悪魔の愛し方
「行ってきます。」
重く冷たい扉を開けながら言う。
彼の返事はない。ただこちらを鋭いナイフの様な目で見つめる。そんな彼に深いため息を吐きながら見送られた。
1ヶ月前の彼はひどいものだった。
浮気、ギャンブル、ニート、
辞書でクズと引いたら出てくるのではと思い辞書に手を伸ばしたこともある。しかし今は改心した様だ。
ー1ヶ月前
「愛してる」
何度目だろう。何度繰り返せば気が済むのだろう。愛してると放った彼は真っ直ぐ美しい眼で私を見つめる。その眼で、その安い中古の言葉で何人の女の子を弄んだのだろう。しょうがないなと許した女の子は何人いたのだろう。
「私も愛してるよ。。」
今回で最後と許した前回の私に許してあげようと悪魔となった今の私が囁いている。
何度、彼の眼に騙され、その吐かれた言葉に刺されたか悪魔となった私にはもうわからない。
昔は貴方の吐く言葉は甘い甘いツツジの蜜の様で心地よかった。その蜜に毒があるとも知らず、蝶のようにその蜜を栄養にしていた。
美しかった花は枯れ
美しく流せていた涙は、赤く変わり。
そして美しかった蝶はいつのまにか醜い悪魔に変わっていた。
ー現在
「ただいま」
重く冷たい扉を開け、言う。
バックを置き、彼のいる部屋へ向かう。扉を開けるとそこには1ヶ月前の彼とはほぼ遠い何かがいた。
天使だった彼は今は羽をもがれ堕天した。
彼の顔は美しかった、だけど今は醜い。
彼の声は綺麗だった、だけど今は汚く感じる。
彼は記憶力が良かった、だけど今は何も覚えていない。
彼の眼は、真っ直ぐこちらをみていたのに、今はただこちらの様子を伺う様に泳いでいた。
そこには、私を恐れている天使だった何かがいた。
そして、ふと部屋にある姿見に目をやるとそこには堕天した天使を愛おしいぬいぐるみの様に大事にいている悪魔がいた。




