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第1話

とあるダンスイベントでダンサー兼振付師の男は、1人の少女の踊りに心奪われてしまう。その少女が気になり、追いかける男だが……

東京都内・某所にある芸術ホール。


会場へと続く並木通りには、馴染みのある金木犀ではなく、銀木犀が植えられている。


そのため、この芸術ホールは別名『ギンモクホール』と地域の人々から呼ばれ、長年愛されてきた。


ギンモクホールでは毎年、10月上旬に開催されるダンスイベントがある。


その内容は年齢、性別、グループか?ソロか?一切の枠組みを設けず、ただダンスが好きという共通点を持った人達が集まって踊るというもの。


イベントも中盤に差し掛かり盛り上がる中、ダンサー兼 振付師をしている菜潟ながた こうは、イベントのパンフレットを手汗でしわくちゃにして、舞台を見つめていた。


「次の次か…」


彼は今までダンサーとして舞台に立ってきたが、30歳を節目に周りから「振付師やりなよ!」と背中を押され、新たな人生を歩み始めてた。


そして、なんと今日は振付師として初めて、生徒たちの踊りを観に来ていたのだった。


かつて、自分も立ったことがある舞台をまさか、こんなに早く客席から指導者として見守る日が来るだなんて思いもしていなかった。


輝はこの会場に入った時からずっと、パンフレットに記名された生徒達のグループ名を「頑張れ」と指先で何度もなぞっていた。


今まで目の前で披露されたダンスなど記憶に残っていない。


いや、彼の気持ちを考慮して言うと、『残す余裕がない』の方が適切だろう。


なぜなら、生徒達との練習でクライマックスの場面に盛り込んだ高難易度の技があって、この技は練習で一度も成功しなかった。


そして、今日をむかえてしまった。


生徒達の出番を待つ間、輝は練習の時に「今回はこの技、辞めるか…」と言い出せなかった事を後悔していた。


しかし、練習の時に言い出せなかったのは、生徒達ならやってのけるはず…という期待と奇跡を信じたかった…みたいなダンサーとしてのプライド的なものが『辞める』という選択より強かったのもある。


まぁ今更、考えたところで何も変えられないと分かっているが、直前になって『不安』と『プライド』をかけた輝の天秤は揺らぎ続けていた。


はぁ…とため息をついた瞬間、ゆっくりと会場が暗転した。


生徒達の前の出場者は暗闇の中、舞台に立ってスタートのポーズでピタッと止まる。


「…ん?」


輝の意識は堂々巡りの思考から1人の少女に向けられた。


曲が会場に馴染むように流れ始めた。


舞台に1人立つ、その少女は踊り始める。



白色のレースを何枚も重ねた衣装は、ターンする度にふわり、と透けた。


繊細で柔らかな動きのはずなのに、どこか力強さも感じる。



少女の踊りが終わり、客席が明るくなる。


それから数秒遅れて我に返った輝の心はすっかり、少女の踊りに魅了されてしまっていた。



何とか頭を空っぽにして生徒達の舞台を見届けようとする輝だが、断片的に少女の踊りがフラッシュバックする。


心、ここに在らずとは今の彼のことを指すのにピッタリの言葉だった。


生徒達の出番がおわり、今日の踊りがどうだったのかをフィードバックするため、輝は控え室へ向かった。


先に入って待っていた生徒達に労いの言葉を掛ける。その最中でさえ、あの少女に聞きたい事で頭がいっぱいだった。


生徒達に次のレッスン日を伝えようとした時、あの少女が控え室の外を通り過ぎた。


それを偶然、目にした輝は


「ごめん!メールで連絡するから解散!」


と、少々、雑に生徒達を解散させると脇目も振らず、少女を追いかけた。


関係者で溢れかえる狭い控え室の廊下。

人の間をぬいながら、彼女を探す。


「すみません、通ります。すみません…」


ホールへ出ると、ここも人で溢れかえっていた。

それでも、目線を少女から外さないように少しずつ、少しずつ近づいていく。


手を伸ばせば届きそうな距離まで来た時だった。


「おつかれー!」と彼女の横からフラッと1人の女性が現れたのだった。


「あれ…?あの後ろ姿って…、」

趣味で書いているものです。

初めて投稿してみました。至らない点あるかと思いますが、少しでも多く人に楽しんで頂けたら…!と思っています。

どうぞ、「幸せの続き」をよろしくお願いします。

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