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6章 尾張遠征 2 出陣(5)

  ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 次の日の一日は長かった。出征した(にい)さまや太守(たいしゅ)様が心配で、居ても立っても居られない。書物を読んでも、弓の稽古をしても、集中できず散々な結果だった。結局、愛馬、夕凪(ゆうなぎ)の世話をして気を紛らわした。夕凪(ゆうなぎ)のお気に入りの(くし)()く時だけは、無心になれたのだ。


 ようやく夜になり、夢の世界で志麻(しま)は覚醒した。すぐに辺りを見回し、お師匠の姿を探す。


 すると、目の前の空間がゆらゆらと(ゆが)み、お師匠が現れた。


「お師匠、どうでした?」

 前のめりに手をつき、かぶりつくようにお師匠の顔を見た。


左文字(さもんじ)で一太刀であったな。承芳(しょうほう)殿には、我の言葉は届かなかった」

 抑揚も、声色も、いつもと変化はないのだけれども、志麻(しま)はそこに落胆と焦りの色を(かす)かに感じた。


「そうでしたか。お怪我は?」

左文字(さもんじ)は名刀じゃが、我を斬れるものではない。心配には及ばぬ。それよりも、これからどうするかじゃ」


太守(たいしゅ)様の夢の中に出れないのですか? 尾張(おわり)までは、まだ道のりが長くあります。その間に説得できれば……」


 お師匠は、静かに首を横に振った。


道標(みちしるべ)がなくては、承芳(しょうほう)殿を見つけることができぬ。今朝はたまたま藤枝(ふじえだ)であったから、街道で待っていたのだ。もう先へ進んでしまった。実体化するには遠すぎる」


 つまり、お師匠ができることは無くなった、ということなのね。


御屋形(おやかた)様にお願いするしかないわ」


 太守(たいしゅ)様を止められるのは、もうこの世で御屋形(おやかた)様しかいない。寿桂尼(じゅけいに)さまも止められるかもしれないけれど、高齢(こうれい)でとても太守(たいしゅ)様を追える体力はない。御屋形(おやかた)様を説得し、太守(たいしゅ)様に(じか)に話してもらう他にないように思える。


「説得できるかえ」

「するしかないわ」


 お読みいただき、ありがとうございます。


 夜雨雷鳴と申します。


 応援、感想など頂けたら嬉しいです。画面の前で滝のような涙を流して喜びます。もしかしたら、椅子の上でクルクル舞い踊るかもしれません。


 誤字脱字もあったら教えてください。読み返すたびに必ず見つかるんですよね。どこに隠れているんでしょう?


 では、次のエピソードにて、お待ちしております。

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