だったはずだ、答えははぐらかしてたけど、ちょっと恥ずかしかった覚えがある、気がする。
「あとは、野球部全員にミサンガ編んだりさ。甲子園の予選大会の願掛けだって、ほらこれ。」
「これ、俺が編んだのか?」
「そだぞ?野球部は浩介と悠治も入れて十人しかいなかったけど、全員分な。」
「僕のはもう、切れちゃったんだけどね。確かに、悠にぃ先輩皆の分編んでたよ?」
そう言って、守は右手首の袖をまくり上げる、なんだかもう色あせた、青と黄色を織り込んだミサンガが着けてあって、もう何年も前の事なのに、ずっと着けてくれてたのかって思うと、嬉しくなる。
「授業中に編んでてさ、テストで百点とか取ってたから許されてた、とか言ってたじゃんか。」
「……、思い出したよ。先生にちょっと怒られたっけ。」
授業をさぼってミサンガとかマフラーを編んで、それでいてテストの成績がいいもんだから質が悪い、って言われてたな、俺は勉強よりも、皆を応援したいって気持ちの方が強くて、先生を半分無視してミサンガ編んでたな、って。
「また編んでくれよ、大切な思い出だから。」
「僕もお願いしていい?」
「……。わかった、また皆の分編むよ。守、高校時代の野球部の子達の連絡とか頼んでいいか?皆に会いたいんだ。」
「多分皆喜ぶと思うぜ、葬式でも悠介に会いたがってたから。」
思い出したい、皆との記憶を、その為には、皆に会うのが一番早いんだろうな、って頭の中で思いついた。
「記憶喪失の事も、伝えてもらっていいか?あんまりその場でショック受けさせるよりも、先に言っておいた方がいい気がするんだ。」
「おっけ、言っとく。漫研の奴らには声かけないのか?」
「うーん、連絡先が誰がどんな関係かわかんないからな。思い出したら、連絡するよ。」
「そか、りょーかい。」
そんな話をしてるうちに、料理が運ばれてくる。
「お、たらこソースって懐かしいな!悠介いっつも食ってたよな!」
「そうなのか?美味しそうだから頼んだんだけど、やっぱり好みって変わらないんだな。」
「悠にぃはいっつも、それとドリアとチーズハンバーグだったからね。メニュー見ないで頼んでたよ?」
「そっか、なんかちょっと安心だよ。」
注文した料理を受け取りながら、他愛のない会話をする、そこからは、ちょっとした思い出話だとか、守の近況だとかを話して、それで解散になった。
「疲れたぁ……。」
守と別れて、悠治をアパートまで送って行って、帰ってきた、色々と思い出した影響なのか、それとも守と会ったのが緊張したのか、どっと疲れが来た。
会えてよかった、会ってよかったと思いながら、俺は寝る前にってちょっと確認したい事があって、パソコンを開く。
「えっと、ファイルはっと……。」
小説関係のファイルを開いて、書いてる途中の新刊のメモを開く。
「……。」
しばらく眺めて、知りたい事はわかったから、今日は休もう、ベッドに入って、今日思い出した事を忘れない様に反芻する。
そんな事をしてるうちに眠気が来て、俺は意識を手放した。
「ねぇ悠介。」
「どうした?」
「僕達ってさ……。僕達って、愛し合ってるんだよね?お互いゲイだからって、セックスしたいからって、お付き合いしてるんじゃないんだよね?」
「うん。だって、一生セックスするなって言われたって、浩介の事大好きだから。」
「そっか、良かったぁ。」
「浩介はどうだ?」
「僕?僕も一緒だよ?一生できなくたって、悠介と一緒に居たい。」
「そっか、それは嬉しいな。」
*
「……、朝か。」
一個を思い出すと、連鎖的に思い出すんだろうか、夢で、浩介と話した事を思い出して、少し笑う。
きっと、不安に思ってたんだと思う、誰かに言われたんだと思う、それを俺に聞いてきて、安心したんだって。
「さてっと。」
目覚ましにリビングに行って、コーヒーを入れる、寝巻きから着替えて、今日はちょっと相談事だ。
「まだ早いかな。」
コーヒーを飲みながら時間を確認すると、朝八時だった、まだ世間様の就業時間には早い、長谷川さんも出社途中だろう。
「ふあぁ……。」
独りぼっちの部屋に響く欠伸が、ちょっと寂しい、でも、皆と会う約束もしたし、寂しがってる場合でもない。
「もうちょっとっと。」
ちょっとぼーっとしながら、時間が過ぎるのを待つ、気が付いたら九時を回ってて、俺はスマホを取って長谷川さんに電話を掛けた。
「もしもし?坂入さん?」
「ご無沙汰してます、長谷川さん。」
「いえいえ!それで、経過の方はどうですか?記憶は戻りそうですか?」
「ちょっとずつ戻ってきてます。まだ、新刊書けるまでは行ってないですけど……。それより、ちょっとお願いというか、相談があるんですけど、良いでしょうか?」
長谷川さんは、まだ書けないって言われたことで、ちょっとがっかりしたと思う、担当編集って言っても、私生活の事までは手を回してくれるわけじゃないし、長谷川さんにも家族とかいるだろうし。
「相談?ってなんですかね?」
「その……。書きたい話が出来たんです。今までみたいなファンタジーではないんですけど、どうしても書きたいのが。」
「どんなお話でしょう?」
「……、僕の半生を。浩介の、生きた証を。僕達の、生きる意味を。」
長谷川さんは、黙って俺の話を聞いてから、唸る、それはそうだろう、ファンタジー作家の担当編集なんだから、いきなり自伝を書きたいなんて言われてら困るだろうし、担当を変えるなんて話になるかもしれない。
「……、駄目ですかね……?」
「……。そのお話を書かれた後、きちんと戻ってきてくれますか?私は坂入さんの人生を知ってるわけじゃないんです。だから、どうしろこうしろと言える立場じゃありません。」
「……。」
「だから、必ず記憶を取り戻して、新刊を書き上げるって約束してください。私は坂入さんの担当編集であると同時に、坂入さんのファンなんです。それだけ言っていただければ、全力で通しますよ、その企画。」
真剣な声、長谷川さんは本気みたいだ、信じてくれてる、それが嬉しくて、俺は少し笑う。
「約束しますよ、必ず記憶を取り戻すって。その為に、書きたいんです。」
「全く坂入さんは、私を振り回すのが好きですね。覚えていますか?初めて会った時の事。学生作家としてデビューした坂入さんの担当になったって挨拶したら、開口一番に俺は文章を曲げるつもりはないです、なんて仰られて。それが今では、自伝を書きたいなんて言い出すんですから。」
「迷惑ばっかりかけてたんですね、俺。」
「いいえ、私は嬉しかったんです。自分の信念を貫き通す作家が、こんなにも若くしていたとは、って。」
昔話になるのだろう、俺も話を聞いて少しだけ、その時の感情を思い出す、まだ学生だった頃、丁寧に接してくれた長谷川さんに対して、つんけんしてた。
それを、大人だった長谷川さんが、うまく導いてくれてたんだって。
「坂入さん、私は坂入さんのファンです。それは、あなたの作家としての人生を隣で見てきて、あなたの人柄に惚れてしまったんでしょう。だから、どんな作品だろうと、私は応援しますよ。」
「ありがとうございます、長谷川さん。」
「いえいえ、私に出来る事があれば、何でも言ってください!……。楽しみにしてますよ、私はずっと。」
「はい。」
長谷川さんはそういうと、次の仕事があるから、と電話を切る。
「ふぅ……。」
ホッとしてため息が出る。
もしも断られたらどうしようか、怒られたらどうしようか、なんて緊張してたからだ、それと同時に、長谷川さんの言葉を嬉しく思うんだ。
ファン、なんて言われたら嬉しいに決まってる。
「さて、始めますか!」
コーヒーを飲み終わって、俺は久々にパソコンに向かって作家として頭を動かす、まだ全部を思い出したわけじゃないけど、それでも。
「よし、今日はここまでっと。」
陽が沈むまで熱中してパソコンにかじりついて、そういえば昼ご飯を食べるのを忘れてた。
「悠治、仕事終わったかな。」
時間は午後六時、サラリーマンなら丁度仕事が終わる時間だ、夜ご飯でも一緒に、って思ったけど、迷惑じゃないかな、と思ってとりあえずラインを入れて、ふぅと一息つく。
「……。」
記憶が完全に戻ったわけじゃないから、あんまり小説は進んでない、進める為には思い出さなきゃいけないし、一人じゃ思い出す事も出来ない。
だから、色んな人に取材というか、話を聞きに行こう、って考えた。
「あ、返事来た。」
丁度向こうは仕事が終わったらしく、今は電車に乗ってるって事らしい、飯行かないか?と返して、部屋の天井を皆がらぼーっとする。
「ねぇ悠介、悠介は幸せ?」
「あぁ、幸せだよ。浩介と一緒で、悠治と一緒で、友達もたくさんいて……。って、あれ……?」
浩介の声が聞こえて、自然と反応してた、もう聞けない、聞こえないと思った浩介の声が聞こえてきたのは、ただの幻聴なのか、それとも。
「……。幸せだよ、俺。浩介とずっと一緒にいれて、これからもずっと一緒だから。」
僕はここにいるよ、その言葉は、浩介が言ってた言葉だ。
だから、書こうと思う、浩介の生きた証を、俺達の生きる意味を。
これからもずっと、幸せだって笑えるように。




